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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
66/529

66 マンティコア 5 マンティコアという魔獣

「2体目!?」

『番いか』

GRRRRRRRR…

『くっ。やっかいだな。』

「(僕は大丈夫。)」

GYUGYAAAA!!

空気がびりびりと震える。怒り心頭でこちらを威嚇してくる。すさまじい威圧だ。

「結界!」

僕とシンハに10枚の結界をかけ直そうとするも、2匹目がただちにウィンドカッターを大量に放ってきた。

バリバリ!パリンパリン!!

シンハの結界も5枚壊し、僕に残っていた2枚も消えた。

こいつ、さっきのよりさらに強い。


GRRRRR

シンハも威嚇する。その間に、僕は素早く「エリクサー」を飲み、回復。

「結界!」

僕はシンハと自分の結界を張り直す。

「(シンハは左へ。僕は右に走る。)」

『わかった』

「(3…2…1!GO!)」

息を合わせ、左右に走る。

2匹目はシンハをターゲットにしていたのか、シンハのほうへと走った。

僕はその間に右に走りながら瀕死の1匹目に

「轟雷!」

と雷の一撃を落とした。

ドガガガァァン!!

GYAAAAAAA!!

断末魔の叫び。致命傷だ。

その証拠に黒い靄をまとった光の粒が1匹目から立ち上る。

同時に僕の中の経験値が急激に入ってくる。

それを知って2匹目がさらに目を血走らせた。

GUGYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!

一瞬威嚇に足がすくむ。シンハに向かっていた2匹目はターゲットを僕に移した。

目が怒りで真っ赤だ。すさまじい怒り!


僕は突っ込んでくるマンティコアに覚悟を決めて剣を構えた。

蛇の尾が石化を放つ。だが案の定、僕のサングラスで跳ね返し、蛇が一瞬石化する。

そこにシンハが横っ飛びに追いつき、奴のグリフォン頭の首筋にかじりつき引き倒した。

組んずほぐれつの獣どおしの一騎打ち!

GRRRR!!

GYAUUUUU!!

シンハに蛇の尾がかみつこうとする。だがシンハはそれを察知して自分の尾で蛇頭をぶったたく。

だがまた蛇頭はシンハにかみつこうとした。

「俊足!」

僕は風魔法で加速し、並列思考を使いながら2匹の脇を走り抜けざまに蛇頭を切り飛ばした。

GYAUUUUU!!!!

するとまた僕をターゲットにしようとこちらをにらむ。だがすぐにシンハが山羊頭にかじりつき、その目を潰した。

「聖炎!!」

青白い炎が2匹を包む。

GUGYAU!!!!

だがシンハにダメージはない。

案の定だ。聖獣に聖炎は効かないのだ。

マンティコアだけが苦しんでいる。そして僕に憎悪を向ける。

僕はそれに負けまいと気持ちを強くした。


多くの森の生き物を、奴らは石化させた。

無害な小鳥たちも。

強者であるワイバーンも。

食糧にするためならまだいい。そうではなく、戯れにやったのだ。

森を支配するために。

森を破壊し尽くすために。

だからシンハはマンティコアを退治すると決めているのだ。

聖炎をうけながら、奴は僕にウインドカッターを無数に放ってきた。

『!サキ!!』

カキンカキン、パリン!カキン!!

だが僕は結界と剣とですべてを防いだ。そしてシンハが飛びすさったタイミングで、

「轟雷!!」

と唱え、同時にシンハと奴の間に結界壁を立ち上げる。

GYAAAAAAAAAA!!!!!


だがまだ奴には息があった。

ふらふらと、僕のほうへと歩んでくる。

GUUURRR…

「聖炎!」

僕は再び奴に聖炎を浴びせた。

UGUUURRR…

奴は僕ではなく、1匹目へと歩みを変えた。

KYUUUN

と、悲しそうな声を出した。

そして、1匹目の骸の上にどうと倒れた。

僕の聖炎は2匹のマンティコアを青い炎で焼いた。

黒い靄をまとった光の粒が、立ち上っていく。

息絶えたのだ。

同時に、経験値が僕の体内に流れ込む。

黒い靄は、聖炎の中で浄化されたようで、次第に薄くなり、光の粒だけが天へと昇っていった。


僕はようやく剣を鞘に収めた。

シンハが、僕の傍に来て、珍しく自分から顔をすり寄せて甘えた。頭を撫でて

「ご苦労さま。熱くなかった?」

と問うと、

『あの青い炎か?俺には心地よかった。力が沸いたぞ。』

と言われた。

「うん。そうじゃないかと思った。」


聖炎はまだ2匹を焼いている。

「なんだか、ちょっと可愛そうになっちゃった。」

『奴らにやられた者たちのほうが、もっと哀れだ。』

「たしかに。」

周囲には、石化されたものたちの残骸でいっぱいだ。

僕たちの戦いで、ほとんどが無残に破壊されていた。


僕は、手を大きく上げ、それから広げた。

「降れ。浄化の雨。」

なんとなく、できそうな気がして、僕はそう唱えた。

サアアアっと霧のような雨が降り始めた。

雨は石化したものたちを崩し、砂へと変えた。

雨は10分も降ってはいなかったと思う。だが、周囲の景色は一変していた。


魔毒の霧に汚染され枯れかけた木々は息を吹き返し、岩だらけの荒れ地には急速に草花が芽吹き始めた。土色の景色は、鮮やかな緑色へと変わっていった。

雨が上がり、太陽が雲の間から顔を出し、大きな虹が見えた。

妖精達が、少しずつ戻ってきたようで、小さな光の粒たちが、耳元ではしゃいだ笑い声を上げて通り過ぎる。


それでもまだマンティコアを聖炎は燃やし続けていた。

彼らを浄化し尽くすまで。

炎がようやく消えたとき、本体は骨ごと焼かれつくし、残っていたのは紫の大きな魔石が二つだけだった。

ようやく僕は再びエリクサーを飲む。

「マンティコアって、魔獣じゃないのかな。」

『魔獣ではあるが、半分アンデッドなのだろうな。』

「なるほど。それで、本体は浄化の炎で消えてしまうのかな。」

でも、最後に2匹目が見せた1匹目に対する情愛は、本物だろう。そう信じたい。

「今度生まれてくるときは、普通の生き物だといいな。」

僕はそうつぶやいて、2つの魔石に手を合わせ、祈った。


魔石はもうすっかり浄化され、まがまがしさは感じない。

シンハも触っても大丈夫だ、と言った。

僕は亜空間収納にそれらを納めた。

「帰ろっか。」

『ああ。』

僕たちは歩き始めた。


『それにしても、さっきのアレはなんだ。』

「アレって?」

『浄化の雨だ。聖炎も。はじめて聞いたぞ。』

「あっはー。なんとなくできそうな気がしてさ。そういう時って、あるよね。」

『ない。普通は、ない。』

「えーそうかなあ。ほら、フィーリングでさあ。」

『ふぃー?ごほん、とにかく、魔法はどんな魔法なのか、予告してからやれ。こっちはそのたびにキモが冷える。また大魔法でお前がぶっ倒れるんじゃないかとひやひやしたぞ。』

「まあまあ、かたいこと言わないで。」

『まったくお前は!』

そんないつものペースでおしゃべりしながら、帰路へついた。




お読みいただきありがとうございます。評価やいいね、感想、はげみになります。作者はメンタルが豆腐なので、キビシイご指摘は勘弁してね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先が読みた~~~い 書くのが大変なのはわかるから仕方がないんだけど・・・ 小説ってやっぱり一気に読みたいよね^^ どうかどうか一日一話でも良いので更新続けてください。
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