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6・ないもの③

 ネコボートから地面に移って相手と対峙する。ここはコンクリートじゃなくなっていて土の感覚が足に伝わってくる。ナッシュは土の地面を蹴って身軽なスピードを生かしたラウンドエッジでの斬り掛かりで相手の枝のような部分を切り落とし、マノウの火炎系魔法も枝のようなものを燃やし尽くす。火に弱そうなので自分も火山に繋がっている≪ろ≫のゲートウィンドウを出して支援しようとしたんだけれども、危なくて動きづらくなるからやめてください!、とナッシュに怒られてしまった・・・。

 接近して相手の姿が良く見えるようになって、木本植物がウネウネと活発に動きまくって攻撃してしてきているように思える。植動物でも一番大きいものでも三スクメル、地球で言う四十センチメートル程度のはずで、眼の前のものはそれよりもかなり大きい。知識として知っている類似の生物ではライトノベルで登場する樹木の精霊トレントが近いのだけれども、この世界で似たような生物が生育しているとは聞いたことがない。

「ニーナ、あれ」

 鞭のように振り廻されていた枝が火炎系魔法で全て焼け落ちて幹だけになっている個体を見るようにマノウから促された。激しくくねっていた動きは止まっていて、幹の真ん中あたりに現れた裂け目から観音開きのように左右に幹の表面がめくれていくと、その奥でまた何か別のものが動いている。

「なにこれ、なにこれ!」

 相手の枝を全て切り落としたナッシュの嫌悪の高い声の向こうを見ると、同じく観音開きになった幹の中から何かが出てくるのが見えた。マノウが枝を燃やした幹からも同じものが出てきていた。

「人?、じゃないよね。姿は似てるけれども」

 形状は人のようだけれども体表がごつごつしていて色も全体的に茶色っぽく、ひと言で言っちゃうと、木の人、とでもいう感じか。

 向かってくる三体目の、まだマノウの炎で燃えている枝をナッシュが次々と切り落としていくので、水に落ちた枝が水面から上がる煙とともにジュッジュッと音を立てていった。枝がなくなって幹からの攻撃手段を失った三体目の中からも他の二体と同じ木の人が出てきた。

「何をしてくるのかみんな次に備えて気をつけて!」

 マヤマサギを見つけた部屋からずっとこちらの様子をうかがっていたり、いきなり鞭のような枝で攻撃してきたり、少なくとも友好的な相手でないことは確かだ。幹の中から出てきた生物がどんな攻撃手段を使ってくるかわからない。相手が三体でこちらも三人で対峙すると思いきや、相手の動きが想定外だった。

「隠れました、陰に隠れちゃいました!」

 空になって立ったままの幹の裏側に三体とも入って完全に見えなくなって攻撃してくる気配がなくなってしまった。と言ってもこのまま放っておいてもまた襲ってこないとも限らない。ナッシュとマノウに目配せして幹の裏側をうかがおうとしたその時に、ネコボートからネコの姿に戻って自分たちの後ろで坐っていたネコが自分の頭を踏み台に(おいおい!)ジャンプして敵と自分たちの間に割って入ってくると、ジェル状の液体に戻った身体の体積を膨張させて眼の前を黒い壁にしてしまった。これじゃ敵が見えない!。・・・ってあれ?。そういえば攻撃されている間にネコは加勢に入ってこようともしなかったな。

 見えなくなるからそこからそこから動いてとネコに伝えたのだけれど、ネコからの返答は自分だけじゃなくて、壁の一部を伸ばしたひもをナッシュとマノウの手首に巻きつけて三人みんなにネコの思考を伝えてきた。それと同時に強い胸をつかまれるような恐怖の感情が頭の中に流れ込んで、自分も二人もその場で動けなくなってしまった。その恐怖の塊は自分たちを攻撃してきた木の人連中からの今の感情なんだとネコが伝えてきた。壁状になっているネコの向こう側でも、ひもを相手に接触させているんだろうと思う。自分たちを襲ってきたくせに、この場から逃げたいとか助けてなどの思考も伝わってきている。


 ニーナが言うには、宇宙極限(?)変態(ヘンタイ?)生物(長いよ!)のネコは、言葉が違う人たちだろうと異生物だろうと相手の考えや感情から言いたいことを読み取って、私たちに解る言葉に直して伝えられる能力があるんだそうだ。その逆に私たちの言葉も考えも相手に合わせて伝えることができるんだって。それって相手が誰であろうと話しができるってことだよね。そのネコが私たちに伝えてきたのは。

 ニーナが、木の人、と表現した私たちを襲ってきた生物は、私たちがマヤマサギと呼んでいる魔法の植物をこの土地で永いこと護っている種族で、私たちがこの生物を知らないのもこの土地でしか生育しておらず、普段はその姿を人前に現すようなことはしないかららしい。私たちがマヤマサギと言っている魔法を帯びた植物は、木の人たちはクダラと呼んでいて、クダラを護るマレホで種族名をマレホクダラと言うらしい。マレホが何かはわからないけども“人”とかと同じ意味かな。

 上の建物からつけて私たちを襲ってきた理由は単純なことだった。湖のほとりに勝手に大きな棲み家を作って大切なクダラを湖から大量に盗み、棲み家の中でクダラを切り刻んだり閉じ込めたりした生物供は許せない。そしてその連中の仲間がまた現れたから、排除するために私たちを攻撃したんだと伝えてきた。研究実験をしていた人たちのとばっちりで私たちは襲われたのか。もっとも私たちもクダラというかマヤマサギを取りにきたんだけれどもね。そのことはネコがブロックしてくれているので木の人たちには伝わってない。

 私たちと同じように、マヤマサギを奪った人たちを襲って部屋や建物を壊したのも木の人たちなのか問いただしたのだけれども、それは強く否定してきた。本当なのか疑わしいけれども、私とマノウの反撃で枝を切られ燃やされ攻撃手段がなくなった途端にすぐに逃げに走るんだから、本質は弱い生物なのかもしれない。その後も何度もお互いの考えや思いを伝えていくと状況がわかってきた。

 建物を壊すだけじゃなくて今私たちのいるこの地下を作ったのも、マヤマサギが浮かんでいた地上の湖がなくなっちゃっていたのも、突然に地下深くから現れた敵(?)がやったことだと伝えてきた。敵ってなんだろう。ニーナが化法のプロジェクターで異界生物体を映し出して木の人たちに見せてみたんだけどそれらとは違うという。異界生物体じゃ壊すことはできても地下にこんな空間を作ったり上に出るためのこんくりーとの坂を作ったりと、そんな器用なことはできないよね。その敵が人を襲ってマヤマサギを奪いまた地下の深くへ消えていったのだそうだ。地上から湖が消えたのはその真下に地下空間をあけていった影響で、湖の底が沈んでマヤマサギと水が落ちてしまったからだという。地下の池はやっぱり地上の湖の成れの果てだったのか。その敵ってどんな連中だっんだろうと思っていたら、木の人たちが、倒した数体は後ろの奥に転がっていると伝えてきた。もしかしたら新種の異界生物体かもしれないので、手首のネコひもをネコに外してもらってから三人でその場所まで確認しに行ったのだけれど。

 なんだろう。それは何か袋のようなものの中から生物が干からびている感じの部分が見えて横たわっているものだった。その近くに同じものがもう一体?倒れている。私もマノウももっと間近で見ようと前に進んだけれど、ニーナだけ後ろでその場から動かずにそれを凝視していた。マノウも振り返ってその様子に気づく。

「・・・。どうしたんですか?」

 声をかけたけれども聞こえていないのか微動だにせず考え事をしているような感じだった。もう一度声をかけようとしたその時、ニーナの後ろから走ってきたネコとともに横たわる二体のそばでニーナがゲートウィンドウを開くと、ネコがゲートウィンドウの中に二体とも押し込んでしまった。

「マレホクダラとは話しをしたから。新種の異界生物体かもしれないものを自分が引き取っても良いか訊ねてみたけれど、そんなものはいらないので好きにしてかまわないって。詳細に確認したいので持って帰るよ」

 私とマノウでお互いを見合ってしまった。そりゃあ未知の異界生物体ならいろいろと調べてみたいけれど、記録石に記録するんじゃなくでそのものをまるまる持ってくって、まぁニーナならやりそうか。ちょっとでもニーナの心配をした私がなんかがっかりだ。


 私たちがこの場所に来た肝心の本来の目的、クダラというかマヤマサギを手に入れることなんだけれども、木の人たちが護っているんじゃそうそう渡してくれないよね。これはもう諦めて帰るしかないだろうなと思っていたら。

「話しをつけたよ。マヤマサギ持って帰れる」

 えっそんなあっさりと?。大事なマヤマサギをそんな簡単に取って良いんだろうか。木の人たちとニーナは何を話したんだろう。「自分たちがマヤマサギを取るんじゃなくて、マレホクダラ自ら私たちに渡してもらえるように話しをもっていったんだ。まぁ交換条件の取引かな」

 ニーナと木の人たちの間でのやり取りでは、いかに木の人たちに有意義な納得を引き出せるかだったらしい。マヤマサギは木の人たちにとって大切なものだけれども、殆ど光が届かないこの地下の池では成長も繁殖も期待は持てずやがては枯れて絶滅を待つだけだ。地上に運べても湖がなければ暑さでもたないだろう。ニーナは二つの方法を提示したんだ。一つはこの地下の池でマヤマサギが光を受け取れるようにすること。地上にあった湖を復活させることはできないけれども、それならば植物の生育に充分な光がこの池に入り込んでくれば良いだけだ。ニーナが池の真上に大きめなゲートウィンドウを開いて、地上の湖の水が落ちてきた小さい穴の廻りの岩盤や土壌をマノウの地岩系魔法で崩してゲートウィンドウの中に落とすと、大きく開いた穴から池全体を明るく照らす光が差し込んできた。久しく暗い中にあったマヤマサギは草臥れた感じがずるけれど、光を浴びて元気になるだろう。

 木の人たちの感情は読めないけれども、それでも今のこの眼の前の出来事を見て驚いている雰囲気はなんとなく伝わってくる。木の人たちの眼がどこにあるのか、顏自体あるのかないのかもわからないけれどもね。マヤマサギに光を届けた私たちへの警戒心は少し薄らいでるんじゃないだろうか。そこでニーナはもう一つを木の人たちに提示したんだ。それは木の人たちにも私たちの本来の目的もどちらも満足できる方法に思える。

 私たちが考えていた通りマヤマサギはここにしか生育していない固有種で他にはないと木の人たちから知らされた。だとすると今回は助けてあげられたけれどもいつ何が起こって絶滅する可能性はなくなることはない。それならば他の場所でも育つことができる環境を探してそこに分けられれば最悪は避けられる。その場所を私たちが見つける手助けをしてあげるので一部を預けてくれるよう伝えた。後からもめ事にならないようそのうちの少しを私たちが使いたいことも添えて。この提案に木の人たちは割とあっさりと納得してくれた。マヤマサギを私たちが使うことに抵抗して不満を言ってくるかと思ったんだけれどもね。ただしマヤマサギを分けるかわりにお目付け役的な立場で木の人が私たちについてくる条件を出してきたのでそれは受け入れた。


「やっとこの暑いところから帰れます」

 無事クダラを入手することができたので身体に悪いこの暑さから一刻も早く逃れるべく、シュナシーネの町に戻ってきた。もちろん途中でみずぅぎから普通の服と装備に着替えた。とっくに注入魔法が切れて冷気の膜もなくなっていたしね。それとマヤマサギだけれとも、マレホクダラの一体が一緒についてきているのでマレホクダラの呼び方に合わせて≪クダラ≫にすることにして、木の人もいつまでも木の人呼びでは悪い気がするので≪マレホクダラ≫と呼ぶことにした。入手したそのクダラは一時しのぎでゲートウィンドウの向こう側にある池にニーナが持っていってそこに浮かばせたそうだ。気温が低いのが気になるそうで早く同じような環境を探さないとね。

 翌日の朝にはヤサニヤ車を借りられて早々とチゴナーナヤーナに向かうことができたのは運が良かった。チゴナーナヤーナから区間サンドル車に乗り換えてアザの町に近づくにつれて暑さも少しずつ和らいでゆく。乗り合いなので私たちと一緒にいるマレホクダラに他の乗客は驚いていたけれども害がないとわかると気にもされなくなった。


 帰路の道中ずっと、いつもとは違う雰囲気をニーナから感じて、口数も少なくなにか考え事をしていることが多くなった気がしていた。最初はクダラをウィザードの杖にする方法とかクダラを別の場所に生息させるマレホクダラとの約束のこととかを思案しているのかとも思ったのだけれども、マノウとも話をしてみて、どうもそれだけではないような感じなんだ。マノウが言うにはニーナの様子が変化した時があってそれから言葉少なげになったそうなのだ。

「マレホクダラたちが戦った敵のことを覚えてるよね」

 もちろん。ニーナが新種の異界生物体かもしれないからと死体っぽいものをゲートウィンドウにしまい込んだやつだ。

「それを見たときから、ニーナに変化を感じている」

 そういえば声をかけても考え事をしていたのか上の空っぽかった気がする。マノウはその時からもう気にしていたんだ。小声とはいえマノウとそういう話しをしていても気にも留めずにニーナは考え事をしたままだった。


 私たちを乗せた区間サンドル車はもうすぐアザの町に入るところだ。

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