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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第九章 司書たちのこと&魔塔受験編
505/530

505 試験のあとで

合格発表は試験の一週間後に訂正しております。

「面接は?」

と僕。

「私も免除。もう魔塔長と会っているから。」

と言いながら階段を降りてくる。

「そう。…えと。僕はサキ・ユグディオ。君は?」

「エレアよ。合格したら、正式に名乗るわ。」

「はあ。こほん。さっきの実技、君、凄かったね!」

とワクワクしながら素直な感想を述べた。ところが

「それ皮肉?」

と切りかえされ、空気が急に冷たく感じた。

「え。いや、本心デスケド。」

やだーこういうヒト。


「貴方のアレを見たあとじゃ、皮肉にも聞こえるわよ。自重ってもんがないの?あなた。」

「それ、キミに言われたくな」

「何か言った?」

「いえ!なんでもアリマセン!」

つい目をそらす。

こええ。

こういう女性には、反論しないに限る。


「たぶん、私と貴方は合格すると思うわ。空きの枠は複数あるって聞いてるから。合格したら、私より目立たないでくれるかしら。いろいろ私にも事情があるの。よろしくね。」

と言うと、つんとして、階段を先に降りていった。

「…。」

ナニアレ。


僕は苦手だなあ。

もうちょっと言いようがあるだろうに。

なるべく関わらないようにしたいなあ。ふう。

あ、ところで、さっき妙な言い回ししたな。「空きの枠は複数ある」??

今回は編入試験な訳だけど、魔塔に入学できるのはわずか数名、という訳ではなさそうだったけどなあ……………。

まあいいか。


あんなヒト、異世界にもいるんだなあ、と思いながら寮の部屋に帰る。

これまでこの世界で出会った女性達を振り返ると、みんな笑顔が素敵だし優しいひとばかりだった。

僕は本当に恵まれていたんだなと思ってしまう。だって、話をしただけでストレスって…。ねえ。

でもまあ、一番最初のユリアも、ちょっとあんな感じがあったからなあ。たかびーでさ。

でもあの時のユリアは、特殊な状況だったから。わざと強がった態度を見せてたんだろうな。

今ではすっごく素敵なレディで、優しいし、デートすると、ほんと、かわいいけどね。

あーなんか、急に会いたくなっちゃったよ。グスン。


「ただいまー。」

「おかえりなしゃいましぇー!」

シルルの声を聞くとほっこりするう。可愛いなあ。

「お茶、入れましゅね!」

「ありがとー。あ、いい匂いがする。何作ってたの?」

「ポムロルパイでしゅ。」

「わーい!」


きゅぴ!

パタパタ飛んで、スーリアが僕に飛び込んできた。

「(ママ)」

「ただいまー。ふふ。なに?甘えたくなったのかな?」

きゅう。

僕にじゃれてくる。

一日離れていただけなのに。可愛いなあ。

「よしよし。」

僕は人間の赤ん坊をあやすように、抱っこして背中とんとんしてあげる。

きゅ。

と啼いて、尻尾を振って甘えてくる。

大きくなったら、こうも出来ないからな。

できればスーリアにはこの大きさのままでいて欲しいものだ。


「たかいたかーい!」

きゅいっ、きゅいっぴ!

スーリアが翼を広げてはしゃぐ。

あはは。もう。うちの子はかわええのう。



『それで、ママさんや。午後の試験はどうだったんだ?』

「それがさあ。」

僕は美味しいポムロルパイをほうばりながら、かくかくしかじか、とシンハに報告した。

エルフっ子のたかびーぶりも。


「ふふん。まあ、そういうのもいるだろうな。基本、エルフは気位が高いからな。」

「えー。僕の知っているエルフさんたちは、みんな気持ちのいい方達ばかりなのに。」

『お前のまわりにいるエルフの女性は冒険者ばかりだろう。エルフの中で、森から出て冒険者になるのは例外なんだ。

冒険者は臨時パーティーも組まねばならないから、他人との付き合い方にも慣れている。

だが、森に籠もっているエルフの中には、人間が嫌いとか、ドワーフが嫌いとか、いろいろ偏屈な奴も居るぞ。』


「そうなんだ。あー。これ美味しい!シルル!シルルは素敵なレディーだねえ。」

「えへへ。光栄でしゅ。」

『シルル。騙されるな。ヒト族の男は、女を口説くのが上手い奴もいる。油断ならんからな。』

「ゴシュジンしゃまも、そうなのでしゅか?」

「いや、違うから。シンハ。変なこと言うなよ。酷いなあ。」

『ふっふ。お前をからかうと面白いからな。』

「もう。シンハ。勘弁してよー。」

他愛もない事を言い合って、遅いおやつを食べ終えると、僕は夕飯まで、宿題の残りの司書さんたちの心臓と保護膜の組み立てを少しやった。


合格発表は、1週間後。

あの人数を採点するのだから、よく1週間でできるなあと感心してしまう。

先生方、お疲れ様です。

(あとで知ったが、採点には司書たちも手伝うそうだ。確かに、穴埋め問題とか機械的に採点できるものは絶対早いだろうからね。)

発表までに、僕はできるだけ司書さんたちの修復に専念することにした。

そしてその間、あの試験の事を何度も振り返ったが、どう考えても僕が落ちる理由はないと思った。全部書いたし、答案には自信もある。実技もちゃんと複数の魔法を使ったし、点数もぶっちぎりだったし。


ただ、僕は魔塔の学生の基準というものを知らない。

そこだけが不安だ。


そこで、まだ合格前ではあるが、いくつか講義に出てみることにした。

なにしろいろいろありすぎて、ちゃんと講義を受けていないからだ。


まずは基礎的な魔術概論。

これはバイロイト・ヘッケナー先生というおじいちゃん先生の講座だ。

「…このように、魔法陣は回転する。ゆえに、円滑に魔法が発動するには、基本的には丸いのが効率よいのじゃ。」

なるほど。その通りだな。


講義のあと、教室を出て行く先生を追いかけた。

「先生、質問良いですか?」

「なんじゃね?」

「三角の陣を見たことがありますが、楕円というのは2次元…平面のものではほとんど見たことがありません。でも3次元、立体的な魔法陣には、楕円の形の場合もありますよね。なぜですか?」

「難しい質問じゃのう。平面の陣にも昔は楕円がそれなりにあったらしい。

だが、不安定ゆえ正円のほうがよいとなり、駆逐されてしまったようじゃ。

立体的な魔法陣も、基本は円の組み合わせじゃ。効率がいいからな。

だが、立体の場合は各円の大きさだけでなく、速度が平面より密接に関係するからな。

場合によっては楕円や三角が機能的な場合もあるんじゃよ。」

「なるほど。速度、ですか。」

と僕はメモる。

「そのあたりは難解ゆえ、概論では扱っていない。

キミはたしかランゲルス君の弟子じゃな。」

「はい。」

「では師匠を問い詰めてみるとよい。変形魔法陣にはとても詳しい先生じゃからな。」

「そうなんですね!知りませんでした。」

「ほっほっほ。キミはよい師に恵まれたのう。がんばりなさい。」

「はい!ありがとうございました。」


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― 新着の感想 ―
エレアは典型的タカビーエルフなのか(ㆁωㆁ*)サキちゃんエレアの言う事はスルーするのよ(ㆁωㆁ*)
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