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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
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487 次にすべきこと

前半は前話に引き続きローハンの話。

****(アステリスク)以降は通常のサキ視点です。

息子ができた、というのはすでに本人(世界樹)から聞いていた。

異世界から呼び寄せた魂で、ハイエルフ的な存在だとも。

しばらくして、その息子はヴィルドで暮らし始めたというのも聞いた。

息子の話をする世界樹は、いつもとても楽しそうだった。

レビエント枢機卿をヴィルドに住まわせたのも、神託だ。

それは、息子を枢機卿に見守らせようとしたのだという意図が見え見えだった。

世界樹は、とても子煩悩なのだと知った。


相当甘やかして育てたのだろうなと思っていたが、実はそうでもなさそうだと知ったのは、「国境の魔術師」の異名が耳に入ってきたからだった。

寒い真冬に過酷な国境で従魔との孤独な旅。いくら過保護にたくさんの素質を貰っていたとしても、性根が腐っていたらできるものではない。なのに、たった一人と一匹で壁を直し、砦を堅牢にし、結果、戦を3日で終わらせた。


ヴィルドのスタンピードで2万の魔獣を屠ったらしいという事も聞こえてきた。

甘えん坊の息子にできることでない。素質はそれなりに過保護に付けてもらったとしても、相当に本人が努力して実力を付けたからこその成果だろう。


そんな訳だから、ローハンは世界樹の息子サキ・エル・ユグディオ(ユグディリア)の王都到着を、内心会えるのを楽しみにしていた。

ローハンは会議や行事で、ケルーディア王国の王都ケルディナードを年に数回は訪れる事があるからだった。


ナゼル枢機卿を浄化したのがサキ・ユグディオだと知り、ローハンはまたしても驚いた。

ナゼルが黒に染まったことも驚きだったが、世界樹の息子が、直接滅したというのも驚いた。

そして、次期教皇の有力候補が居なくなったことには、本当に当惑してしまった。

重ねて言うが、ローハン自身は教皇になりたいと思ったことは一度たりとも、ない。

あんな忙しい、自由のない職業など、全く成りたくないのだ。

「(ありがたいことに、俺には神託は降りてこない。だから教皇は、他から選ぶしかない。)」

では誰を、となると、これが本当に、適任がいないのだ。

どいつもこいつも、欲の塊で…。

そういう意味では、現教皇は賢明なる教皇だなと、ようやく見いだした現教皇のささやかな長所に、ため息をつくローハンだった。


*  *  *  *  *  *  *  *


さてと。

ひとまずドリーセット侯爵家のことは一段落した。

もちろん、表面的な解決であって、真犯人は捕まっていない。

だが、今はこれ以上、捜査のしようも無い。


もしまたドリーセット侯爵家を狙うようなら問題だが、それを防ぐ結界も一応設置したし、しばらくは、ハピの部下とロビンの仲間たちにさりげなく見張ってもらうことにしたから、大丈夫だろう。

たくさん謝金をいただいたので、サービスで「お守り」もとりあえず侯爵家3人分+キキさん分の計4個を贈ることにした。

(ほかにもリリアーヌ嬢の兄上たちがいるようだが、今は王都に居ないようだから、侯爵家分は3個だけね。)


「お守り」は真珠粒に結界魔法と浄化魔法をこめたもの。ちょっと金とミスリルの土台を付けて、小さなピンバッジにしておく。あとは持つ人の好みで加工してください、と手紙を添えることに。

4つのピンバッジと予備の1個を前に、手紙を書いていると、

「おそらく、もうあの家は狙わないだろう。かなり結界も強化されたし、浄化もしたからな。」

と師匠。


確かに、他の家よりずいぶんホーリィになったぜ。

黒魔術は仕掛けにくいだろう。

それは良いけどさ。ししょう。

朝食後に僕の部屋に乱入してきて、ソファの中央にどかんと座り、美味しい紅茶を飲んでるのはどうなの?

シルルもいいんだよ。ずうずうしいひとに紅茶なんかいれてあげなくとも。


「しかし…さりげなく「お守り」だと?2種の魔法を込めること自体、凄いことなんだぞ。」

僕が作った予備のピンバッジを手にして、師匠が言った。

僕は構わず、4つのバッジと手紙を封筒に入れ、それを伝書鳥にして窓から飛ばした。


「しかも伝書鳥を覚えたばっかりで、荷物まで運ばせるとは。聞いたことがない。」

「?小さなピンバッジが4つだけですよ。分厚い手紙だって運べるんだもの。可能でしょ?」

「あのな。伝書鳥は普通、紙以外は運ばないんだ。それに魔力をそれなり食うんだよ。重さとか距離とか。まあ、貴様の魔力総量を考えたら、雲か霞くらいの重量だろうけどな。」

「師匠だって同じくらい、魔力、あるでしょうに。」

「お前とは効率も違うんだ。まったく。過保護なぼっちゃんだぜ。」

世界樹の息子ということだ。むう。


たしかに資質という意味ではたくさん恩恵をいただいたけどさ。僕だって日々努力してらあ。

師匠、悪い人じゃないんだけどさあ。言い方がねえ。

まあ、何も言わないでおこう。と思ったが。


「で、これは俺の分か?」

というので、

「あげませんよ!なんで僕が「有能な」師匠にあげなきゃいけないんですか!?自分で作ってください。」

とバッジをひったくって亜空間収納にぽいと仕舞った。

「ちっ!かわいげの無い弟子だ。」

「師匠らしからぬ師匠に言われたくないです。」

と僕もつぶやき返す。

じろりと睨まれた。

恐くなんかないやい!


『ぐふ。』

シンハが笑った。

師匠にも聞こえたようだ。ちらと寝たふりをしているシンハを見て、ちょっと居住まいを正した。

どうやらシンハがちょっと恐いらしい。

「こほん。と、ところで。司書たちの修理についてだが。」

急に話を変えたな。

「ドリーセット侯爵家のことが一段落したことだし、魔塔長からも頼まれている。本腰を入れて修理にかかるべきだろうな。まずはウノに会う。他の司書たちの様子も見ておきたい。」


そうそう。ウノさんたちのことも、解決しないとね。



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