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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
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471 侯爵令嬢の治療開始

「まあ!あのおとぎ話のような、国境の壁をあっという間に直してくださったという!?お目にかかれて光栄ですわ!」

とリリアーヌ嬢は目を輝かせた。

「少々誇張して世間に伝わっているだけです。」

「そんなことありませんわ。そうでなければ国王陛下も、子爵位など授与なさいませんもの。」

「そうであるな。」

と侯爵。


「恐れ入ります。たまたまうまく直せただけです。」

「くふん。」

シンハがわざと甘える声を出し、尻尾を振って令嬢に近づいた。

「かわいい!シンハちゃんというのね?撫でても?」

「どうぞ。」

「かわいいわあ!」

シンハは良い子でお座りして、令嬢に撫でられた。

メイドたちも微笑んでいる。

「(シンハ、この部屋にヤバイやつ、居る?)」

『大丈夫だ。侯爵含め、シロだな。』

「(了解。)」

シンハは皆に隙を作らせている間に、魂の黒いヤツがいないか確認していたのだ。


「こほん。そろそろお脈を拝見してもよろしいでしょうか?」

「よろしくお願いいたします。ランゲルス様。」

ようやく診察にはいる。

僕は師匠のアシスタントのように、脈拍数などをメモる。

金の葉っぱのネックレスは、少し色が鈍くなっていて、金から銅色に変わろうとしていた。

師匠もそれに気づいた。

「(サキ。世界樹の葉も変色してきている。どうやら限界ぎりぎりだったようだ。)」

「(そのようですね。)」


「リリアーヌ嬢、あなたの病ですが、これは古代黒魔術を用いた呪いです。今日はこれから、弟子と二人で解呪の施術を行います。痛くするつもりはありませんが、手強い呪いゆえ、魔法陣が暴れるかもしれません。どうか気を強くお持ちになり、我らの解呪にご協力を願います。」

と師匠はずばりと言った。


令嬢は真剣な顔になり、

「父からそのように聞いております。とても難しい呪いだそうで、少し恐いですが、どうぞよろしくお願いいたします。」

「では令嬢には眠っていただきます。サキ、お茶を。」

「はい。」


不安げな侯爵に

「これはカノコ草とサーモス茸にメルティアを加えたもので、安全な眠り薬です。毒味をするのであれば、どなたかどうぞ。」

「…では私が。」

と少し年長のメイドの一人が手をあげた。

責任感の強いメイドだから、きっといずれメイド長になるような人なのだろう。


恐れもせずこくりと飲む。

「たしかにカノコ草とサーモス茸の香りは幽かにしますが、美味しいですわ。」

とちょっとびっくりしている。

「美味しくないお薬は、誰も飲みたがらないですからね。」

と僕は笑顔で答えた。


「美味しいお薬なのね?ではエルザ、ちゃんと私の分も残しておいてちょうだいね。」

と令嬢はユーモアを交えて言った。

おそろしい黒魔術の呪いを受けているというのに。気丈な令嬢だ。


令嬢がお茶を飲むと、

「あら、本当に美味しいわ。お父様の不眠症も、これで良くなるんじゃないかしら。」

「…処方いたしましょうか?成分の弱いものでしたら、お医者様の許可無しでもお作りできますよ。」

「こほん。ではのちほど少しいただこうか。」

「わかりました。」


「さて。ではご令嬢がお休みになったら、始めます。見届け人は3名以内にしてください。」

師匠がそう言い、メイドたちの大部分が部屋から出たが、侯爵とエルザと呼ばれたメイド、そして侯爵の護衛の騎士1名のみが残った。


師匠は部屋の片隅に結界を作り、彼らをそこへ。

「この結界から出ないようにしてください。祓った呪いが飛ぶといけませんので。」

と説明した。

長時間になるので、侯爵とメイドには椅子に座って貰った。

騎士は立っているそうだ。

「それから…此処での解呪法については、相当特殊なので、他言無用でお願いします。」

と師匠が侯爵たちに言った。

「うむ。」

と侯爵は頷いた。エルザさんも騎士も、無言で頷いた。


そんなことをしている間に、令嬢は眠った。

エルザさんは一口飲んだだけなので、眠くはなっていないようだ。


「でははじめます。サキ、お前はリストの番号順に一つずつ凍結しろ。俺は凍結したものを解呪していく。どちらかがくたびれたら休憩だ。」

「わかりました。」

僕が長い杖を出し、いつものように横に構える。

師匠も同じような長い杖を出し、同じように横に構えた。

「では始める。イ・ハロヌ・セクエトー。ケレル・アルモーファ。出でませ、魔法陣!」

師匠が「顕現の魔術」を使い、侯爵たちにも呪いの魔法陣が空中に見えるようにした。

「おお!?」

「な、なんだあれは!?」

いびつで禍々しい呪いの輪が、回りながらぶわわぁ…と多数空中に現れたので、侯爵も騎士も、つい声を出した。

エルザさんは、あまりの恐ろしさに、逆に声も出なかったらしく、両手で口元を塞いで驚きまくっていた。

そうだよね。一般の人が見たら、そうなるだろうな。


呪いの魔法陣はゆっくり、時には速く、バチバチと火花を散らしながら回っている。

僕はすぐに凍結の準備に入った。

「行きます!イ・ハロヌ・セクエトー。フェディクス・ノル・グレイル…第1鐶凍結!」

すると、僕の呪文で、一瞬で一番外側の魔法陣が動きを止め、凍った。

「おお…。」

「凍結」は「フリーズ」の強いもの。呪文「フェディクス・ノル・グレイル」が必要。


そして直ちに師匠が唱える。

「イ・ハロヌ・セクエトー。ヒーリーヤ・ラ・プントス…解呪!」

停止した第1鐶がパリン!と音を立てて砕け、それからザァ…という音と共に崩れて消えた。

解呪も浄化と同じ呪文「ヒーリーヤ・ラ・プントス」を使う。浄化は解呪も兼ねるが、その場を清めることが主な目的。呪いを解くことを主眼とするなら、さらに「解呪!」と唱えるのだ。


「フェディクス・ノル・グレイル…第2鐶凍結!」

「ヒーリーヤ・ラ・プントス…解呪!」

パリン!ザァ…

「フェディクス・ノル・グレイル…第3鐶凍結!」

「ヒーリーヤ・ラ・プントス…解呪!」

パリン!ザァ…

順調に解呪が進む。

令嬢はこんこんと眠って居る。

表情に変化はなく、寝息もやすらかだ。

「フェディクス・ノル・グレイル…第20鐶凍結!」

「ヒーリーヤ・ラ・プントス…解呪!」

パリン!ザァ…


30鐶目を解呪した時だった。

「サキ。」

「!はい?」

「少し休憩だ。」

振り返ると、師匠が少し疲れた顔をしていた。

「…交代しましょう。」

「いや。まだいける。」

「まずはこれを。」

僕は師匠を椅子に座らせ、エリクサーを出した。

「…」

師匠はちろりと僕を見たが、何も言わずにそれを飲んだ。



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