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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第十一章 魔塔生活 授業とS級授与式編
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527 サキの補習授業2

「こほん。えーと。みなさん、初めまして。サキ・ユグディオと申します。ついこの間まで、ヴィルディアス辺境伯領で冒険者をやっていました。ご縁があって、9月から授業を受け持つことになろうかと思いますが、まずはこの補習授業で、みなさんと一緒に勉強していきたいと思います。

補習授業の意義は、基礎をしっかり身につけることです。基礎がしっかりしていれば、今皆さんが持っている魔力を成長させることができます。魔力が伸びれば、やがては大魔術もできるようになる、かもしれません。

という訳で、この授業では主に魔力の練り方、育て方を中心に行います。

なお、補習に出るということは、落第したくない、あるいは基礎を学びたい、ということでしょうから、私もそのつもりで授業を進めていく予定です。

それでは教則本初級編の5ページを開いてください。」


教則本初級編の5ページには、魔塔長の挨拶文が書かれている。

それを前のほうに座っていた学生に読ませた。

「はい。ありがとう。この挨拶文には、教則本を何故新しく編纂したか、ということと、魔術を扱う者の心構えが、明快に記されています。

全文を何度も読み返し、頭と心に刻み込んでください。

特に2段落目。「魔術は未来への希望である」ということ。そして、「善なる魂を持って使うべき」というところは、忘れないでください。

補習授業の最後に、小テストを行いますが、1問はこの挨拶文から出題します。よく読み込んでおいてください。」


そんなふうに始まった、僕の初めての授業。

「魔力の練り方」は、教則本の第一章にある。

魔術とは何か、という大命題とともに、発現する方法として、魔力の「練り方」が書かれている。

体の奥「丹田」にあたる部分に「魔力だまり」があって、そこから魔力を全身に巡らし、そして手の指先から呪文とともに取り出し、魔術を発する。

それが基本。


実際に学生たちにやらせてみると、魔塔を合格したのだから、当然練り方の基本は知っていた。全員ができている。しかし僕に言わせると、練り方が全くもって甘い。そして、魔力が通る「魔力線」も予想以上に細かった。


平民の場合は、財力がないと幼少期から魔術を学ぶことは難しいから、致し方ないということはある。

貴族の生徒の場合は、大まかに言って2種類に大別できる。

家の力で推薦入学してきたような、貴族の坊ちゃん達にはいい加減な子が多いようだ。

そして、貴族でも幼い頃から熱心にかつ真面目に学んで来た子たちは、それなりに練り方の基本ができているようだ。


この王国の貴族は、男尊女卑はあるものの、長子相続が基本なので、女性であっても爵位を持つ者が多い。そのせいだろうか。熱心に魔術を学んで来た貴族の子の男女比は、女性のほうが多いようだ。

男性の場合、剣の道に進む選択肢もあるからということもあるだろう。


「魔力線の太さは、これまでどれだけ長く、そして真面目に魔力を「練って」きたのかのバロメーターです。今日は1年生が多いようですが、はっきり言って半数が、魔塔の学生として不合格な細さですね。」

とシビアに評価した。

ざわざわざわ…。

「でも大丈夫。これから真面目に練れば、3年後には今の3倍の太さにはなりますよ。」

と言うと、

「うそだあ。」

「ありえねえ。」

とまたざわついた。


「先生!」

「はい、なんですか?」

「先生の魔力量はどれくらいなんですか?」

と言った学生がいる。

「是非教えてくださいよ。」

生意気そうな貴族っぽい野郎だ。

にやついているから、僕が若すぎるので、そう多くはないだろうとからかおうということらしい。


いいでしょう。

「では、外を見ていてください。危ないので結界の中で魔術を発しますねー。」

と言うと、僕は呪文なしに、パチンと指を鳴らした。

その途端、

ピカッ!ドンガラガッシャァン!!!

「ひいい!」

「きゃああ!!」

簡単に落雷を見せた。

もちろん、他の教室には聞こえず、この教室にだけ聞こえるように、シールドを貼って術を行使した。


「ああ、耳が!」

「聞こえない」

「まぶしくて、目がぁ!」


と騒ぐので

またパチンと指を鳴らし、今度は

「ヒール」

とだけ唱え、全員をヒールで癒やした。


「あ、耳、治った。」

「怖かったぁ。」


「納得しましたか?オルゼン・フォン・デールハイト君。」

「!は、はい!」

オルゼン君、青ざめている。

相当ビビったようだ。


「先生!」

と別の学生が手を上げた。

今度は真面目そうだ。

「はい、何ですか?」

「先生は冒険者だったんですよね。ランクは何ですか?Aですか?」

うーん。言いたくなかったんでけどなあ。

「先日、Sをいただきました。」

と正直に言うと

「S!?」

「マジか!」

「ありえねー。」

とまたざわざわ。

でも尊敬のまなざしになっていた。


と、丁度リンゴーンとチャイムが鳴った。

「では今日はここまで。次は瞑想と、魔力を使うにあたっての裏ワザをお教えしますねー。」

と言ったものだから

「裏ワザ!?」

と皆が目を輝かせた。

裏ワザといっても、中級編には載っているものだ。

自分の魔力を「きっかけ」にして、大気中の魔素を使うというだけの話だ。

だが、これは割と知られていない。

自分の体内の魔力だけで魔術を行おうとすることが常識とされているのだ。


教室を出た時だった。

「先生!サキ先生。質問が。」

振り返ると、女子生徒が複数駆け寄ってくる。

うん。気づいていましたよ。階段教室のはじっこに固まって座っていましたよね。

「あぁ、君たちは…。」

「はい!今回、飛び級で合格しました!」

「おおー!おめでとう!」


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