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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第九章 司書たちのこと&魔塔受験編
510/529

510 師匠と魔塔長室へ

コンコン

「入れ。」

「失礼します。おはようございまーす。」

「おう。おはよう。サキ教授。」

と師匠がにやにやしていやがる。

「僕は魔塔の学生になりにきたのに。嵌めましたね。」

「ふっふ。いいじゃないか。一軒家に住めるんだ。」


「まあ、それは良いことですが…。ところで、僕はどの講座の担当なのでしょう。」

「まだ協議中だ。希望はあるか?」

「特には…。というか、僕が学生に教えられることってあるんでしょうか。」

「そりゃたんとあるだろう。冒険者もやっていたんだ。学生が魔塔を出てからの事を考えると、冒険者向けの講義も面白そうだ。攻撃魔法の講座なんかどうだ?」

「なるほど。やれないことはないですが…。あ。そうだ。治癒魔法系とか、薬草学とかどうですかね。」

「ふむ。そういうのもありだな。だが、おまえのポーション、イレギュラーな素材だろう?」

「あー、基本、メルティアと僕の作った魔素水ですね。だめかあ。」

「まあ、おいおい魔塔長とも相談して決めていくとしよう。

今回合格した3名は、いずれも新人だ。どこかの国で魔術を学生に教えていたやつはいないから、3人とも実際講義するのは夏休み明けの9月からだな。それまでは、お前も俺の助手をしつつ、いろいろ講座に出てみるといい。」

「わかりました。」


「どうだ?少しは気が楽になっただろ。」

「ええ、まあ。急にあれは教授試験だったと聞かされて、昨日は頭の中がマッシロでしたからね。ほんと、酷い師匠だ。」

「ふふ。日頃お前にはなにかとやり込められているからな。愛情あふれる師匠からの意趣返しだ。ざまあみろ。」

「まったく!ところで、引っ越し先、もう決まっているなら、見に行きたいのですが。」

「ああ。そうだな。いくつか空き家があるから、今なら選べるらしい。」


そう言いながら、師匠はるんるんと僕とシンハを引き連れて総務へ。

まったくもって腹立たしいが、僕も子供じゃないから、矛をおさめてついて行った。


総務に行くとミルオラさんが居た。

「合格、おめでとうございます!」

「ありがとうございます。」

「魔塔長がお二人をお待ちです。奥へどうぞ。」

あ、そうか。本当なら昨日のうちに挨拶に来るべきだったか。


総務を通って、奥の魔塔長の執務室へ。

コンコン。

「どうぞ。」

「失礼します。」

シンハを連れて一緒に入る。

「おお。サキ君。合格おめでとう!」

「ありがとうございます。」

「ふふ。まったく。君もやんちゃな師匠を持って大変じゃの。教授試験だと知らされなかったそうじゃないか。」

「はい。昨夜はやけ酒でした。」


「魔塔長。なに第三者みたいなことを言っているんですか。サキ。俺の話に乗ったのは魔塔長もだからな。騙されるなよ。」

「えー。そうなんですかあ。酷い上司たちだ。」

「ふっふっふ。久しぶりに面白かったのじゃ。それもこれも、君なら絶対合格するとわかっているからできたこと。

結構大変だったのじゃぞ。試験会場すべてから、「教授」という表記を抜いて貼り出さないといけなかったし。監督官やミルオラにも教授試験とは言うなと口止めしたし。

じゃが楽しかった!久しぶりの娯楽を提供してくれて、ありがとうなのじゃ。」

「まったくもう。」

ふふふと笑う魔塔長。おちゃめだけど、酷いなあ。


「ところで、さっきもこいつと話していたんだが、こいつが学生に何を教えるか、決めないとな。」

と師匠。

「希望はないのかえ?」

「というか、僕が学生に教えられることがわかりません。」

「なんでもいけるじゃろ。特に実技は圧巻じゃった。攻撃魔法4回で120点も叩きだしたんじゃからな。あれは笑うほかなかった。くくく。」

また笑ってる。ほんと、ツボってげらげら笑っていたもんなあ。


「特にリペアではなくヒールと唱えたのには驚いた。もしや国境壁などもアレで直したのかえ?」

「ええ。まあ。」

「ふむ。なぜリペアではないのじゃ?」

「リペアは思いつきませんでした。僕的には、「元通りに直す」はヒールなので。それに、ヒールは厳密に言うと、「元のベストの状態に直す」という感じなのです。それを生命体以外にも使ってみたらうまくいっただけです。」

「なるほどな。ふむう。研究の余地ありじゃな。」


思考の海に深く潜りそうな魔塔長に、師匠は話を戻した。

「ん、ん。魔塔長、こいつを早々に「ユートピア村」に引っ越しさせないといけないので。」

「おうそうか。わしも一緒に参ろう。」

「え、来るんですか?」

と師匠。

「なんじゃ。新人教授の新居を決めるのに、わしが同行してもおかしくないじゃろうに。」

と言いつつ、もう外出の支度をしている。杖を持って帽子を被って、マントを羽織って。

「さ、行くぞえ。」

「…」

いつも魔塔長はこんな感じでマイペースなのだろう。

師匠が、首をすくめ、両掌を上に向け、だめだこりゃというジェスチャーをした。

異世界でもおんなじなんだあと、僕は妙なところで感心した。

(それともフランク王国ですでにもうあったジェスチャーなのだろうか…。)


ホールを突っ切って、裏庭に向かう通路を進む。まっすぐ行けば裏庭に出る扉だ。

だが魔塔長は途中にある部屋の扉前で立ち止まった。

その扉にあるパネルに魔塔長が指輪をちょいと当てると、扉が開いた。

すると、部屋の中央に転移陣があった。

へえ。こんなところに転移室があるんだ。

と感心しつつも、僕はこっそりシルルを魔力に召喚しておいた。

「ユートピア村」、一緒に見に行きたいからね。



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