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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
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91 冒険者ギルドマスター

ギルド長の部屋は3階だった。

カークさんにひっぱられるように僕たちは3階にやってきた。

「(シンハー。計られるのは適性とHP、MPだけだろうって言ったじゃないか。)」

『し、知らん。俺の相棒は吟遊詩人だぞ。冒険者のシステムはうろ覚えだ。』


僕もうっかりした。これくらいならまあちょっと多いくらいだろうと設定したのに、まさか多すぎて測定不能だったとは。

しかも知力や属性魔法とかまでモロバレだし。

ああ、そういえば、シンハと旅したのは「賢者」様とか「剣聖」様だった!数値高い人ばっかりじゃんか!吟遊詩人さんは冒険者じゃないから比較にならないし…。あーん!


コンコン、ノックした奥の部屋の扉の前。

どうぞー、というのんびりした男性の声が聞こえ、カークさんが扉を開けて声をかける。

「ギルド長、少しご相談したい案件が出まして。」

「ん?どした?」

「サキ君、テッドも入って。」

僕はシンハを連れて、ギルド長の部屋にしぶしぶ入った。


そこに居たのは少し額の後退しかけたおじさんだ。

おじさん…ギルド長は、日焼けしてさすがにたくましい体躯をしていたが、少しおなかまわりがやばくなってきているような、微妙なお年頃の中年男性だった。


「おう。テッドじゃないか。…どうかしたのか?この子は?」

「サキ君です。サキ・ユグディオ君。魔術師兼剣士を志望ということで、つい今し方冒険者登録をしたところです。テッドが推薦者で。」

「ほう。なるほど。」

「はじめまして。」

と僕は会釈した。

深々とお辞儀するなと教えてもらっていたからね。

「おう。俺はエストだ。エスト・スピナーシュ。ヴィルドの支部長をしている。冒険者登録おめでとう、サキ君。」

といって、僕に右手を差し出した。

「ありがとうございます。」

ここでも握手はあるようだ。握ると、大きながっちりした手だった。


「…で、そのおっきなわんわんは、サキ君のツレか?」

「はい。シンハといいます。」

「いちおう犬だそうです。」

とカークさんが付け加えた。

「いちおう?…ふむ。なるほど。」

ぎく。なんか、ギルド長、じーっとシンハを見ている。

シンハはいい子でお座りして、しっぽふりふり。

まったく演技はうまいんだから。


「…で、相談ごととは?」

カークさんに尋ねる。

「はい。サキ君のステイタスなのですが…。」

そう言って、あの白い石を操作し、ギルド長の前に置いた。

するとギルド長は、うっと目をむき、それから僕をじーっと見、また石を見て…。

「まじかよ。」

と一言。


ちなみにギルド長が見てしまっている画面には、きっとこんな情報がでているはずだ。


名前:サキ・ユグディオ

種族:ヒト族

性別:男性

年齢:14才

出身:ハインツ(中立地帯自治区内)

冒険者レベル:F

職業:魔術師兼剣士

体力:5万

魔力:10万以上のため掲示不能

知力:800


【スキル】

魔力操作レベル5

火魔法レベル4

水魔法(氷魔法含む)レベル4

緑魔法レベル4

土魔法レベル4

雷魔法レベル4

光魔法(治癒魔法含む)レベル4

闇魔法レベル3

空間魔法レベル4

無属性魔法レベル4(鑑定含む)

剣技レベル4(剣客級)

槍術レベル4

弓術レベル4(名人級)


【加護】

ユグディアルの加護

神獣の加護

精霊の加護


【異名・称号】

龍殺し

狩人

薬師

万能職人(鍛冶(伝説級)、建築、服飾、武具、宝飾品等細工全般)


長い。長すぎる。


それでもまだ「限界超突破」とか「超回復」、「アカシックレコード接続可能」などはでていない。「転生者」というのもなかった。これはさっきちらと見た時に確かめた。

どれも非常識スキルなので、なにかロックが掛かって、白い石の解読を妨げたのだろう。

おそらく「隠微」も同様だ。

僕が見る「ステイタス画面」では、それらだけでなく、使える魔法まで細かく見れるのだが。


問題はHP、MP。隠微のレベルが低くて、HPとMPを隠しきれなかった。

知力や属性魔法のレベルとかまで出るとは思わなかったし。


まあ知力は素質と前世の記憶とアカシックへのアクセス権のせいであって、僕が何でもわかるアタマのいいヤツという意味ではない。

そこは素質だろうと思ってくれるだろう。たぶん。そう思いたい!


それから、弓が名人級とは自覚していなかった。

なお、「薬師見習い」はいつのまにか「薬師」に。

さらに職人は「よろず職人」と「臨機応変」が合わさったようで、「万能職人」になっていた。旅の準備でいろいろ作ったからな。


「最初は故障かと思ったのですが、どうもそうではないようでして…。それで此処に連れてきたのです。」

「なるほど。…で、テッドは付き添いか?」

「それが…私の不手際で、推薦者のテッドにサキ君のステイタスを見られてしまいまして。それで一緒に来てもらった次第です。すみません!」

「あーらら。やばいねえ。これ。」

「すみません!」

カークさんが深々と頭を下げている。

「いや、つい見ちゃって。申し訳ない。」

とテッドさん。


「カークの不手際だ。すまんね。サキ君。」

「秘密を守っていただければ、僕はそれ以上どうこうということはありません、というか、絶対秘密厳守でお願いします。ギルド長さんもです。」

僕は3人の大人にそう言った。

「判った。そうだな。誓約書を交わそう。魔法のしばりがあるから、かなり有効なものだ。それでいいかな?」

「ええ。それで結構です。」

「いいのか?カークから慰謝料ふんだくるっていう手もあるぞ。」

とテッドさん。

「テッド。お前も同類なんだぞ。」

「俺はギルド職員じゃねーし。」


二人が言い争いになりそうだったので、僕はあわてて

「いえ!誓約書だけで結構です。お金はいりません。」

と言った。

「いや、今回はカークの不手際つまりギルドの落ち度だ。

サキ君がいいと言っても、俺たち大人の気が済まねえ。

登録料は棒引きにしよう。たいした額じゃないが。

それから、もちろん誓約書の書類料はこちらで全額持つ。」

「おお、太っ腹だおやっさん。誓約書の用紙って、たしか一枚5万ルビはしたよな。」

「ああ。それはギルドが出す。テッドは今夜、サキ君に飯でもおごってやれ。」

「まあ、いいけど。」

「サキ君。それで手打ちにしてくれないか。」

「判りました。それで結構です。」

「ありがとう。ではさっそく、誓約書を作ろう。」


ギルド長は奥の金庫から誓約書用紙を持ってきた。

それはA3判くらいの大きさの紙で、縁まわりに金箔を押した豪華なものだった。


「それ、王都の教会のもの?俺はじめて見た。たしか一枚10万…。」

え、10万ルビって…100万円もする紙なの!?

「テッド。値段など無粋だぞ。これは誓約への拘束力が高い誓約書だ。今回の件はそれだけ重要な機密事項ということだ。」

「判った。」

とテッドさん。

僕はよく判らなかったが、どうやら効果の高いものらしい。


それから僕と3人の大人たちは、誓約書を作った。

誓約書というのは、世界樹の分身である契約神ミルトールに「こういうことを我らはお互いに約束します」と宣言する神聖な書類だそうだ(BY アカシックレコード)。

今回の誓約内容は、

3人は僕の許可なく他人に僕のステイタスをばらさないこと。

もし違反しそうになれば誓約書が警告を発し、言おうとした者に雷撃(軽微)を与える。

もしばらしてしまったら、その時には呪いが発動する。呪いはじわじわと体力を奪う。死に至るものではないが、全身に激痛が走る。

という厳しい内容のものだ。

ただし、僕の許可を得て、ある一定の手順を踏めば問題ないから、仕事上で必要な時には僕に必ず相談することとなった。

ちなみに、たとえば僕のステイタスに関して、ギルド長とカークさんが二人だけで話をする場合は問題ない。第三者にばれることが誓約書違反となるのだ。


「いいんですか?かなり重たい内容ですけど。」

「ああ。それだけ君のステイタス情報はとんでもないということだ。」

とギルド長は大まじめに言った。

「普通、スキルはレベル3で一人前、4ならベテラン、5なら文句なく達人だ。それを君は4を連発してる。

魔力量は10万以上でウチの石じゃ測定できない。これは王都のギルド本部や魔塔、あるいは王城にある石板でないと測定できない数値だ。

魔力10万以上は、国おかかえの魔術師のレベルだぞ。

体力もだな。5万は凄い。冒険者でAクラスならありうるが…。

そして知力800など、聞いたことがない。」

「天才、という奴ですか。」

「いや、僕、いろいろ世間知らずですし。」

「まあ、知力は知識量も関係するからな。計算もできるということだし。

数値は異常だが、きっと潜在能力値という意味もあるだろう。はは。」

ギルド長は汗をかきながら苦笑している。


僕の場合は特に知識量がいわゆる「チート」だから、自慢できるものではない。

不幸中の幸いは、さっきも思ったが、「転生者」とか、「ユグディアルの息子」みたいな赤裸々な表記がなかったこと。まあ加護に「ユグディアルの加護」はあるが。

世界樹の加護ならば、エルフなら持っている場合もあると、以前シンハから聞いていたからまあいいや。


とにかく、全員で署名した。


そういえば、カークさんは副支部長でした。

本名はカークアルキスタス・エミリウス・ド・シガニー。

誓約書に書いたことで本名がわかった。

まあ、受付にいる職員は、普通は名乗らないものね。

「ド」が付くから貴族家出身らしい。

テッドさんまで

「貴族家出身ってホントなんだ。お前の本名、初めて知ったわ。」

と言ってカークさんから

「ウルサイ。」

と言われていた。

普通はカークアルキスタス・シガニーと名乗っているらしい。

ギルドではカーク副長、と呼ばれているようです。


テッドさんはテッド・ランカスター。

やっぱり領都ヴィルド警備隊の副隊長でした。

若いのに偉いんだ。ぜんっぜんそうは見えないけど。


「(シンハ、僕は「ユグディリア」と書かなくても大丈夫なのかな?)」

と聞くと、

『通り名の「ユグディオ」で大丈夫だ。そうでないと、不味かろう?ギルドカードと合わなくなる。』

確かに。

『神に、お前のことだと解ればそれでいいらしい。』

「(なるほどね。でも誓約書のことまで知ってるなんて、シンハはすごいね。)」

と、訊ねたくせに、僕は今更ながらに驚いた。

『昔、セシルがいろいろやらかしてな。誓約書を何枚も書かされたのだ。その時も、通り名で書いてもちゃんと有効だった。』

「(へえ。)」

まあ、どんな誓約書かは聞かないでおこう。

僕は「サキ・ユグディオ」と署名。


ギルド長が最後に

「誓約は成った。」

と言うと、誓約書は空中に勝手に浮かび、そしてぼっと燃えてチリひとつ残さず消えた。

なんだこれ!?

さすが異世界。


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