452 朝食そして図書館へ
魔塔の中は、廊下や広間でも、特に魔術発動禁止ではないようで、どこでも発動はできた。
だから、人目のないところでテレポートか、あるいは外をフライで飛べばいい。
でも、寮との行き来は、楽しいから魔術階段にしよう。
朝食は、定食はなく、ビュッフェ形式で適当に取るだけ。
外部の職人さんは、僕と同じく、食券を入り口で買っていた。
朝早くからご苦労様です。
席取りをして、シルルと一緒に列に並び、適当にとる。
パン数種類、野菜スープに目玉焼き、サラダ、ヨーグルト、バターにチーズ、ソーセージにベーコン。ほぼどこかのホテルの朝食みたいで、結構豪華だ。
シンハの分とスーリアの分もだから、てんこ盛りに取っていたので、他の子たちに変な目で見られたが気にしない。
さてお味は。
うん。なかなかに美味い。
パンを軽く炙ってバターを乗せて、自家製ジャムをこっそり出して塗ったりしていたら、
「それ、なんですか?」
と隣に座った女子生徒に尋ねられた。
あー見られちゃった。
「ポムロルのジャムだよ。」
「え!?そんなの、ありました?」
「自家製なんだ。」
物欲しそう。
「…。食べてみる?」
「是非!」
するとなぜかパンが4つも出された。
一緒に座っていた子達が、我も我もと差し出したのだ。
「…。ひとすくいずつね。」
「「ありがとう!」」
若い者は甘味に飢えていた。
あっという間にビンごと消えた。
「「ごちそうさまです!」」
帰ってきたのはカラのビンだけ。
「オニイサン、ありがとう。見かけない顔ね。」
「昨日、入寮したからね。」
「どこ?」
「フェンリル寮。」
「私たちもよ!私はキャロル・デ・オスマン。よろしく。」
「あたしはモーリー・レアル。」
「シャル・ペリーンよ。」
「ナディア・リルセット。」
「僕はサキ・ユグディオ。この子はシルル。足元にいるのがシンハ。こっちはスーリア。ミニワイバーンだよ。」
「「よろしくー!」」
「よろしくでしゅ。」
「ぴっきゅう!」
「きゃあ、かわいい!」
シンハはさすがに挨拶しない。
「シルルちゃんて言うのね。昨日夕食で見かけて、気になってたの。ピンクのカーディガン、素敵ね!かわいい!」
「ありがとござましゅでしゅ。」
「シンハは男の子?撫でたら怒る?」
「どうかな。シンハ。どうする?」
『…食べ終わってからならいい。』
相変わらず女性には優しいヤツだ。
「食べ終わったら、撫でてもいいって。」
「きゃあ!私1番!」
「私2番!」
「じゃああたしその次!」
もうわいわいだ。
「ほう。朝から女生徒にモテてるじゃないか。」
ウォルフ師匠がトレイを持って立っていた。
「あ、師匠。おはようございます。」
「ああ。」
師匠が向かい側に席に着くと、女生徒たちは決まり悪そうにそそくさと
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。またね。」
と言って席を立って行ってしまった。
「師匠。なにか女子に嫌われるようなこと、したんじゃないですか?」
「してない。年上の男の魅力が、まだわからんだけだろう。」
と言った。
つい、ぶふっとなる。今の冗談?
単に恐いだけだと思うけど。
「何か言ったか。」
「別に。こほん。ところで、よく起きられましたね。」
「ああ。昨日、お前が俺の部屋で結界を切った時、俺の張っておいた窓の結界も切っちまったんだ。それで今朝の鐘がとんでもなくうるさくてな。起きた。」
「あー。それは…すみませんでした。夕食の鐘は?」
「魔術の実験をしていて結界を張っていたから知らん。」
「なるほど。」
「罰として、俺の部屋の掃除を命ずる。」
「…。わかりました。」
「やけに素直だな。」
「いえ。どうせしないとと思っていたんです。あれでは僕も出入りしたくありませんから。」
「むう。俺にとっては快適なアナグラなんだぞ。研究者のロマンがわからんか。」
「アナグラなんだ。」
「うぐ。そこはスルーしろ。」
「お手伝いしますでしゅ!」
と僕が止めたのに、シルルが宣言した。
「おうおう、シルルも手伝ってくれるか。アルジに似ず、良い子やなあ。」
「あのままではダンジョンみたいでしゅ。シルルもあしょこにはアルジしゃまに居てほしくありましぇんから。」
「ふぐう。」
くくく。シルル、あっぱれ!良く言った!
「ちっ。掃除はあとでいい!まずは昨日言ったように、図書館を使いこなせ。メシは終わったな。ならさっさと図書館へ行け。今日中に古代魔術書に到達できなければ、俺の研究室には入れてやらんからな。」
やれやれ。子供みたいにふてくされちゃって。
ということで、図書館に来ました。
どうやって来たかって?
それがさあ。
此処、総合案内も全体地図も無くて、総務に聞かないといけないらしい。たぶん警備上の問題もあるからだろうけど。
そこで魔術の登場なのだ。
魔塔全体をサーチしましたよ。でもさすがに個人の部屋はパスして、廊下とか広間とか公共の道をトレースし、図書館という看板を見つけました。
サーチしてわかったのは、魔塔の構造。
まず地下1階は購買部や倉庫。
地下は3階よりも深いようなので、それ以上は一応パス。
1階は総務局や食堂、広間、大講堂。
2階は大小の講義室多数。
3階から5階は寮。共有の実験室もある。
6階は実験室や講義室。一部の教授の研究室。
7階から10階が図書館。
11階はよくわからない。シールドがきつかった。
12階は一部の教授の研究室。此処に師匠の研究室もある。
13階、14階も同様。
15階。よくわからない。此処が最上階。
そして屋上だ。
この世界で、ヒトの手になる建物で15階建は驚異だ。
王城だってせいぜい8階建。
しかも、斜面を生かしているから8階であって、実質5階建だ。
ダンジョンの塔はまた別次元のものだから除外だ。
さて。とにかく図書館は7階から10階エリアとわかった。
4階分もあるということは、相当な広さ、蔵書数ということ。
まずは入り口であろう7階へ…と思ったが、トレースしても入り口がない。
どうやら8階が入り口らしい。
トレースした道順で8階の図書館入り口へ。
なお、今回はシルルとスーリアは外に出ていたいようなので、シンハに乗って移動してもらった。




