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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第十章 魔塔生活 ユートピア村編
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522 ドブさらいアゲイン PART 3

ドブさらいで長尺かつ3話になっちゃったよ。

僕の場合は、ダンジョンに潜ったり、魔獣討伐やアラクネの件、各種特許やらで、すでに国家予算規模の財産がある。

これは、森で拾った宝石類(川の石とか塩の中のダイヤモンドとか)を加えていない額である。

それと、スーリアの母古龍から受け継いだ財産もカウント外である。

それらを含めたら、天文学的数字だろう。

もしかすると、大陸中でも上位の大富豪になるのかもしれない。

だからといって、今の生活は何も変わらないだろうけど。


「それより、石龍の魔石とか、『呪いの指輪』が気になるよ。それに、『収納付きの腕輪』もあった。あれの中には貴重そうな剣と鎧も入っていたからね。」

『持ち主がいれば残念だが、そうでなければお前のところに戻ってくるのだろう?』

「まあね。アルシュ兄さんならあの腕輪のからくりもあっさり破っちゃうだろうから、剣と鎧が入っていることもわかるよね。あれだけはちょっと欲しかったかも。」

『期待しないで待つしかあるまい。』

「うん。」


と言っていると、数日後、宝石のいくつかは戻ってこなかったが、代わりに謝金として白金貨2枚をいただいた。

そのほかは、石龍の魔石も呪いの指輪も、そして収納つきの腕輪も、僕の帰属となった。

アルシュ兄さんいわく

「その『収納付きの腕輪』だが、ギルドに記録があった。

100年も前にセレンシア・ダンジョンで出たアーティファクトらしい。競売にかける予定だったが、その前に盗まれた。元の持ち主の冒険者も殺されて、身よりもいない。相続人もいないというワケだ。ゆえにこれはサキのものとなる。」

「はあ。」


「中に何か入っているようだが、僕は見れなかった。どうやらその腕輪と「契約」しないと、中味もみれないらしい。」

「え、いや、そんなはずは…。」

「もしかして、中味を見れたのかい?」

「はい。何かいわくありそうな剣と、鎧でしたよ。取り出しては見ませんでしたが。」

「ふむ…。契約しなくとも、サキは取り出せるかい?」

「どうでしょう…。いや、やはり難しいみたいですね。はじかれました。」

「じゃあ、腕輪と契約して、中味を出してくれるかな。僕も見たい。」

「わかりました。」

アルシュ兄さんも神族で、魔力も多い。なのに見れなかったとは…。

もしかして僕の方が、アルシュ兄さんより魔力量が多いのだろうか…。うん。深く考えないことにしようっと。

僕は腕輪を持ち上げ、中味を頭に浮かべ、「取り出し」た。


「おや。」

『ほう!』

アルシュ兄さんだけでなく、シンハも声をあげた。

それだけでなく、テーブルに顎を乗せて、くんくんとにおいを嗅いでいる。どぶくさく…はないようだ。


僕も鑑定して驚いた。

剣は「こん斬りの剣」という物騒な名前。

これで斬られたら、きっと即死。そして輪廻すら難しいかもしれないという、使いどころに悩みそうな剣だ。見た目は結構派手で、刀身は僕の魔剣や例の心臓保護膜のように、シマシマの模様のある剣。根元には樋に世界樹の葉っぱが唐草風に彫ってある。


鎧のほうは、「不壊の鎧」という。全身を包む金属鎧だが、めちゃくちゃ軽い。ほぼミスリル製の鎧で、兜も付く。確かに付与魔術が付いていて、軽量化と、攻撃されても魔術を跳ね返し、酸でも溶けず、斬撃にも強いようだ。これ、敵からしたら、かなりやっかいなんじゃないかな。


『いいものだ。聖属性もついている。ちょうどよい。お前の鎧にしろ。』

と聖獣閣下はのたまった。


「ワカッタ。」

僕は頷く。確かに、これからの敵を考えると、防御にどれだけお金をかけても足らないほどだものね。

いざという時のために、使わせていただこう。


『剣は…、まあまあだな。』

とシンハ。

聖属性はないから、イマイチということだろうか。

僕にはすでに、自作の「魔剣」があるから、基本、それでいいのだけど。

どうしても誰かを断罪せねばならぬ時は、…たとえばあの隣領のギルド職員で連続強姦殺人鬼だったイサクのような輩の場合は、神に代わってこの剣で殺さねばならぬかもしれない…。


死神が現れて、イサクを連れて行った。あのシーンを思いだし、眉をひそめる。

あれは、世界樹のもうひとつの姿。

今、この剣が僕の前に現れたということは、ジュノ兄さんが、その代行を僕にせよということなのだろうか。

そして、そんなことが、僕ごときにできるのだろうか…。


『お前が何もかもを背負う必要はない。』

と突然シンハが言った。

「え?」

僕はなにか言葉にしていたのか?

『お前の考えそうなことなど、俺にはわかっている。お前は世界樹の代行者ではない。その証拠に、「使徒」でもないではないか。』

確かに。

でも「後継者」候補ではあるようなんだけど。


『お前はまだ子供だ。そう深刻になるな。いざという時は、俺にも考えがある。』

「(考えってなにさ。)」

『それはその時まで秘密だ。』

「(むう。僕の身代わりに死ぬとかはだめだよ。絶対、ダメ。)」

『わかっている。俺も未熟なお前が心配で、安心して死ねぬわ。』

と言って耳を後ろ足で掻いたりする。どこからどこまでが本気なのかわからん。

「むう。」


『とにかく、剣も収納しておけ。素振り用くらいには使えるだろ。』

「素振り、ね。」


「ん?ん?素振り用にしろって、シンハが言ってるのかい?」

とアルシュ兄さん。そうだった。此処にはもう一人いたんだっけ。

「あ、はい。鎧は僕用にしなさいって。軽量だし聖属性だからと。で、剣も収納しておけ、素振りくらいには使えそうだ、ということらしいです。」

と伝えた。

「はー。素振り、ね。物騒な素振り用の剣だな。」

やはりアルシュ兄さんも鑑定していたか。

「はい。僕もそう思います。」

と苦笑するしかなかった。


『しばらく収納すれば、聖属性も付くだろう。』

「ああ、そうか。…僕が収納しておくと、少し聖属性を帯びるので。そうしろと。」

「ほう。なるほどね。そうすれば、禍々しさも有益なる剣に変わるということか。」

「可能性ですけどね。」

「ふむ。」


という訳で、剣と鎧は腕輪から出した状態で、ひとまず僕の亜空間収納に納めた。腕輪については、付与魔術がさらに加えられる魔石も嵌まっていたので、このまま装着しようか迷ったが、これも聖属性が生えてからのほうがいいかもしれないので、一応収納。


腕輪はデュラハン師匠にいただいた形見があるし、収納についても、僕は今のところ間に合っているから、聖属性がついたら、防御魔術でも付加し、僕との「契約」は解除して、誰かに譲ってもいいかもしれない。その時はどぶから出てきたことは伏せておいたほうが、ありがたがられるかもですが。

ま、正直にどぶから拾ったことも言って、それでも欲しいという人に譲ってあげよう。



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