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EP10 出撃

早くも11話目です。いつまで毎日投稿が持つやら……。


OIDO日本支部管制室


そこは日本の対鋼魔戦のもう一つの最前線、魔法少女を指揮する場である。


「大阪か、離れてるな」


 ここを取り仕切る立場にある俺、陣屋悟は部屋の大きなモニターに映る地図を見ていた。鋼魔は人口密度の高い地域に出現することが多い。日本ではもっぱら関東に出てくるのでOIDOの施設も関東に集中している。

 大阪も人口密度は高いので、法則通りと言えるが最近、複数の個体が遠隔で出現しごたごたしたことを考えると、変な勘繰りをしてしまう。


「星原は、現場までどのくらいかかる?」


「はい、現在二人は出撃シークエンスに入りました。会敵まで20分程かと」


俺の問いかけで女性管制官の一人が教えてくれる。


「……ローゼリンデ、出せる新人はいるか?」


「今回正規登録された新人は3人。だが武装の完熟の関係で出せるのは蕨野ぐらいだ」


先ほど部屋に入ってきた、ローゼリンデに確認を取る。手元のモニターに件の蕨野とそのパートナーのスペックが表示される。


「分かった。そいつを臨戦態勢で待機させろ」


「……いいのか?星原の援護に行かせなくて」


 俺の指示に対して彼女は疑問を呈してくる。


「せっかくの新人だが、前回のようなことは避けたい。無論、星原がまずそうなら向かわせる」


「シンセリー・テルス並びにアルニギアス出撃します!」


地下であるここからは見えないが、本部の敷地の一部の地面がスライドして、カタパルトのレールが出現していることだろう。そこから、巡航形態の勇者とそれに乗る魔法少女を射出するのだ。


「シンセリー、今回までは一人で踏ん張ってくれ」


モニターに映る戦場に飛んでいった戦士の軌跡をみて、無力な俺は呟いた。


 ※


 私は旅客機が飛ぶよりも少し高い高度で太陽が真上にあるような空を超音速で移動している。見た目上変身した私が野ざらしで乗っているようだが、実際は魔法のバリアが私を包んでおり呼吸なども問題がない。


(せっかくの新人なのについてきてくれないのかよ)


私が跨っているアルニギアスが、リンクを通して愚痴を行ってくる。


(しょうがないよ。初陣は一番死の危険性が高い。みんなのサポートが万全な時に出したいんでしょ。私も最初は、緊張で訓練通りにはいかなかった)


(でも、一実はやれただろ)


(みんながあんな風にできるわけじゃないから)


 そうだ、だからこそ私は碧乃さんに戦ってほしいと思っている。私が彼女の立場であの状況に出会った時、同じように立ち向かえる自信はない。そんな有望な存在だが流れていった会議の着地次第で、それは永遠にかなわなくなる。


『シンセリー、敵は都市の電力を吸収しているらしい。相当なエネルギーを内包している可能性がある。気を付けろ』


「了解です」


突然に来た通信で意識を、任務に引き戻される。そう、今は任務に集中しなくては。私はそう思ってアルニギアスのハンドルを握りなおした。


 ※


現場についた時、何か触手のようなモノが道に倒れている人をに絡みついていた。


「先鋒、任せた!」


私は指示と共に上空でアルニギアスから飛び降りる。


「了解!させねえぞ!」


人型に戻りながら地面落下したアルニギアスは、その勢いを利用して大剣を振り回し、その通りに伸びる触手の全てを切り裂いた。


「あ、うう……あれっ?動ける……って、勇者!?」


「動けるか?動けるなら、シェルターへ……っく」


“バリリリリィ!!!”


アルギニアスの遮断フィールドのおかげで周囲の人が動けるようになっていくが、それをアポートする間もなく彼を電撃が襲う。青白い稲妻が絶えずアルニギアスに送り込まれている。音からして、生身の人間なら黒焦げになりそうな威力だ。


「アルニギアス!?」


「何のこれしき……プラズマ・シールド!」


私が魔力障壁で割って入る間もなく、彼はエネルギーのシールドで防御する。魔力障壁の“現象”を科学的に再現した優れものだ。


「大丈夫?」


「システムチェック……問題なし……でも、シンセリーは俺の後ろにいた方がよさそうだ。あんたも怪我はないか?」


「ええ、ありがとう……」


彼は勇者らしく、市民を紳士のように助け起こす。


「シェルターまで走れるか?」


「はい!」


「さて……さっさと終わらせないとな」


市民の女性を見送った後、彼はそう言って電撃の根元に目を向ける。そこには大量のワイヤーを束ねたような身体をした、巨大な蛇だった。頭の付け根から伸びた棘からさっきの電撃は放出されたようだ。


『対象を鋼魔獣と断定。コードネーム、ライトナーガと命名。以後呼称します』


 インカムに通信が入る。アルニギアスのカメラで姿を見たのだろう。いったい誰が命名するのか。以前聞いてみたがなぜかぼかされている。


「ライトナーガね、了解」


 毎度のことなので、アルニギアスはすんなりと受け入れる。同時出現もあるので名前があって困ることはないのでそれでいいが。


「……到着に時間がかかったしもう相当数の人が吸収されてる。まずはそっちの救出をしなくちゃ」


「まず私の魔力攻撃で分離を促すから……っ!?」


 私の言葉を遮るように電撃が来る。だがしっかりとアルニギアスがシールドで防いでくれる。


「……人が溜まってきた部位を俺が斬って切り離す、だろ?」


 彼は皆まで言わずとも分かってくれる。戦い始めたころはできなかった連携だ。精神リンクを深めてアルニギアスと命の認識を共有するやり方。

 急がなければいけない。時間をかけるほど、分離が難しくなってしまう。


 ※


Side蕨野花


 控室内に警報が響き、時が来たことを告げるのですわ。そう、私が立たねばならない時です。待機を命じられた時はじれったい自分の輝きを示す機会が遠のくと歯がゆい思いもしましたが、神は私にちゃんと舞台を与えたもうたのです。


『蕨野!鋼魔が施設内に侵入した。とりあえず今すぐ変身して遮断フィールドを張ってくれ』


付けていたインカムから指令が下ります。


「聞いていましたね、レオ。変身いたしましょう」


「うん。サーキット展開、トランス・フィールド展開!」


レオは私に背を向け、デマンド・サーキットを露出させます。


「ブローミング・ドライブ!」


私は紫の膜につつまれて法衣が身を包みます。


愛癒清徹あいゆせいてつ、イケート・スコーピー!」


「聖錬勇者、レオリオス!」


 紫のドレスを着た私と青いスタイリッシュな姿に変身したレオリオスはエネルギーフィールドで少し荒れてしまった部屋の中で私たちは名乗りを上げます。さすがに聞かせる相手が一人もいない状態で名乗るのは空しく感じますわね。ですが、今日の戦果をきっかけにしてその名を世界に轟かせればいいのです。

 私はそんな心持ちで戦場に向かいます。


 『蕨野、急いでくれ今回のやつ分裂するタイプだ。非戦闘員が危ない!名前はデストローカスト!ってつけられた』


「分裂タイプするって……」


 これまで講義などでは聞いたことのなかった単語に私は困惑してしまいます。


「イケート、急ごう!」


 私の勇者がそう声をかけてくる。そう、やるべきことは変わりません。今はただ、現場に急ぐのみです。


「……!?」


「……っ!?」


 目的の階でエレベーターを降りた私の目に入ってきたのは、壁や床を埋め尽くして蠢く黒いものでした。よく見ればその一つ一つがイナゴであると分かる。その溜まりの中には無残に貪られた人の死体があった。あんなふうに食われるものなのか、鋼魔獣は人間の生命を吸収するためになるべく無傷で呑み込もうとするのではないのか。


『なるべく施設に被害は……』


「そんなこと言っている場合ですかっ!?レオリオス!」


「うんっ!」


 私は、湧きあがる吐き気に何とか耐えながら、インカムからの呑気な指示を半ば無視して私たちは攻撃を始めます。ステッキを構え魔力の光線を連射し、隣のレオリオスは腕に備え付けられた拡散魔力粒子砲で面攻撃を行います。


「くっ……!?」


 元々範囲攻撃を前提にした武装を付けているレオリオスはともかく。私はどちらかというと精密射撃が得意なタイプでなので上手く対処しきれません。当たれば潰すことが出来ますが、手数が足りないようでじりじりと敵の群れに距離を詰められていきます。


『その階の第7倉庫だ。そこなら広いし丈夫だし、今は危険物もない。大技も使える』


インカムから陣屋さんが指示を飛ばしてきます。それは結構だがどうしたものか……というか数が増えている。施設に散らばっていた個体が私を脅威と認識して集まってきたようです。


「レオリオス……押し込むのは難しそうですわ。バリアを張って突っ切りましょう」


「分かった」


レオリオスはバリアを張りつつ私を抱き上げて、廊下に溜まりになっている部分を飛び越えようとします。


「ガジガジ、ギシャァ!!」


相手を押しとどめていた攻撃の流れがなくなったので、イナゴたちはこれ幸いと私たちを喰らい尽くさんと飛びかかってきました。


「そんなっ!」


そのあまりの質量と全方向からの多面的圧力にバリアはすぐにひび割れてしまい敵の群れの中に埋もれてしまいます。


「ぐう……」


 バリアの中に侵入してきます。イナゴの牙が腕や足に食いついてきて、怖くて、痛くて、気持ち悪かった。私を後ろから抱くレオリオスが何とか虫どもを払おうとしてくれるが、私がいるので粒子砲が使えず、どうにもできないようでした。


「私、こんなところで……」


 絶望の底に沈もうとしたとき……


「蕨野さん!」


羽音の奥から私を呼ぶ声が聞こえ、ピンク色の光が視界の闇を吹き飛ばしました。そして、別の黒い影が私たち二人を群れの中から救い上げたのです。


「蕨野さん!大丈夫?」


床に寝かせられた私が見た物は、心配そうに見下ろしてくる碧乃一実の顔だった。


評価・感想が作者の1番の燃料です!あたたかい感想をお願いします!


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