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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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09 サバイバル生活 5日目

5日目。

「んー。シンハ、おはよー。」

僕はシンハとシェア(というか、居候)している大岩のふかふかベッドから起き出す。


外に出て朝のすがすがしい森の空気を吸うと、崖下に向かってワイルドに小用をし、(大の時は穴掘って埋めてる)、軽く体操。そして自分で出した「ウォーター」で手と顔を洗い、さらにクリーンで口の中まできれいにした。歯磨き粉がないから塩でとふつう考える訳だが、クリーン魔法で口をきれいにすれば、ここでは貴重品である塩の節約にもなる。


それからまたベッドに戻って座禅を組んだ。そして魔力を体内で巡らし始める。最初はゆっくり。それから次第にテンポをあげて。さらに指先に持ってきて…「ライト」。

ものすごく光った。

まぶしいくらい。

側でまだうつらうつらしていたシンハがビクッと飛び起きるくらいには。

「ああ、ごめん。おどかしちゃったね。」

首を撫でて落ち着かせる。

「魔力を循環させていたんだ。『練る』っていうのかな?そうするとさっきみたいに、いつも以上に大きな魔力が使える気がしたからね。でも少しずつだね。うん。これは毎朝の日課にしよう。」


魔力が、すでに2万から24,500に増えていた。毎日ちょこちょこ使っていたし、今練っただけで500ほど上がった。これは毎日するべきだ。

あとはきっと限界近くまで使うと、総量がもっと増えるはず。これはラノベ知識だから怪しいけど、そんな気がするんだ。


それから僕たちは朝食を食べるために外に出た。

煮炊きは外の広場のたき火の竈でする。もしも雨が降れば、洞窟の中の真ん中の竈になるだろう。

今朝は昨日手に入れたジャガイモを焼いて、塩を振ったものと、昨日作っておいた魔兎肉の串焼きだ。それと生トマト。大きな葉っぱを皿代わりにして。

ワイルド料理だが、素材がいいようで、ジャガイモもかなり美味しい。シンハも気に入ってくれたようだ。

「少しづつ、生活向上作業をしないとね。あとは食糧を手に入れることと、魔法修行だな。」


シンハも食べ終わったので、僕は立ち上がり、洞窟の入り口に戻ってシンハを呼んだ。

「シンハー。えーと、このあたりに、本格的な竈を作ってもいいかな?」

と洞窟右脇、入ってすぐの壁を指さして、シンハに尋ねた。

すると、

「バウ。」

と言う。首をうんうん、と縦に振った…と思うので、絶対意思疎通はできていると確信している。

「ありがとう。じゃあ、さっそく。んー。」

僕は一生懸命に土でできた竈を想像しながら、

「ストーンウォール、メイキング・カマド!」

と訳のわからない魔法名を言った。


そうしたら、まず土の壁がむにむにと地面からせり出し、僕の手の動作にあわせてカーブを描き、そして本当に立派なカマドの形状になった。

最後に上と脇に穴を開ける。

上は二重構造でさらに穴が開き、脇の大穴から薪を焚くと、いい感じで炎が出る仕組み。

しかも鍋は二重底の縁に乗っかる構造。羽釜なら上の縁に羽が引っかかる構造だ。

本物のカマドなど知らないから、一応そう作ってみた。

五徳を作るのが面倒だったからでもある。

同じカマドをもう一つ、今のに合体させて並べて作る。

これで二口の立派な竈ができた!魔法万歳。

「ふう。はじめてにしては上出来。あとは使ってみて改造だな。」

煙は竈の後ろに穴を開けた。そこから壁に煙突をつけた。これも土魔法で。上の方は煙突にはしない。天井の隙間から出て行くから大丈夫のはず。だめなら上まで煙突を作ろう。


それから外で大きな水瓶を2つ「焼く」。

これも土と火魔法で作った。サラマンダに手伝ってもらう。信楽焼の素朴な古い大きな壺をイメージ。

「メイキング・カメー!」

こんないい加減な詠唱でいいのかと思うが、イメージだけあればきっとできる!と確信して唱える。すると、土がむくむくと盛り上がり、勝手に大甕の形になり、風魔法で乾燥。高速で作っているが、もちろん割れたりしないよう注意している。

それから甕が火だるまに。サラマンダが上へ下へと甕の表面をせわしなく動いている。きっと温度調節してくれているのだろう。

そしてものの5分もかからぬうちに、まるで信楽焼の古い壺のような見事な大甕ができた。

大きさも予定どおり。僕が余裕で隠れられるくらい大きな甕ができた。

「おお、我ながら上出来!」


そして気をよくした僕は、さらにもう1つ同じ大きさの甕を作る。

サラマンダが「クエー」と啼き、何か訴えた。

「おなかすいた?僕の魔力でよければあげるよ。」

と言うと、サラマンダはぼくの肩に飛び乗った。僕が指を出すと、ぱくりと噛む。

バウッっとなぜかシンハが怒った声を出した。

「うん?」

なんだろね。シンハを撫でると少し落ち着いた。

シンハのことは気にせず、サラマンダを見る。

ぱくりとやられても痛くはないが、魔力がふっと抜けたのがわかった。

でも一瞬だ。

すぐにサラマンダはまた大甕にぱっと飛び移り、あっという間に甕を火だるまにしたかと思うと、もう目の前には信楽風大甕ができあがっていた。

「すごいーサラマンダ、ありがとう!」

と僕が言うと、

「クエー」

と啼いて、ぱっと消えた。


できたての2つの大甕を、洞窟に作った竈脇まで運びたい。

亜空間収納に入れて持ち歩く。設置もあっという間だ。

水は魔法でも出せるが、すでに昨日のうちにあの湧き水から僕の「亜空間収納」に、「1区画」入れてある。少なくともバスタブ10杯分は入れておいた。

クリーン魔法で甕の内部を綺麗にし、水を指先からジャーっと出して。甕を満たしていく。

「面倒。ウォーター5指!」

と唱えると、全部の指から水が出た。

それも両手。あっという間に水瓶二つが満杯に。

「ああ、蓋が欲しいな。」

木の板の蓋がいいけれど、まだ木を切り倒していない。竹を割った板でもいいけど綴るための紐を作っていない。ひとまず軽いやきもの製の蓋にする。

「たしか楽焼は軽いよね。それから『かる石』か…。んー。」

僕はまた

「ストーン!メイキング・軽い石製の蓋!」

といい加減な呪文で、軽い石製の蓋を作る。

イメージは「峠の○○めし」の素焼の蓋を二等分にした形。半分開ければ大抵水を汲む用はたせる。しかもかる石製のように軽い。

「やったね。魔法ばんざい!」


そろそろお昼になったので、ポムロルをかじる。

あとは昨日の残りのスープでおしまい。

シンハにも同じメニューであげると、ポムロルをもっとよこせ、と前足で催促するので、もう一個だけあげた。

「おなかすいたのなら、あとは自分で狩りをしてね。」

すると

「ばう…」とちょっとがっかりしたような返事。

本当に野生の獣?

「お前、結構燃費が悪いなあ。どんだけ食うんだよ。そうだ、魔力も食うのか?ちょっと僕の魔力、食べてみるかい?」

そう言って、僕はシンハに魔力を手に集めて、団子のようにして、シンハに差し出してみた。

シンハはフンフンと匂いをかぐと、ぱくっとそれを食べた。

もぐもぐごくんと。

とたんに、ゲプとげっぷをした。

「ん?まさか、多かったの?おにぎり一個分なんだけどな。」


それから夕方まで、シンハは何も食べなかった。

ポムロルをみても自分は食べず、僕が収穫するのを見ているだけだ。

いつもなら、いくつかつまみ食いするのに。

水を飲んだくらいだ。

「ごめん。僕の魔力がやばかったかな。食あたりみたいになっちゃったんじゃない?具合悪かったら、もどしてもいいんだよ?少し、抜こうか?魔力。」

すると、ぱっととびすさって、

いやいやをする。

「バルルルブウウル。」

不満げにうなる。

「ごめんよ。もう変なもの、食べさせないから。ごめんね。」

というと、まだ不満げに僕の指を甘がみした。

「うん?なに?変なものじゃないって?ありがとう。」

シンハはべろべろと僕を舐める。

「判った判った。うんうん。シンハは僕が大好きなんだね。ありがとう。僕もシンハが大好きだよ。」

それでもなんだかまだ不満げに、ごろごろぐるぐると喉を鳴らしていた。


さて、午後は、「結界石」の開発に挑戦だ。

だって、たとえば旅の途中、森の中でもゆっくり眠りたいじゃないか。

魔獣の危険から身を守りたい一心で、さまざまに試行錯誤した結果、「結界石」は見事に成功した!

これは僕が心を許したシンハ以外の生物の侵入をはじくものだ。

まずそのへんで拾った石に僕の魔力を送る。それからシンハにもお願いして魔力を込めてもらった。さらに、自分とシンハ以外の者をはじくというイメージを石に送る。すると、僕とシンハ以外の者をはじくだけでなく、他者が発した魔法や、打撃などの物理攻撃の侵入を許さない石となった。

効能をなぜわかったかって?もちろん、鑑定さんのおかげさ。


しかもこの結界、外側からの敵からの攻撃は防ぐのに、内側からの僕やシンハの外側への攻撃はすんなり通す。どうやら結界というものが、この異世界ではそういうものらしい。内側で守り守られる者による外側の敵への攻撃は、許可されるということらしい。

かなり高度な魔法だな。

結界石は、最初は直径1メートルが防御範囲だったが、魔力を高めて改良したら1つで5メートルは防御範囲となった。さらに改良すれば、きっともっと範囲をひろげられるだろう。


採取や防衛だけでなく、僕は戦闘能力も磨きはじめた。

まずはシンハの護衛でそこらへんを走る。

体を動かしてわかったが、この体はかなり優秀だ。

できそうな気がしたので、ふっと前に宙返りしたら、本当にできた。後ろにもトンボ返りつまりバク転ができた。

体は柔らかく、しなやかで、しかもジャンプ力も走る速度もかなり優秀。おそらく、オリンピック選手より、今の僕のほうが速く走れるし、高くジャンプできている。さらに魔法で「肉体強化」を意識してみると、これは全くの無詠唱でできた。

試しに小石をつかんで強く握ってみると…なんとさらさらの砂に砕くことができた。まじでー。

「これは…ヘタすると、歩く凶器だな。この世界の人間は、みんなこうなのだろうか…。」

これにはだれも答えてくれないので、今は棚上げにしておく。


それから、さまざまな基礎魔法と思われるものを次々試した。

座禅で魔力を練り、それからお手製の竹刀(ちくとう。シナイではなく。)というか、竹の棒を振り回して剣の稽古。

それから竹槍(短槍)を扱う稽古。

試しに竹槍を飛ばして見ると、結構遠くまで飛ぶし、威力もある。コントロールを付ければ投げ槍で敵を仕留められるかもしれない。

集中力を高めてやってみると、案の定、太い木に作った的に当たった。


じゃあ、竹槍に強化付与してかつ回転を掛けたら?と魔力を使ってやってみる。すると

バリバリバリ!と木を倒してしまった。

ちょっとこれあり得ないんですが。

さすがに青ざめた。

「えーと。投げ槍に魔力乗せはちょっと封印かなあ。」


あと試したのは飛ぶこと。

さすがに重力に逆らって浮こうとしたら、ごっそり魔力が失われ…。でもふっと浮くことはできた。

魔力の減り方は魔法の威力によるが、回復は5秒で1ずつ。だから1分で12。10分で120。1時間で720。24時間すなわち1日で17,280回復する計算だ。ただし。3時間眠っただけでマンタンになる。

寝れば回復。

ありがたいチートだ。

でも、もっと効率よく回復できそうな気がする。

修行あるのみ。


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