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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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55 武器の稽古

秋になっても、さまざまな武器の稽古は真面目にやっていた。

本当に此処では命に関わるからね。狩りで実践もするから、真面目にやらないと。


僕が作った魔剣(聖剣?)は、使ってみると威力が凄すぎて、なかなか使いこなせないから素振りで使うのみ。

普段の訓練はトレント製木剣に重りを仕込んでやっている。

だってさあ、素人の僕が、真横に薙いだだけで、かったいトレント一発で斬れるなんて、いくらなんでも性能おかしいでしょ。それも魔力を込めない『素』の剣でそうなんだよ。魔力ちょっと込めたら、切っ先から数メートル離れた先でシュパッと斬れてたんだよぉ。「飛ぶ斬撃」というやつだ。練習になりゃしない。

こりゃ剣に厨二病的な名前でも付けるしかなかろう。エクスなんちゃら、とか。うーむ…。まあ、そのうちね。


剣の稽古ではシンハが的確なアドバイスというかダメ出しをしてくる。

『まだ構えに違和感がある。おそらく使わないと思っている薬指と小指がキモのようだぞ。』

とか

『剣を振る時はブレないように。一筋の髪の毛のように一気に斬るのだ。』

とか。

脇を締めろとか体のひねりを剣に乗せろとか、腕ではなく体幹で剣を振るえとか、呼吸がどうのとか。

まじにこいつ剣豪じゃねえの、というようなダメ出しをシンハが出してくるのだ。くそう。いい目してるなあ。そういえば、「黄金の聖なる目」だったか。意味わかんないけど。きっと真贋を見極める目なんだな。人となりや、道具の善し悪しも見るのかな。


そして隙をついて攻撃してくる。

何万回、何億回シンハに転ばされたことか。

そんなわけで、転ばされたときの受け身だけはましになった。いや、剣の扱いについても、前世のうろ覚えの時代劇の殺陣シーンとかも思い出しながら真似てやっていたので、称号に「剣客」とつく程度にはうまくなれた。まだ「剣豪」には程遠いが。

はぁー。ありがとうシンハ…。


弓矢の稽古もあらためて行っている。

鍛冶をするまでは、黒曜石を手と魔法とで加工して鏃を作っており、手間暇がかかる割に魔法で強化した竹槍や木槍、魔法の「バレット」などに比べて、魔法を込めない素での威力がイマイチだった。

だが、最近は鍛冶作業で鉄製やミスリル製の鏃を安定して作れるようになった。これで殺傷能力も上がった。


魔法剣を作れるほどに魔力操作やさまざまなものを作り出す能力も上がったので、弓も矢も、春に比べたら格段に良質のものが自作できるようになった。

今の僕なら弓は機械弓も作れると思うが、魔法も使えば連射も矢の威力を上げることもできるので、使用しているのは原初的な形の弓である。


スキルの称号も今までは「よろず職人見習い」と「器用貧乏」だったのが、「よろず職人」と「臨機応変」に変化。特に鍛冶については「魔法鍛冶師・伝説級」となった。伝説の武器が作れる…場合がある、くらいの意味らしい。いつも作れるわけではないところがポイント。

ステイタスの称号欄については、表現もその意味もいまいちよくわからないし、あまり気にしないことにしている。


話を弓に戻すと、材料については、最初は普通にこの森の木を使っていたが、何度かひいただけで壊すようになったので、今は頑丈なエルダートレント製だ。なので、太さや長さなど見た目は普通っぽいが、実は強弓に属する。


矢は魔鳥羽をつけたトレント製。竹より重いはずなのに、安定して飛ぶんだ。この世界の魔物には、丈夫な軸でないと通らないから、竹の軸では魔力でコーティングして飛ばさないと、魔物に負けてしまう。


鏃はシンプルな鉄製と強い魔獣用にミスリル製と、試しにアダマンタイト製も作った。だがアダマンタイトはミスリルより魔力を通しにくいため、力業でやるときはいいが、魔力でコントロールするならミスリル製のほうに軍配があがった。そのため、鉄製とミスリル製を基本とすることにした。


なるべくまっすぐなトレントの枝を選び、魔力で微妙な曲がりを直し、鉄製200本、ミスリル製100本ほど矢を作った。まだ鏃を付けない軸と羽根だけのも200本用意。


という訳で、洞窟の前の木立に射的を作り、毎日本気で鍛練している。

最初は鉄製やミスリル製鏃をつけた矢はもったいないので、稽古用に同じ重さ、形に作った石鏃付の矢で訓練していたのだが、やはり微妙にバランスなどが違うので、ほどなく本番用の矢での稽古に変えた。


そのため、矢は結局鉄製鏃のものを400本、ミスリル製鏃のものを200本作ってしまった。まあ、亜空間収納に材料をぶちこんで「コピー」すれば、一応大体のカタチはできる。あとの微調整はきちんと自分で。あ、鏃は全部鍛冶作業で作ったよ。亜空間収納製ではなぜかいい鏃ができなかったからね。


生まれ変わった身体的能力はかなりのものらしく、弓矢も今では動かない的なら9割方あたるようになった。

もちろん魔力操作なしで、である。

あとは動く的を、ということだが、いつも鳥が飛んでいるわけでもない。

だから自分から動くことにした。

走りながら的を射る!

二本同時に射る!

などと、ロビンフッドなみの離れ業ができるように鍛練していた。


『だいぶ弓の腕もあがったな。それなら「狩人」を名乗っても問題ないだろう。』

とシンハ。

すると僕の称号欄がまたほわんと変化して、「狩人」という名も増えていた。

「「狩人」か。いいね。ありがとう。シンハのアドバイスのおかげだよ。」

『いや。これからも魔法無しでもちゃんと当たるように、稽古は怠るなよ。』

「はい!師匠!」

『返事だけはやたらいいな。』

「返事だけ、は酷いな。」

と言いながら、たまたま空をかすめた魔鴨を魔力無しで射止めていた。


『ほう。』

「やった!今日は焼き鳥にしよう!」

『魔鴨だな。あれは美味い。だが残念ながら獲物としては小さい。ほかの肉も焼けよ。』

「ふふ。了解!」

僕もシンハにつられてすっかり食いしん坊になってきた。


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