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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第九章 司書たちのこと&魔塔受験編
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496 受験の準備&鍛冶屋探し

「師匠、そういえば、ヒールで物を直すのって、普通じゃないんですか?」

「まったくお前は。質問までとんでもねえな。

ヒールは人体、いや、生命体の機能を元に戻すものだ。普通、物体には「リペア」だな。」


「ああ、そうか。リペアね。うーん。でもリペアだと、以前の状態以上には、良くなりそうにない感じがするんですが。」

「まあリペアだからな。ヒールは違うのか?」


「はい。ヒールは、以前の状態というより、その物の最も良い状態に戻す、という感じですかね。」

「なるほど…。お前の実力はだいたいわかった。実技、終了。」

「えーもうですか?」

つまんねえよう。


師匠は急に話題を変えた。

「こほん。それより、司書たちの心臓と保護膜をどうにかせんとならん。お前は何をどこまでできそうだ?」

確かに。その問題があったな。


「そうですねえ。キングスライムの核は、あるんでしょうか。」

「それは誰かに狩らせるなり、買わせるなりしよう。学園が金をだす。たしかお前は鍛冶もできるんだったな。」

「はい。」

「材料はあるのか?金は魔塔が出す。もし持っているなら、材料費、手間賃共に請求できるぞ。」

「ありがとうございます。素材は、手持ちのミスリルとアダマンタイトがあります。でもそれより、鍛冶の設備ですね。魔塔にはありますか?」


「さすがに魔塔内に鍛冶設備はないな。」

「では市井の鍛冶師の鍛冶場をお借りする感じですかね。」

「普通なら、鍛冶屋に注文して作って貰うのだが。あの金属は難しいだろうから、お前さんが作るしかないようだな。」


「実はヴィルドの鍛冶の師匠から、紹介されている職人がいます。その鍛冶場の一角をお借りできないか、交渉してみます。」

「そうか。では俺は魔塔長に言って、無属性のキングスライムの核を、入手する算段をするとしよう。」

「お願いします。」


ということで、師匠と手分けして、司書たちのために、心臓と保護膜作成をすることとなった。

「あのー。ところで、受験勉強は?」

と聞くと、

「魔法陣の復習でもしておけ。」

と言われてお終い。

「油断せず、かつ答案用紙に自分の名前をちゃんと書くことを忘れなければ、受かるだろう。まあ、試験問題を楽しみにしておけ。」

だってさ。ちょっと酷くない?

「せめて過去問くらい、教えてくださいよう。」

「まあ、見ても無駄だとは思うが。…ほれ。これでも見とけ。」

と言って、師匠は自分の亜空間収納からぽいっと1冊取りだした。

『魔塔試験過去問題集』。

ちゃんとあるじゃん!虎の巻が。


部屋に戻って、過去問集を眺める。

確かに、こりゃ中学生レベルだな。

大陸の歴史くらいは読んでおこう。

それから、総務で買ってきた『バーデンブラッド版』の教則本上中下巻を眺める。

たしかに、『シュタルク版』より魔術理論が発達していて、文章も明快だし、古代魔法語も正確に記されている。

そして、「特論」という項目がいろいろあって、伝書鳥もあったし、そのほか、新しい発明品についても紹介されていた。

ふむ。この教則本は、過去問よりかなり有益そうだ。

おっと、夜更かしは不味い。明日は鍛冶屋探しだった。

おやすみなさい。



翌日。

さっそく鍛冶屋探しをする。

ゲン師匠から貰った紹介状と、うろ覚えながら一生懸命書いてくれた手書きの地図を頼りに、職人街へ。


今日はスーリアもシルルも魔力に溶けて居る。

シルルは、王都の街を見たいようで、魔力内からずっと外を眺めている。

スーリアも時々は魔力から出して、シンハの上に乗って街を眺めている。

王都はつぶつぶの精霊達はヴィルドより少なそうだ。

だが時折、窓辺の花とかに群がっていたりもする。

居るところが少し偏っている感じで、たくさん居る家と、まったく精霊が寄りつかず、どよんとしている家とが混在している。


普通の都会は、こうなのだろうな。

ヴィルドはちょっと歩くと、路地にさえ精霊の気配があった。

風が吹くと、それがふよふよ飛んでいる、という感じ。

たぶん、コーネリア様ががんばって、住みよい街になるよう努力してきたからだろう。

スラムでさえ、あまり黒い靄は感じられなかった。


だが王都は違う。

むしろ、精霊がいる家のほうが少ない。

黒い靄は、探さずとも至る所にある。

『側溝清掃は早いほうがいいようだな。』

とシンハがつぶやいた。

「そうだね…。」

またあれかー。


街が大きいだけに、何日かかることやら。

僕はため息をついた。

「魔塔、合格したらね。」

『そうだな。』


そんなことを話ながら歩いて行くと、ようやくトンテンカン、という音が聞こえてきた。

「やっと職人街だ。」


頼りない地図を頼りに、脇道へと入る。

「えーと、確かこのあたり…」

「馬鹿野郎!出て行け!」

「ふん!二度と来るかよ!こんな店!」

ガァン!と何かを蹴っ飛ばし、プリプリ怒った冒険者達が目の前を通り過ぎて行った。

「まったく!ナニサマだと思ってやがる。たかが鍛冶師のくせに。」

などと悪態をつきながら。


その店を見ると

「オリジナル武器武具・マッカーズ鍛冶店」

とある。

「あー、此処だわ。」

シンハとつい目配せ。

『…。』

だってさあ。ゲンさんと同じで、きっとガンコな鍛冶師だってわかるもの。

今は特に、機嫌が悪いはずだし。

「こほん。入るよ。」

『ああ。』



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