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EP13 疾走する絆 中編

アニマル形態、ビークル形態。


 大阪府市街上空にたどり着いた時、鋼魔に拘束されているシンセリ―が見えたので、輸送機からすぐに飛び降りた。無人機なので自分たちを送り届けた後は、勝手に飛んでってくれるだろう。

 すぐにシンセリ―とアルギニアスを救出できてよかった。それにしても目の前の鋼魔獣、通信ではターベルフと命名されたという話だったか。シンセリ―の身体を傷つけるとは。彼女の手足の肌が露出しているところには触手の絞め跡がくっきりと残ってしまっている。乙女の柔肌それも、最も尊いそれを蹂躙するとは許せん。


「碧乃さん……いいえ、マーシー、敵は電撃を使ってくる。手足のパワーも凄い。十分に気を付けて」


「はい、分かりました」


 シンセリーが自分を魔法少女としての名前で呼んでくれる。その事実だけで胸が熱くなり消耗していた魔力もよみがえってくるようだった。

 だけど、気の持ちようで、魔力量は変わるとはいえ、私が消耗している事実は消えない。固有魔法もむやみに使えない。

 本当は私とノクストスに任せて休んでいて欲しいと二人に言いたかった。しかし、デストローカストとの戦いと超音速という未知の世界を体験したことにより(Gとかは魔法で何とかなったがそれでも絶叫マシーンの比ではない衝撃に襲われた)、とても疲労していて私たち二人で十分ですと請け負える状態ではなかった。


「また押さえつけられたら厄介だ。まずは手を狙おう」


そう提案してきたのはアルニギアスだった。


「分かった。私とマーシーは牽制をしましょう」


「はい」


「新入り勇者!その刀当てにさせてもらう」


「ああ……さっき試し切りしてきたが、良く斬れた。不足はない」


「そいつは頼もしい……ね!」


とりあえずの動きを定めた各々は反撃を開始する。


「グオォー!!」


「はぁー!」


「やぁー!」


 私とシンセリーは敵の顔面目掛けて魔力弾を放つ。それと同時に、アルギニアスもガンモードに変形させた大剣でターベルフの右手首あたりを攻撃する。


「グガッ」


 魔力の塊が着弾した時にスパークする。その攻撃が作った隙にノクストスが二振りの刀で敵の手首を十字に切り裂く。もっとも私にそれは見えず、攻撃の後から彼の動きのイメージが伝わってくるだけだ。


「ギヤァ!」


手首には大きく切れ込みが入ったが斬りおとすまでには至らない。


「浅かったか……」


焦燥を孕んだ声でノクストスは言う。


「いいや、十分だ」


“ザシュッ!”


「ギヤァーーース!!」


追撃に出たアルギニアスの魔力を帯びた一閃により敵の右手首と右腕は泣き別れとなった。

痛みからか、動揺からか、ターベルフは一際大きな咆哮を上げる。


「よし!このまま……」


同じように攻めて行けば終わらせることが出来る。出現のタイミングからいっても人間を取り込んだ様子はない。このまま時間をかけずに……。


「グアアァーーー?」


唐突な咆哮と放電、私たち魔法少女をそれぞれの勇者が庇う。アルニギアスはプラズマ・シールドで、ノクストスはその身で守ってくれる。


「だ、大丈夫なのノクストス……?」


もろに攻撃を食らったように見えたノクストスは声一つ上げなかった。


「ああ……なんともない……マジで何も感じない」


リンクからもホントにダメージがないことが分かる。マントが電気を通さない材質だったりするのだろうか。


「まずい、敵が逃げる!」


 シンセリーは焦りを感じる声を上げる。私がターベルフを見ると敵は背中から伸ばした触手を手足のタイヤにつないでエネルギーをチャージしている。


「サトゥヌス・プラセプティム!」


 シンセリーは魔力の輪を出現させる拘束魔法で、動きを封じようとする。さすが先輩だ、対応が早い。けれど私は急展開に何もできないまま、拘束に嵌らなかったターベルフは私たちに背を向けて走り出してしまう。


“ギューーーン?”


スポーツカーから聞こえるような高い震動音が聞こえ、ターベルフは視界の中で小さくなっていく。


「遮断フィールドの外に出すわけにはいかない。追うよ、アルギニアス!」


「おう!」


再生の時間を稼ごうとしているのか、こちらと距離を取ってから人間を取り込もうとしているのか、その考えは分からないがこちらが離れるわけにはいかないと、シンセリーはすぐに巡航形態になったアルニギアスに跨って、ターベルフを追い始める。


「ど、どうしよう!?」


「俺がおぶっていくか?」


 シンセリーたちを追いかけようにも、徒歩ではさすがに速度が足りなすぎる。ノクストスの提案の通り、彼に負ぶってもらうか?デストローカストとの戦いを見るに彼の足の速さは相当なもののようだ。もしかしたら、追いつけるかもしれない。しかし負ぶわれた私がいたところで何か役に立てるだろうか。


『碧乃くん、神名だ。君の勇者だが、初期型の勇者は移動に長けた動物のような形態に変形できたらしい。今の勇者ロイドも、その話を参考にして巡航形態を組み込んである。本当に君の勇者が先代と同じものなら、変形できるかもしれない。碧乃くん、彼に“速く走ることを”強く意識させてみてくれ』


 インカムから神名さんのアドバイスが聞こえてくる。


「ノクストス、早く動くことを意識してみて」


「速く?……速く、速く……速く……!」


 ブツブツとつぶやくノクストスの身体が、前のめりになって変形し何かネコ科の動物のようになった。機械が組変わるというより、粘土のように形が変わる感じだった。色的にクロヒョウだろうか?全体的な大きさは少し体高が低い馬ぐらい。


「行けそうだ。乗れよ」


あ、普通に話せるんだ。声も獣のそれになった口から聞こえている。自分の身体を見回すしぐさは猫のようだ。

彼の首のあたりには明らかにハンドルのようなと持ち手があり、足置きのようなパーツもある。


「う、うん」


またがる部分にはお尻もフィットする。明らかに人が乗ることを想定していると分かる。


「じゃあ、行くぞ。しっかり捕まってろ。多分、かなり速い」


「え?」


“バンッ”


破裂音が聞こえ、全身が後ろに引っ張られる。ハンドルを握っていなければ有無を言わさず、後ろに放り投げられていた。


「うわぁぁぁ!」


 さっきの緊急輸送用ブースターに乗った(というか本来貨物輸送用だったから載せられたが正しい)時も相当怖かったが、こちらは何というかレベルが違う。速度自体は飛んできた時の方が出ているのだろうが、今の方がより生で直な衝撃を感じる。


「悪い、追いつかなきゃいけないから加減できない」


「こ、これぇー、百キロ以上出ちゃってるよねー!?」


 左右の景色は溶けて、ものすごいスピードで後ろに過ぎ去っている。ノクストスは四肢を躍動させて、跳ね上がりながら加速し続けている。私は魔力での身体強化を総動員してしがみつく。一応、ターベルフと先輩たちが通った道を追っているようだ。


「目安が分からんからな。分からん」


一方ノクストスは息を切らしている様子もなく、淡々と言って見せる。


「だが……必要な速度は出ていると思うぜ……前を見な!」


私が風圧に堪えながら目を凝らすと、ターベルフと先輩の後ろ姿が見えてきた。しかも、刻一刻と大きくなっている。


「来れたんだ。よし、二人ならやりようはいくらでもある」


先輩の声が聞こえてきた。


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