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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第十章 魔塔生活 ユートピア村編
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521 ドブさらいアゲイン PART 2

ヴィルドでも側溝をきれいにしたけれど、あの時よりも魔術が使えるようになっていて、ますます効率よくできている。しかも使った魔力は微々たるもの。

試しに両側1キロメルをきれいにした訳だが、問題無くできたので、今度はもっと長い距離を同時に浚うことにした。

ネヴィル・ストリートは、長さ約3キロメル。だから残りは2キロメル。

両側の側溝合わせて、あと4キロメルあることになるが、僕の索敵ソナーには全部の距離が入っているから、残りは分けないでも大丈夫そうだ。

「トレース!側溝の蓋オープン!クリーン・エト・汚泥ブロック化!」

側溝がピカッと光ってカチャカチャチャリン。

通貨や宝石がまた足下に集まる。

ほんと、結構王都は落とし物が多いな。

「ウォーター・エト・ハイクリーン!ヒール!」

ざっと水が側溝を流れ、ヒールで側溝修理。汚泥を集めて収納。


「この通りはおしまいだね。」

一応、城まで走りながら点検する。と、城の前を守る衛兵たちが側溝をのぞき込んでいた。

「あー、言っといたほうが良かったかなあ。」


シンハが魔力から出てきて、念のため、僕のそばについた。

「おはようございまーす。」

門番さんに挨拶すると、

「これをやったのは貴様か?」

と疑いの目で詰問された。

「あ、はい。王都管理局からの依頼で。」

と冒険者カードと依頼状の写しを見せる。


僕のカードを見て、

「む!め、名誉子爵!?し、失礼しました!!」

と最敬礼された。

「いえー。すみません。お騒がせしてしまって。」

と僕。

「あと何日か同じように他のメインストリートもしますので。そのようにご承知おきください。」

と言うと

「はっ!申し送りをしておきますっ!!」

と言われた。

どうもすみませんね。でも、やはりこういう時に、Sランクとか貴族の称号とかが効くんだよなあ。便利ではある。


翌日はイブレア街道、さらに翌日は別のメインストリートをと、真面目に1日1本ずつしていたのだが、僕も面倒くさくなってきた。

そこで、教会に行き、高い鐘楼に飛び上がると、大魔術を行うことにした。

杖をフルサイズで取り出し

「イ・ハロヌ・セクエトー…。王都の道のすべての側溝をトレース!蓋オープン!クリーン・エト・汚泥ブロック化!ウォーター・エト・ハイクリーン!ヒール!!」

と路地の小道も含め、王都のすべての道をトレースして汚泥を浚ったのだった。

さすがにごそっと魔力が抜けたが、心地よい疲労感と達成感を感じた。

「ふう。これで、何処を歩いても臭くないよね!」

とシンハを見ると

『…まあ、良いのではないか。精霊たちも喜んでいる。』

と半ばあきれたようなため息を漏らしつつも、肯定してくれた。

うん。確かにあきれてるよね。


『それにしても…よくもまあ集まったものだ。』

そう。硬貨とか宝石がね。もうジャラジャラですよ。金貨だってかなりある。白金貨も数枚あった。とんでもねえ。

しゃがみ込んで、足下に集まってきた貴重品に目をやる。

たぶん、小道のほうがいろいろ落ちていたんじゃないかな。


「なんか、魔石もあるね。それから…『呪いの指輪』??」

つまみ上げると、

『おい、そんなもの、拾うんじゃない!』

と前足で小突かれ叱られた。僕なら呪われたりしないから。大丈夫だって。

「とにかく、一度ギルドに相談だな。」

ざっと袋に入れ、ポイと亜空間に収納。

それから僕とシンハは鐘楼からふわりと飛んで脇道にさりげなく着地すると、朝日に照らされた街を歩き、途中で串焼きなんかを食べながら、ギルドに向かった。



「あははは!さすがサキ君だねえ!」

腹を抱えて笑い転げているのは、ご存じ、ギルド総長のアルシュ兄さんだ。

(兄さんと呼べとまた言われたし。)

「そんなに笑わなくとも。」

「くっくっく。いいよいいよー。君がきてから、楽しい話題がいっぱいでさあ。まずは教授になったんだって?おめでとうねえ。くくく…。それと、なんだって?ドブさらいを王都全部の道でやったってぇ?

すごいねえ!白金貨まで落ちてたなんて、ねえ!」

ピカピカにクリーンした白金貨やら宝石やらを、目の前にして笑い転げる。


「貴重品については、原則、拾った冒険者のものだ。ただ、数は管理局に報告することになっているけどね。くくく。」

と笑いすぎて涙を拭きながら言った。

「そうなんですか。謝礼が出る場合があるとかいうから、全部取り上げられるのかと思っていました。」

「いや、タテマエ上ああ書いているけどね。硬貨は全く問題ない。拾ったキミのものでいい。宝飾品のほうが問題でね。貴族が盗まれたとか紛失したとか、届け出ている場合は、返却しないといけない。その場合は、品物は没収だが謝金が出る、という訳だ。」

なるほど、そういうワケね。


「一応、届け出のリストと照合しないといけないから、硬貨以外は数日預かるよ。ああ、その『呪いの指輪』もね。魔塔とかから申し出があると没収だな。」

「はあ。別にいいですけど。」

「この魔石も大きいねえ。ふむ。これ、石龍の魔石のようだな。本当に側溝は宝の山だったようだね。くくく。」


ということで、硬貨以外は数日ギルド預かりとなった。

『で、結局いくらあったんだ?』

「お金?白金貨もあったから…硬貨だけで523万1281ルビ、だね。」

この数値はさっきアルシュ兄さんにも伝えた。当局へ報告が必要とのことで。

『…。低ランクの冒険者が真面目にどぶさらいをしたら、一生食うに困らん金額だな。』

「そだねー。」

と僕は気のない返事。ざっと5千万円以上だけどね。


それと、今回の正規の報酬は、先ほどギルドに支払ってもらった。

メインストリートのみの金額は、平均の長さ約3キロメルの道が5本で15キロメル。それらをつなぐ環状道が約20キロメル。それに城周辺の道などで合計約40キロメル。側溝は両側にあるので、倍の80キロメルだ。100メルで100ルビ、つまり1キロメルで1000ルビだから、合計8万ルビ。

そして、ギルドがその他の道すべて分として上乗せしてくれて、その倍の合計16万ルビが報酬となった。160万円。


これは下級冒険者にとっては大金だが、C級以上くらいの冒険者なら、中型の魔獣や獣を狩るほうが卸値でも絶対高いし、「はじまりの森」のトレントの枝なら、数本でそれくらいにはなる。

誰もやりたがらないのは当然だ。

僕は慈善事業のつもりなので、別に構わないが。

むしろ、拾い上げた貴重品類のほうが、とんでもない価値があった。

おそらく、それを想定して基本料金が安いのかもしれない。



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