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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
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481 右目の治療

僕は閉じた右目に世界樹の葉っぱをあてた。

これも痛くないようだ。


そして祈る。古い呪い傷ゆえ、丁寧な呪文が必要だった。

「イ・ハロヌ・セクエトー…。世界樹よ。わが願いを聞きたまえ。光失いしかの目に光を。失われし働きを取り戻させたまえ。世界樹の恩恵を持って、暗闇を祓い、邪悪なるものを祓い、穏やかなる景色を取りもどさん。イ・ハロヌ・セクエトー。セドゥリア・ベル・エルハンディオス。ムーヴァノヴァーエ・イルネモス。ムーヴァノヴァーエ・イルネモス…。」

そして、ゆっくりと僕の聖の性質を持った魔力を、右目に流し込む。

すると。

シュウウ…と世界樹の葉っぱが黒い靄を右目から吸い出し、靄は空中に少しずつ消えていく。

「痛いですか?」

「いいや。…心地良い。」

「良かった。」

さらに、シンハの目を癒やした時のように、僕は脳内のシナプスが繋がるイメージを想像しつつ、聖なる魔力を注ぎ、黒い靄が完全に消えて光の粒が立ち昇るまで、祈り続けた。

最期に、ダメ押しで

「ヒーリーヤ・ラ・プントス、解呪!エクストラヒール!」

と唱えた。

すると。きらきらと周囲は輝き、彼の右目部分もまぶしいほどに光った。

僕はようやく満足し、手を放した。

「ゆっくり、目を開けてみてください。」

すると

「!見える。右目が!」

「ヴィーラ!」

突然扉が開き、レジさんが走り込んできた。

そして、彼にしがみつく。


「見えるのね!見えるのね!私が。見える?」

「ああ。見える。お前の、半泣きの顔が、見えているぞ。」

とうるうるのレジさんの頬を撫でた。

熱い抱擁とキス。

こ、こほこほ…。僕達はわざと見ない振りをした。

と、今度はレジさんが僕をがばと抱きしめた。

「サキくん!ありがと!ありがとう!ううう…。」

「は、はい。うまくいってよかったですー。」

お願い。そんなにぎゅうっとしがみつかないで。く、苦しい。


「ふふ。レジ。お前の怪力でサキが死んじまうぞ。離してやれ。」

「あんもう!せっかく感動の場面なのにい。」

「おめでとうござましゅでしゅ!」

シルルがそう言って、ぱちぱちと拍手をした。


あらためて診察し鑑定すると

「状態:良好。聖なる右目」

あ。

またなんかやっちまった気がする。

そういえば、僕、すでに「神族」だった。

きっと作用が強すぎたんだ…。あのダメ押しのせい…??

でも、まあ、悪くはないでしょう。ははは…。

しばらくは、すっとぼけておこう。


治療を無事に終え、ひとまず魔塔に戻ることにした。

ところが感激したレジさんが僕達を離さず、昼もご馳走になってしまった。

しかも、豪華な料理がずらり。

「旅の途中から、ヴィーラがなにかをずっと考えこんでいるようだったから、気になっていたのよね。なのに今朝は、何か吹っ切れたみたいに上機嫌だし。朝食後、姿を消したから、これはきっとサキくんのところだわと思って、こっそりサキくんのお部屋を覗きに行ったというワケ。そうしたら、とんでもない光が廊下にまで洩れたから。サキくんに治療を頼んだんだって、わかったわ。」

なるほど。それでか。


「やっぱりサキくんって、すんごい大魔術師なのね。ヴィーラの目は何をやっても治らないって、教会の偉い人にも匙を投げられてたのよ。それをあっという間に治しちゃったわ!ほんと、凄いわねえ!」

とレジさんは大絶賛だ。

「たまたま上手くいきまして。よかったです。せっかく決心してくれたのに、治らなかったら、いくらハガネの心臓の隊長だって、きっとすごーく落ち込みますからね。」

「おいおい。俺の心臓を勝手にハガネとすり替えるな。」

「あら、本当じゃない。」

「なんだと?」

「うふふ。でも、こうなると護衛メンバーに会うのが楽しみね。みんな、どういう反応するかしら。」

「是非あとで教えてください!」

「わかったわ!」

「おい。てめえら、俺で遊ぶな。」

「あはは。」


さっきも、レジさんのばあやさんでもあるメイさんや、執事長のロバーツさんに驚かれ、そしておめでとうございますと言われ、隊長は照れていた。特にメイさんは涙を浮かべていたからな。護衛仲間が見たら、絶対大騒ぎだと思う。


報酬の話になったが、まったく受け取らないのもなんなので、じゃあ小金貨1枚(10万円相当)と言ってみた。一般に、呪いを祓うのは結構難しい事なので、教会のお布施を考えるとこれくらいなら貰ってもいいかなと思って。すると

「何を言っているの!ちゃんと貰わないと駄目よ!」

と言って、レジさんが白金貨(1,000万円相当)をぽんと寄越した。

「え。いや、さすがにこれは貰いすぎです。」

と言うと

「いいえ。私の愛するヴィーラの右目を治してくれたんですもの。これは手付け金。あとはちょっと面白い宝石をあげるわね!」

といたずらっぽく言う。

「ちょっと待て。俺が依頼して治してもらったんだ。俺が払う。」

「わかったわかった。じゃあ、ヴィーラと私で折半ということにしましょ。でもその話はあ・と・で。今はサキくんにお支払いするのが優先。ロバーツ、ちょっと。」

と言うと、お茶を入れてくれていた執事長に、あれ持って来て、ごにょごにょとやっている。

「かしこまりました。」

と執事長が出て行く。


「いや、本当に。もうこれで充分すぎますから。」

と言ったが聞いてくれない。

「サキ、諦めろ。こいつがこう言い出したら、絶対引かないから。」

と隊長も諦めのため息。


「お待たせしました。こちらでよろしいでしょうか。」

ロバーツさんが持って来たのはシンプルだが高価そうな箱。

「あ、そうそう。これよ。」

そう言って、テーブルに乗せると、蝶番で付いている蓋をぱかっと90度開けて、僕に中身を見せた。

それはネックレスだった。

大ぶりのサファイアを中心に、鎖全体が小ぶりのサファイアとダイヤモンドで飾ってある豪華なものだ。

これ、どう見てもウン億円いや、ウン億ルビ、するよね。

ただ…。


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