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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最後のきらめき

「先生、これでいいのでしょうか?」

 私は教授に質問した。教授の説明がどうも釈然と行かないからであった。

 「いやいや、これでいいのだ。君はそんなことすらわからないのか。全くそんなことも知らないで良く大学なんて入ろうと思ったな。」

 出た。このおっさんの鬱陶しい嫌味。学生にこういう風にしゃべることでしか自分の存在意義を確認できないのか。

 「ははは。でも先生の仰っていた証明だとうまくいかないのです。すみませんが教えて頂けないでしょうか?」

 「君はいつもそんなことばかり言っているね。だからそれにはそもそも今あるネットワークの起源を考えたらわかるだけど、っていうか、ネットワークって言葉の意味知っているのかな?今では当たり前のようになっているけど、私が学生の頃は本当に苦労したものでさ・・・・・・・」

この調子でこちらの聴きたいことを応えてくれずに永遠に関係のない話を続けるのだ。こちらが何度聞き返しても、全く回答を返してくれない。返してくれるのはこちらの発した最後の言葉に関連する、こちらの質問と関係のない話ばかりだ。その手の話には全く興味がないというのに、このおっさんは永遠にこれを喋り続けるのだ。

 「先生、その話は前も聴きましたよ。だから先日先生の仰っていた証明だと・・・・・・」

 「それについてはね、そもそも君は弁証法を理解することから始めるといいよ。哲学から学びなおすことは悪いことじゃないさ。うらやましいな。今からあの贅沢な時間を味わえるなんて。私が学生の頃は、先生はそんなことを教えてくれもしなかったからさ本当に苦労したものさ・・・・・・」

 忌々しい。この世から消えて無くなってくれたらいいのに。

 「いや、だから先生、今はその話をしたいのではなくて・・・・・・」

 「君は気が短いね。私が若いころの教授はそんなものでは」

 その瞬間、部屋の中に強烈なせん光が発生した。まぶしくて見えないが、発生しているのは恐らく私の目の前だ。教授の顔面である。いや顔面だけではない。手も足首も、彼の露出している皮膚すべてだ。

 光り輝く教授は自身も視界が強烈な光で満たされているのか、何も見えない様子で机や壁を手探りしているようで、部屋の中をさまよっているようであった。声は出ていない。

 やがて教授は衣服もろとも消えて無くなった。彼のどうしようもない話は全く覚えていようもないが、消える瞬間だけは光り輝いていた。彼の触れたであろう机と壁には白い灰をこすりつけたような跡が残っていた。


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