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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第十一章 魔塔生活 授業とS級授与式編
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529 国王陛下からの依頼

イケおじ、もとい国王陛下は笑顔で言った。それからシンハには真顔で謝ってくれた。

「シンハ殿、さきほどは私の護衛が驚かせてすまなかったの。お詫び申し上げる。」

『ばう。特別に許してやる。』

「うん?シンハ殿はなんと?」

えー聞かないでよ。そのまま言えないじゃんか。

「えと。謝罪を受け入れる、とのことです。」

と一応もっともらしく答えた。


すると若い従者(おそらく秘書官)がメガネをツイと上げながら、僕たちをちろりと睨んだ。

ケモノの分際で偉そうに、とでも言いたげだ。

それがシンハに伝わったのだろう。

シンハはその従者をじろりと睨んだ。

従者はびくっとしてメガネから手を放した。

シンハも器用なことをする。

従者にだけ殺気を放ったようだ。


「ささ、こちらに来て座ってくれ。そなたと少し話がしたくて立ち寄らせてもらったのだ。」

とひとりご満悦なイケおじの王様である。

まったく、偉いひとはわがままなものだ。


「失礼いたします。」

と言いつつ、僕は国王が座ったのを見てから、向かい側の長椅子に座った。

その長椅子には師匠がすでに座っており、僕は師匠の下座に収まった。シンハは僕の脇にお座りだ。

扉正面のホスト席は魔塔長。

王様は師匠と僕の向かい側の長椅子にひとりで座っている。


「Sクラスの授与式を王宮で行う件だが、諸般の事情でなかなかできず、すまなかった。ようやく日程が決まっての。ラウエル。」

「はっ。」

後ろのメガネの秘書官らしき人物に王様は声をかけた。

秘書官はアイテムボックスから盆に乗った封書を取り出すと、僕に渡そうとした。

しかし足下にはシンハがじーっと睨んでいるので、側に近寄れず、一瞬立ち往生したが、盆のままテーブルに置くという解決方法を見いだし、実行した。


王様に促され、

「失礼します。」

と言って、僕は封筒を手に取り、開封した。日付は8月20日。式典は午前11時から。10時までに王宮正面まで来られたし、と書いてある。

「その日程で行おうと思っておる。都合はどうじゃ?」

一応魔塔長と師匠を見る。

何か行事があればどちらかが言うだろう、と思ったからだ。

うむ、と二人とも頷いたので、

「大丈夫です。」

と僕は答えた。もちろん、授業がもしあったとしても、優先順位は当然授与式だ。

僕の都合というより、多忙な王様のスケジュールをようやくその日程で押さえたのだろうから、相当な理由がなければ変更は難しいだろう。それくらいは僕にだってわかる。


「良かった。ようやっと授与できるの。」

「ありがとうございます。」

「うむ。今日の訪問の目的のひとつはそれであった。あともう一つある。」

「?」

「実は、貴族どもの中には、いまだにそなたが一人で国境壁を直したというのを信じない愚か者が居てのう。我が名誉子爵を与えたのを不満に思う輩がおるのじゃ。当日は、そなたの実力を証明してもらいたい。」

「はあ。」

僕は困惑した。

するとメガネの秘書官が

「当日は広間に面した中庭に、新旧取り混ぜた石材を用意いたします。それを魔術で壁に組み上げていただければと考えております。」

と言った。


「フ、なるほど。サキを見世物にしようということか。」

と師匠。

「これ、口が悪いぞ。」

と魔術師長。

まったくだ。でも師匠の言うとおりでもある。


「僕は構いませんが…。でも中庭に壁を造ると、せっかく組み上げたものを、撤去しないといけませんよね。」

「まあ、そうなるか。いや、せっかくだから記念に残しておこうか。」


するとメガネの秘書官は

「陛下、それでは中庭の趣が…。」

「むう。そうかのう。」

「では、一度壁を造り、またそれを崩して中庭にふさわしい東屋を建てる、というのはいかがでしょう。」

と僕は提案した。

「ほう。」

と魔塔長。

「そんなことができるのか!?その日のうちに!?」

と王様。

「ええたぶん。あ、デザインは先におっしゃってください。他の東屋に合わせるとかしないと。」


「ぷっ、くはは!最高だな、お前!」

と師匠が腹を抱えて笑った。

「これ。ウォルフ。」

と魔塔長。

「失礼、くくく。サキ。だがやり過ぎるなよ。王宮付きの建築師や魔術師がクビになったらかわいそうだからな。」

「それは…もちろんです。」

と僕は大真面目に答えたが、まだ師匠はくくくと笑っていた。


「ふふ。面白そうじゃのう。では用意する石材は、東屋一棟分と予備若干ということにしよう。おおよそのデザインは、建築師から提供させる。それでどうじゃ?」

と王様は目を輝かせて言った。

「結構です。」

「もちろん、タダで造れとは言わんぞ。それなりに謝礼は出す。」

「ありがとうございます。」


「陛下。そろそろ…。」

と秘書官が王様を促した。

「なに、もうそんな時間か。もっといろいろと話したかったが、残念じゃ。下見が必要ならいつでも来て良いぞ。では、失礼する。」


王様を玄関までお見送りしたあと。

「陛下はすっかりご満悦であったのう。」

と僕をちろりと見上げながら魔塔長が言った。

それ、皮肉ですか?皮肉ですよね。

「…僕、余計なことを言いましたかね。」

「いいや。わらわも当日が楽しみじゃて。」

「ぶふ!はっはっは!」

まだ師匠は笑っている。

シンハまで呆れたように僕を見上げた。

『まったく。これ以上目立ってどうするんだ。お前は。』

『え?目立つ?そうかなぁ。』

じゃあどうしろと?どうせ壁を造るイベントはやらされるのは確定だったじゃんか。それを東屋に改造するだけだもの。ねえ。


『妙な貴族に目をつけられなきゃいいがな。』

『うぐ。そのときは、ヨロシクね。用心棒さん。』

『知らん!』

『えー。』


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