525 闇精霊のこと PART 3
「ありがとう。確かに割れにくくなった感じがする。」
「たぶん、強度は1枚の結界につきこれまでの2倍以上だと思うよ。」
「ということは、たとえば10枚結界を張るなら、その10枚がそれぞれコーティングされたような感じ、ということでいいよね。」
やってみて、それを実感した。
「おお。ものすごく割れにくくなってる!」
「気に入ってもらえてよかった。それに、僕と契約したから、10枚以上張れると思うよ。これなら少しは「使徒」との戦いにも使えそうだろ?」
「うん!」
結界はなぜかレベルが上がっても10枚から増えていなかった。1枚ずつが丈夫にはなっていたが。
神族になっても変わらなかったが、今回試してみると、結界はなんと20枚まで増えていた。
しかも1枚1枚が頑丈になっている。
「属性コンプリートの特典、みたいなものか。」
とついつぶやいた。
シンハもヨミもなんとなく意味は伝わったみたいだった。
なるほど、こういう複数属性の複合という手があったか。
じゃあ、他の属性との掛け合わせは?
と思い、いくつか試してみた。
結界に火属性を重ねてみるとかだ。
できないことはないが、やはり光と闇との掛け合わせが、1番効果があった。
「でも結界は絶対じゃない。破られることもあると覚悟するんだよ。特に黒魔術を使う奴らは、生け贄の数でとんでもなく強くもなるから。」
「わかった。気をつける。もうひとつ、質問、良いかな?」
「なんなりと。アルジどの。」
「黒魔術に関する知識が、僕は足りていないと感じるんだ。何処に行けばあるかな。」
「今君が所属しているこの国の魔塔には、わりとあるほうだろう。まずは君の師匠に聞いた方がいい。それから、エルフの国カイエルン王国と、神聖皇国にもそれなりにあると思う。対抗するために、研究してきたはずだ。」
「なるほど。その2箇所なら、ゴウルに行く前に、立ち寄ろうとは思っているけど、その前に、知り合いに相談してみる。」
たぶんカイエルンにはユーゲント辺境伯が伝手を持っていると思うし、神聖皇国にはジュノ様に会うように言われたローハン・アウグスタ枢機卿に相談すべきだろう。でもまずはウォルフ・ランゲルス師匠に相談すべきだろうな。
と思っていると
『おいおい、本のことなら、俺たちを忘れちゃ困るぜ。』
と魔力から声を掛けてきた奴がいた。
「アルマンダルとアルス・ノトリア。久しぶりだね。」
令嬢の治癒事件以来、2つの魔導書は、慣れない仕事をして、かなり魔力を消耗したらしく、長いこと僕の魔力の中で眠って居た。元気になったあとは、普段はアルマンダルが元から居た魔塔の禁書庫にいる。アルス・ノトリアも一緒だ。今では二人?二冊?とも、ウノさんたちと仲良しだ。
ぽんと、珍しく2つの魔導書が顕現した。
「お、なにこれ。サキの眷属?本まで眷属なの?くくく。面白いねえアルジどのは。」
「こちらのいかにもな古い魔導書がアルマンダル。そしてこっちの鎖じゃらじゃらがアルス・ノトリア。」
「なんかどっちも禍々しいねえ。」
『ひでえな。もうアルジに浄化されて、中は清らか~なんだぜい。』
『右に同じぃ。』
「で、こちらが闇の1番のヨミ。眷属になったから、二人ともよろしくね。」
『おう!』
『よろしく!』
なんか軽いなあ。ヤンキーな魔導書だ。
「で、紹介もおわったところで…。黒魔術についての知識なんだけど、君たち、詳しいの?」
『そりゃないぜ。アルジよう。もともと俺たち、どっちも黒魔術の魔術書になっちまってたの、忘れたのかよ。』
『陣とか呪文とか、書かれていたものはもう消えたけど、知識は覚えてるぜ。』
『そそ。ついでに、俺たちに書いてあったもの以外も、結構知ってるほうだと思うぜ。』
「へえ。そりゃ頼もしいね。じゃあ、それを書き出すってできる?」
『『もちのろんよ!』』
ということで、思わぬ所に黒魔術の教科書がありました。
令嬢の治癒の時は、108の魔法陣だけに絞って拾い出したからな。ほかはよく見れなかったんだ。
『俺っちのとアルスのと、書かれた時代も違うけど、見比べれば訂正も可能だろうよ。』
『そうそう。なるべくこの際黒魔術の神髄をだな、忘れ去る前に書き出してやるよ。』
「ありがとう。じゃあ二人で協力して、よろしく頼むよ。」
「それならできあがったものを、僕がさらに校訂してあげよう。僕も闇の1番だから、多少は黒魔術のことも知っているからね。」
多少ってことはないだろうけど。
「それは頼もしい。よろしくね、ヨミ。」
「任された。」
かくして、闇の1番君が僕の眷属になった。
光の1番さん(女性形らしい)は、現在、聖女様という方と契約しているらしく、僕との契約は難しいらしいということが、ヨミやメーリアと話してわかった。
では2番さんとかと契約すべきじゃないの?と思ったが、
「サキは光の子みたいなものだから、敢えて契約する必要はないね。序列で言ったら、本当の光の1番は世界樹様で、次が世界樹の息子のサキ。聖女にくっついている彼女は、暫定でこれまで1番を名乗っていたけれど、本当はサキの次の3番目にあたるからね。」
だそうだ。
いつの間にか、僕は世界樹様に次いで光の2番にされていた。
うーん。解せない。
さらにメーリアが爆弾発言をした。
「闇との契約もしたし、サキ自身も光の2番いいえ、世界樹様を除いてカウントすれば、光の1番よね。ということは、これで全属性揃ったことになるわ。あとはサキが精霊王の自覚を持てば万々歳ね!」
「へ?セイレイオウ??」
「ふふ。そのうち、きっと自覚するわ。うふ、うふふふ。」
意味深に微笑まれた。
「おう。そう言えばそうだな。久しぶりだよな。精霊王は。」
「そうなのよ!楽しみね!」
「ああ。楽しみだ!」
ヨミとメーリアがニコニコと二人で盛り上がっていた。
シンハはフスンと鼻を鳴らしただけで、不満はないが納得もしていない感じ??
その日の夜。
シンハを見ると、寝たふりをしている。
「…シンハ。精霊王って、ナニ?」
『俺も会ったことはない。だが母から話は聞いている。そのうちわかる。今はまだ気にするな。』
むう。なんか、当事者らしい僕だけが、よくわかっていないんですが。
まあいいか。
それより、黒魔術について、もっと勉強しないとな。
ここでお知らせ。
少しお休みをいただきます。
ひと月くらい、かなあ。
王様との謁見もまだだし、王都編はまだまだ続く予定ですが。
それに、本筋とは関係なくまわりの人々のことも書いていきたいと思っています。
またお気軽にお立ち寄りください。ではまたねー(^_^)/