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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
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462 2冊目の本の眷属

ということで、結界をすべて解き、次はコーネリア様に相談だ。

ここまでの間、コーネリア様はなにも言わず、結界の中で本とやりとりする僕の様子を、辛抱強く見守ってくれていた。

音も遮断しているから、アルス・ノトリアとの会話も聞こえてはいなかった。

かくかくしかじか。

契約してもよいかと相談する。

もちろん、有償でお譲りいただけるかと。

(あ、そう言えば、アルマンダルとは契約したけど、魔塔の蔵書のままだった、と思い出した。まあいいや。アルマンダルのことは、あとで師匠に相談しよう。)


「本と契約か。面白いな。構わぬぞ。契約ができたら、所有権はそなたに無償で譲ろう。」

「え、しかし。」

「いつも破格の協力をしてくれておる其方から、代金など貰えぬわ。昇天させるなり契約するなり、好きにすればよい。」

「ありがとうございます。すみません。いつもわがままを言って。」

「なんの。気にするでない。」

と快く了解をいただいた。


「話は聞いたね。了承をいただいたよ。」

「ありがとうごぜえやす。」

アルス・ノトリアは、コーネリアに深々とお辞儀…はできないが、本を前方に倒して、お辞儀の態度を見せながら言った。

「しゃべる本か。面白いものよの。」

とコーネリア様は上機嫌で言った。


「こほん。ではさっそく契約をしてみます。アルス・ノトリア。もしダメでもちゃんと地脈まで送るからね。」

「うう。ありがとうごぜえやす。」

というわけで、気を取り直して。


「イ・ハロヌ・セクエトー。汝、アルス・ノトリア。魂を清め、慎みを持って、サキ・エル・ユグディオの眷属となるを誓うか。」

「誓います。」

少し強めの契約をしてみた。

隷属に近い。これはアルマンダルのアニキも同じだ。


すると、本がほわわんと光り、黒い靄は消え、もとの本文の文字は、すべて銀色の文字に変わった。ところどころ鈍い色なのは、そこが怪しげな部分。スペルミスとか言い回しがちがうとか。しかもそれらはやがて、すべて正しいスペルや言い回しに変化した!


「うほほー。きもちええわー。」

妙な声出すな。

「なんか、何百年ぶりかで風呂に入った感じ?いや、実際入ったことはねえけどさ。

ほっほーい。サキ様、シンハ様、末永くよろしくお願いいたしまする。」

「急にかしこまっちゃったよ。」

そんな。本に三つ指つかれてお辞儀されても…。

「こほん。じゃあ、アルス、と呼ぶね。これからよろしく。」

「ははー!」

と土下座。

誰?こいつに武士道教えたの。


「まったくサキは…。やはり見ていて飽きないのう。」

玄関まで見送ってくれたコーネリア様に、苦笑された。

「夜分遅くすみませんでした。しかも貴重書までいただいたことになってしまって。」

「いや。気にするな。むしろ禁書庫を清めてもらってありがたい。」

事のついでにお清めをしてきたからね。


「ではこれにて。王都に戻ります。」

「ふふ。軽く言うのじゃな。」

「あは。恐い師匠が待っているので。」

「師匠?」

「はい。あ、僕、魔塔に入りました。ウォルフ・ランゲルス師に弟子入りを許されまして。」

「なに!あの変人ウォルフかえ!?そうか…。まあ、魔術師としては超一流だからのう。ふむ。そうか。ウォルフのう。」

感心半分、驚き半分というところか。


「あいつが弟子を取ったのは、初めてかも知れぬ。」

「え、やはりそうなんですか。」

「うむ。なに、其方なら大丈夫であろ。しっかり頑張るのじゃぞ。」

「はい。」

「ふう。せっかくはるばる遠くから来たのじゃ。本当は食事でもと言いたいところだが…。この時間ではな。それに、恐い師匠が待っておるなら仕方ないな。」

「すみません…。」

ほんと、こんな時間に来る僕が良くない。


「ところで、王都にはいつ頃来られる予定ですか?」

「うむ。早ければそなたの王宮でのSクラス授与式。さもなくば、アラクネ布の件で秋のはじめのどちらかじゃの。」

あ、忘れてた。王宮での授与式があるんだった。

ただ、今は余所の国から王宮に使節が来ているとかで、王様たちは忙しい。王宮での授与式は日付未定とギルドから言われている。

そして夏は、王族も含め貴族は避暑の季節で、王都を留守にしがちなのだ。


「ではいずれ数ヶ月以内に、王都でお会いできますね。」

「うむ!その時は少しわらわと会えるよう時間を作ってたも。」

「もちろんです!楽しみにしております!」

なんか、デートの約束みたいで、ちょっとワクワクする。

コーネリア様もまんざらではないようで、珍しく少女のようにはにかんだ。


なんとなく、雰囲気がいい感じだけど、ほんと、もう帰らないと。

「では。そろそろ王都に戻ります。向こうでお会いできるのを楽しみに待っております。」

「うむ!」

「あ、おみやげとアルスの件の御礼、執務室に置いておきました。どちらも「楽しんで」くださいね。それでは!」


そう言って、僕は玄関を出ると、そこからささっとテレポートで王都近郊まで戻った。

ちなみに執務室に置いてきた「おみやげ」というのは、ワイバーンのエキスを3本ほど。そして御礼は、森産のピンクと透明のダイヤで作ったネックレスです。てへ。


遊びで作ったんだけど、豪華すぎて誰に贈ろうか迷ってたんだよね。

というか、3女王の誰かか、もしくはコーネリア様しか考えられないんだけどさ。

ユリアでは豪華すぎると絶対拒否されるシロモノだろうし。


コーネリア様なら、きっと身につける機会も多いだろう。あれなら何処に身につけていっても、辺境伯として遜色ないものだ。うん。

ネックレスはベルベット貼りの立派な箱に入れ、僕達が行くといつも通される執務室兼応接室に、エキス瓶とともにテレポートさせておきました。


「まったく。サキは。わらわに一言の感謝の言葉も言わせぬままに、テレポートしてしまった…。まるでつむじ風のようじゃの。」

コーネリアの独り言を、心地良い夜風が彼方へ運んでいった。


「ふわあーあ。師匠には手紙で3つの陣ゲットを知らせておこう。とにかく眠いや。部屋に帰って寝よう。」

『そうだな。もう俺も今は何も言いたくない。だが起きたらいろいろと説教だ。覚悟しろ。』

「えーそんなあ。いろいろって何の件?」

『うるさい。早く帰るぞ。このトウヘンボク。』

「ひどいなあ。ぶつぶつ。」


とにかく皆でテレポートして急ぎ魔塔へ帰った。




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