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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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62 マンティコア 1 森の異変

春めいてきたとはいえ、まだ冬の寒さが残るある日の朝。

ピピピ チチチ…

朝、目覚めると隣にシンハの姿がなく、つららから落ちる水滴の音のほかに、やけに小鳥の羽音と鳴き声が気になった。

シンハの気配は洞窟の外にある。

僕が寝ぼけまなこで洞窟の外に顔を出すと、

『そうか。わかった。』

と言っているシンハの声が聞こえた。

シンハの相手はコマドリだろう。

何度か見かけたことがある。


「ふわわ…。おはよー。どうしたの?」

半分まだ寝ぼけながら、僕はシンハに声をかけた。

シンハはちらとこちらを見たが、

『なんでもない。』

と言いながら、あとは僕と目を合わそうとせず、洞窟に戻ってきた。

「?」

変だな。何か考え事?いや、何か隠してる?

僕は直感でそう思い、尋ねた。


「さっきの。コマドリ、だよね。時々見かける。…何かあった?」

『いや…。』

そういいながらも、なにかまだ考え事をしている。

シンハの尻尾がだらんと垂れて、動かない。こんな時は、何か考え事をしている時だ。


『サキ。』

「うん?」

『3日、いや、4日ほど留守にする。その間、一人でここで暮らせるか?』

と聞いてきた。

「!…一人でって…。」

『もちろん、湖の精霊や妖精たちにも留守は頼んでいくから、お前はあまり心配しなくともよいがな。いい子で留守番、できるよな。』

「いい子って、おい。僕が行かないこと前提で話すの、やめろよ。やだよ。シンハがどこかに行くなら、僕も行くよ。」

『いや、しかし、だな。』

「足手まといにはならないようにするから。ねっ!」

僕はシンハの首にしがみつき、甘える。


「やだやだあ、一人でお留守番は、やだあ。泣いちゃう、死んじゃう、発狂しちゃう!」

『サキ…。』

「戦いに行くんでしょ。危険だからって、僕を置いてけぼりはダメ、絶対!」

『しかしだな。』

「何と戦うの?」

『…チッ。どうしてお前は、いつものほほんとしているくせに、こういう時に限って敏感なんだ!』

「あ、何気にディスるのはんたーい。」

『でぃす??なんだそれは。』

「とにかく!僕も行くから。足手まといにはならないようにするし、回復魔法だって防御魔法だって、もう得意だし。君を守ることだってできる。絶対ソンはさせないから!ね!きーまり!」

『うう…。どうしてお前はこういう時は頑固なんだっ!』

「さあ、行くしたくしよう。数日なら、畑の水やりは、土の精霊たちにお任せしていいよね。シンハからも頼んでくれるでしょ。」

『だれもお前を連れていくとは』

「じゃあ、ここで僕が明日に原因不明の病気になるとか、キミの留守に強い魔獣が襲ってきて死んじゃっても、君は後悔しないんだね。僕が死んじゃっても!」

『うぐ。』

「シンハ。」

『うう…わかったわかった!連れていく!だが絶対俺の言うことを聞くんだぞ!無理や無茶はだめだからなっ!』

「了解です!師匠!」

『まったく。調子が良すぎる!』

「きゃっほう!冒険じゃ冒険じゃぁ!!」

というわけで、僕はシンハと一緒に魔物退治に出かけることになった。


「ところで、何を倒しに行くの?」

4日分2人前の食料とか着替えとか武器とかチェックし、旅支度をしながら、のほほんと、今日の買い物はなに的な日常会話風味でたずねると、シンハは呆れて

『まったくお前は。もう少し危機感をだな。』

「だって、敵と出会うのはまだ2,3日先なんでしょ。今から緊張したってしょうがない。」

『むう。確かにそうだが。』

「はい、朝食。あーん。で、なに?魔物は。」

僕はシンハに鳥モモを与えつつ、身支度を続ける。僕自身も、ささっと煮込みタレつき鳥ササミ入りサンドイッチをほおばる。


『むぐ。マンティコアという。』

「マンティコア…。もぐもぐ。なんか聞いたことある。」

『そうか。お前の居たところにも居たんだな。』

「え、ううん。むこうでは想像上の魔物だね。で、この世界のはどういうやつなの?」

『6つの足があり、グリフィンの頭とヤギの頭を持つ双頭の化け物だ。翼もあるから空も飛ぶ。短距離だがな。蛇の頭のついた尾を持つが、その蛇と目が合うと、石にされる。』

「うへえ。石化ですか。で、魔物のランクとしては?ワイバーンくらい?」

『いや、ワイバーンより厄介だ。ずるがしこいし、なにより石化が問題だ。』

「なるほど。」


石化といえばコカトリスとかメデューサとかを思い出す。コカトリスはこの世界に居るらしいが。

たしかメデューサは鏡の楯に自身の顔をうつして逆に石化させて退治したんだったな。

「じゃあ、必要なのは鏡の楯か。…あとは防御魔法を込めたサングラスとかかな。」

『鏡の楯?さんぐらす、とはなんだ?』

「目を防御するメガネだよ。メガネはわかるよね。」

『ああ。時折かけている人族を見るな。』

「それに色をつけて日光を遮るものがサングラスだよ。でも表面をミラー状にすれば、きっと鏡の楯のかわりになると思うんだ。そうだ、魔法反射の魔法を創ろう!もちろん、魔法防御も籠めるから、石化防止はきっと大丈夫。」


僕は内心、僕ができる魔法と、鑑定魔法をフル回転させて、石化防止案を瞬時に検討した。

どうやら採取した水晶でできそうだ。

「まあ、行く途中でなんとか作るよ。」

『そんな簡単に魔法を創造するなど…いや、もう突っ込まん。突っ込まんぞ。』

シンハがぶつぶつ言っている。

「火も消した。土妖精さんたちに畑もお願いしたし。トイレにも行った。剣オッケー、鞄オッケー。靴オッケー。じゃ、しゅぱーつ!」

『ふう。なんだかお前といると…』

「ん?」

『いや。もういい。』

なんだかシンハ、疲れてる?


歩きながらさらに尋ねる。

「聖獣でも石化は防げないの?」

『ほかの者よりは防げている。だが完全ではない。』

「?」

『俺が以前別のマンティコアを倒した時、石化魔法は俺に3回に1回の割合でしかきかなかった。それも、部分的にしか効かん。しかもすぐ魔力を籠めると元に戻れた。』

「ふーむ。なるほどね。魔力で相殺できるのか。」

聖獣だからかも。


「念のため、シンハの分も作るよ。石化防止サングラス。」

『まあ、あまり期待しないでおく。』

「あ、なにそれ。僕の実力を疑ってるな。魔道具作るの、最近うまくなったんだぞ。」

『とにかく、お前自身を守れる道具が先決だ。俺のは後回しでいい。』

「なんか、納得いかないけど」

『走るぞ。』

「へいへい。」


ついに60話!

マンティコアのお話は数回にわかれます。毎日更新していく予定です。

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