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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第九章 司書たちのこと&魔塔受験編
507/530

507 合格発表!…あれ?

地球の日本では、7月5日がどうのと言っておりましたが…。皆様ご無事でしょうか…。

合格発表までの間、受験生全員が魔塔に滞在している訳ではない。

もともと王都住まいの人もいるし、知人宅や宿に滞在したり、人によっては町なかで1週間だけ働く人もいるからだろう。

それでもやはり魔塔内の食堂は混む。

けれど、それも空間魔法で食堂を広げ、座席も机と椅子を魔法で増やして対応できているようだ。

もちろん、まかないのおばさん達は、普通にアルバイトを増やすしかないけれど。


1週間の間に、何度かエレア女史を見かけた。

食堂とか図書館とか。

でも向こうから僕に声は掛けてこないので、僕も目が合ったら会釈するだけ。


案の定、彼女は誰ともつるまず、一人孤高を保っている感じ。

尻の軽い学生がへらへらと誘惑しようと傍に行っても、つんと無視。

しつこい奴にはぎろりと睨んでお終い。

ほんと、彼女に睨まれると、僕も恐いと思ったからね。


太っちょおじさんは見かけていない。

きっと、王都に家があるか、もしくは王都内の宿に泊まっているのだろう。

家族一緒に上京している場合は、さすがに家族は寮には泊まれないので、そうせざるを得ない。

僕は例外。内弟子だから。


痩せおじさんは見かけた。

やはり食堂と図書館で。

図書館では黙々となにかを読み、書き写していた。

勉強熱心だ。

食堂で会ったとき、僕がシンハたちを連れていたので、驚いたようだった。

あまり従魔連れはいないからね。


痩せおじさんはホレイショ・ランバルというそうだ。

話してみると、温和な人だった。

実家は南のランス地方で、雑貨屋兼魔道具屋をやっているそうだ。

まだ32才だって。婚約者と上京したらしい。

フィアンセは宿代を稼ぐため、王都で臨時のお針子のバイトをしているそうだ。

なんと王都で流行り続けているアラクネ製ストール(夏用)を、加工するお針子だって。

ライム商会の下請けの商会だそうだ。

アラクネ布の扱いができるなら、それなり魔力があるのだろう。


ホレイショさんはフィアンセと宿屋暮らしだが、発表まで許可を貰って図書館に出入りしている。

「魔塔に合格できたら、寮で一緒に暮らせると聞いたので。」

と照れながら言っていた。

左手の指輪が光っている。

らぶらぶなんですね。ごちそうさまです。


さて。

いよいよ発表の日がやってきた。

午後3時に正面の庭に掲示板が立てられ、貼り出される。

日本の合格発表とよく似ている。

僕はシンハとシルル、スーリアとともに、掲示板を見に行った。


掲示板が魔法で次々と建てられる。

番号順に建てられていく。

どうせ僕は番号最後だもんね。

周囲が

「あった!」

「合格した!」

と騒ぐのを横目で見つつ、1000番台が貼り出されるのを待つ。


1000番台は、合格者がなんと3名。

1002番、1003番、そして僕1004番。

つまりホレイショさん、エレア女史、そして僕だ!

ふとっちょさんだけが不合格だったようだ。

解答用紙、燃やしてたもんなぁ。


「あったよ!シンハ!合格した!」

『おう。おめでとう。』

「おめでとござましゅ!」

ぴっきゅう!

家族全員、それぞれ喜んでくれた。

『おほ。合格か。まあ俺のアルジだから当然だよな。』

と魔力の中からアルマンダル。

『だよねー。』

とアルス・ノトリアも相づちを打つ。

「(ふたりとも、ありがとねー。受験勉強、手伝ってくれてありがとね。)」

と一応お礼を言っておく。ほとんどアドバイスはもらわなかったが、一応古代魔法の発音の歴史で意見をもらったりしたからね。直接試験には出なかったけどさ。


人混みから抜け出し、木陰でシルルとはダンスみたいにして喜びあった。

ふと、視線を感じて振り向くと、師匠が居た。

「師匠!」

「おう。受かったな。おめでとう。」

「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」

「おう。で、さっそくお前たち、引っ越しな。一軒家、欲しいんだろ?」

「!良いんですか!?」

「もちろん。ただし。ちゃんと義務が伴うからな。覚悟しろよ。」

「?義務?ちゃんと勉強はしますよ。他になにかあるんですか?」

義務という話は前にも言われた。でもどんな?

なんか含みがあるなあ。

「ふふん。ほれ。これが関係書類だ。よーく読んで、義務をかみしめておけ。いいな。」

とにやり。

なんだろう。


僕に分厚い封筒を押しつけて、師匠は珍しく鼻歌なんぞ歌いながら、行ってしまった。

掲示板前では今もまだ歓喜の声が続いている。

僕達は少し離れた木陰のベンチに座り、師匠が置いて行った封筒をあけ、書類を開いた。

義務ってなんだろうね。

最初に魔塔長の署名入り賞状みたいな認定証だ。合格の証明書だな。

そう思ってうきうきしながらしっかり読む。

「…え?ええ!?」

僕は真面目にそれを読み、そして目を疑い、驚き、飛び上がるように立ち上がった。


「認定証

サキ・エル・ユグディオ殿


貴殿を、魔塔の教授として認める


大陸歴○○年○月○日

魔塔長 エルシニアス・オニキス・フォン・バーデンブラッド」


『なんだ?どうした?…!おい、お前、教授と書いてあるが。学生になるのではなかったのか!?』

「…が、学生になるつもりだったんだけど…。あーだから、記述問題、難しかったんだー。」

呆然とした。力が抜けてへたりとベンチに座り込む。

何故に?ドーシテ?

たぶん、1000番台は、教授試験だったのだ。

確かに、1000番台って、他の受験生から、番号が離れていたよね。

しかも、他の受験生より老けてた。エレアさんと僕以外は。


「義務って…こういうことか。学生を教えなくちゃいけないものね。」

と言いつつも、半分意識は上の空。

他の書類も、「教授心得」とか「学則」とか、「教授会日程」とか…。


「くそー。やられた。師匠に!」

僕は防音結界を張ってから

「師匠のバカヤロー!!」

と思いっきり叫ぶのだった。


サキ、師匠に嵌められましたネ。

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― 新着の感想 ―
え?何となくそんな気はしたけど、サキは修行しなきゃいけないのに教える側?修行どうすんの?(;・∀・)
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