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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第九章 司書たちのこと&魔塔受験編
504/534

504 実技試験

順番はクジで決めたが、1番痩せおじ、2番太っちょ、3番美少女、4番僕。1番と2番が入れ替わっただけだった。

「い、いきます。」

痩せおじが、呪文をながながと唱える。

「イ・ハロンヌ。我が魔力をもって火を出現し、風を出現し、敵を打て!ファイアボール・エト・ウインド!」

なるほど。ファイアボールを風で運ぶのか。

だがそれって、魔力が多くないと、ひょろだまにならない?

と思っていると、案の定、途中までは結構良かったが、途中で失速した。

的には一応届いたが、うがつほどでもない。

「3点!」

的係の先生が、的の焦げ方を見て言った。


次は、ファイアランスを風に乗せた。

今度は前よりいい。

「7点!」

おお、良かった良かった。

僕と太っちょはつい拍手した。


3つめも、ファイアランスを暴風に乗せた。

今度はバシッ!と音がしたが

「5点!」

ああ、コントロールがダメか。

「もう一回いいですよね。」

ほう。頑張るな。

すると痩せおじは1つめの的に戻り、再度ファイアランスと暴風でバシッと決めた。

的の中央だった。

「10点!」

「おお!」

美少女以外は、立ち会いの先生も拍手した。


次は太っちょおじさん。

「わしは水属性の魔術師だ。同じ属性の重ねがけでもいいんじゃろ?」

「いいですよ。」

と立ち会いの先生。

「ではいくぞ。リハロンネセケット。水しぶきよ、洪水となり、敵を穿て!ウォータースプラッシュ、フラッディウム!」

ドドォ!と中空にまず噴水のようなスプラッシュが現れ、それが洪水の渦となり、そのままドドドォオオ!と的に向かっていき、3つ同時に押し倒した!

「おお!」

ぱちぱちぱち!

皆が拍手する。

「30点!」

最高得点だな。

「的はもう一回立ててもらえんのか?」

「倒せば終わりです。」

「残念。」

ふふ。もっと点数が欲しかったのか。

確かに、もっと的があれば点数は出たな。

でも結構魔力、使ってるよ。たぶん、持っている魔力の半分以上使ってるな。肩で息しているし。


3人目はエルフの美少女。

リィンとは鳴らなかったから、普通のエルフかハーフエルフだ。

「行きます。ウインドバレット・エト・スプラッシュ!」

ズガン!ズガン!ズガン!と3発。3つの的の中央へ。

「おお!」

「凄い!無詠唱だ。」

確かに。

「30点!」

しかしそれで終わりでは無かった。


「我願う、業火と暴風にて敵を討たん!ヘル・ファイア・エト・ストーム!」

え、ちょっと。ヘル使うの!?負けず嫌いだなあ。

と魔法から身を守っていると、

ズガァン!ゴォォォ…!

と派手な音と共に、3つの的を燃やし尽くした。

「30点!合計60点!!」

「おお!」

ぱちぱちぱち。


僕が考えていたことを、目の前でやられちゃった。

4回でやるなら、こうだよね、と思っていたんだが。

仕方ない。とっておきを披露しちゃおう。

「では、行きます。ファイアボールグランデ・エト・ウィンド。エト・ヒール!」

「え?ヒール!?」

とエルフちゃんが驚く。

そして、「2種以上」だから、3種使っても言い訳で。


僕が打った巨大ファイアボールは風に乗り、相当な速度で同時に3つの的を飲み込み、見事灰燼にしたが、次の瞬間にはヒールで元通り。これで30点のはず。そして、

「ウォータースプラッシュ・エト・ウィンド。エト・ヒール!」

またしても水と風で弾き飛ばした3つの的を、ヒールで修理。また30点のはず。


3つめは

「エリア・アースボール・エト・ウィンド。エト・ヒール!」

またしても風に乗せた石つぶてで壊した的をヒールで修復。30点。


最後は

「プラズマ・エト・ウォータースプラッシュ!」

これで完全に軸まで破壊尽くした。

バリバリバリバシャアン!!

轟音と共に、的は発火し、灰燼に帰した。

轟音がこだまし、雷により発火し、パチパチと燃える音がするばかり…。

30点。合計で120点のはずだぜい。

だが。


奇妙な静寂があたりを包む…。

「あのー。点数くださーい。」

と僕が言うと、的係の先生が

「ひ、ひゃくにじゅってん!!」

と声をひっくり返して言った。

「おおおお!」

ぱちぱちぱち、とようやく拍手をいただけた。


ぶふっ、あははは!

と高笑いが聞こえた。

振り返ると、魔塔長と師匠が、戸口に立っていた。

観戦していたらしい。

笑い声は魔塔長だ。

師匠は苦虫を潰したような、複雑な顔をしていた。

魔塔長はまだ笑っていて、隣の師匠をバシバシ叩いている。

「見たか?おい、あれがお前の弟子じゃぞ!ヒールで的を復元しおった。あはははは!」

ヒールがツボったのか、笑い続けていた。

「た、叩かないでくれ。」

と師匠がぶつぶつ言いながら、魔塔長の手をしっしと払っている。


「コ、コホン。い、以上で実技を終了します!面接は2階のB講義室で行います!受ける者は一緒に来るように!」

メガネの担当教官が、そう言うと、魔塔長たちのいるのと反対の扉目指して歩き始めた。

僕は此処で終了なので、師匠のいるほうへ行こうかとも思ったが、魔塔長も居るので、一礼だけして、とりあえず教官を追った。


面接免除なので、廊下に出たあと、僕は曲がり角でこっそり列から離脱。

ふう。終わったぁ、と思い、部屋に帰ろうと階段を一人降りる。

すると

「とんでもないのは噂通りね。」

と後ろから声が聞こえた。

振り返ると、あのエルフの子だった。


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