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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
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451 魔塔の朝

「シルル。あの先生、どう思う?」

「いいひとでしゅ。でもお部屋はサイアクでした。」

「だよねー。」

「シルル。きれいにしてあげてもいいでしゅよ。」

「シルルは優しいなあ。でも、ダメダメ。甘やかしちゃ。大丈夫。僕が徹底的にクリーンするから。僕もあそこじゃお茶飲みたくないからね。」


部屋に戻ると、僕は備え付けのバスタブを亜空間収納に入れ、代わりに僕とシンハ専用タブを出して設置し直した。

此処はバスタブの底に直接排水管がくっついている形式だったが、配管は取り払い、代わりに床の穴にゴミ取り網付きのフタをくっつけて、排水口とした。排水口から人類の宿敵のGとかドブネズミとか、スライムとかが上がってこないように、網は魔力を帯びた細かい目のミスリル網を二重に付けてある。

浴室の床は全面石で、メジのセメントも新しくてしっかりしているから、水漏れはしない。バスタブの外でも湯水を使える。何か大きい洗い物もできるだろう。

こうしたちょこっとした小技の作業が、結構楽しい。

寮を引き払う時、もし不都合なら、現状に復せばいいだけだ。


「ふんふっふふーん。お風呂できたよー。」

『俺はもう眠い。』

「まあまあ。そう言わないで。シルルー、先に入って。魔塔で初めてのお風呂だよー。」

「はーい。スーリア、はいるでしゅ。」

「きゅう。すぴー。」

眠そうだが、スーリアはシルルお姉ちゃんに抱っこされて、お風呂に連行されていった。


シルルがあがる頃、シンハはいびきをかいて寝ていたが、僕は無理にもたたき起こし、重力魔法で運んで、シンハを風呂に入れた。

今日はあちこち行ったからね。お風呂は絶対だよ。

風呂からあがると、さすがに僕も限界だった。

ふかふかベッドに倒れ込むと、速攻で眠っていた。


翌朝。

リンゴーン、リンゴーン!!

うるせえ!!


6時。また例の鐘が鳴った。

その合間に、遠くの鐘の音も聞こえる。

王都はあちこちで鐘が鳴る。

教会が複数あるからだ。


「うーん。おはよう。ふぁーあ。」

シンハが、枕の下から鼻先だけ出して

『あの鐘、どうにかできんか。』

とぼやいた。

「結界ならどうかな。」

ぱちんと指を鳴らし、試すと、遠くに聞こえてかなり良い感じ。

「窓辺に防音の結界石を置くよ。」

『扉にもだ。』

「わかった。」

鐘の音はどうにかできそうだ。


さて。この時間から食堂は開いているはずだが、7時に行くと決め、僕は日課をこなす。

魔力回しだ。

それが終わると素振りなのだが。

此処ではできなさそうだから、屋上に行ってみるか。


皆で屋上に上がってみた。

昇りのエレベーターは早朝のせいか誰も乗ってこなかった。

「おお!いい眺め!」

此処からだと王都全体どころか、壁の向こう側の丘まで見える。

此処より高い建物は、ダンジョンの塔と王城だけ。

王城は北門の方角から見ると、王都の南の奥のほうに見える。魔塔とダンジョンは王城の左右に見える。つまり魔塔、王城、ダンジョンで大きな三角形を作っていることになる。三角形の一辺はいずれも何キロメルも離れているが、どれも壮麗な建物ゆえ、壁の外側からも見えていて、王都のシンボルとなっていた。


魔塔の屋上には天文観測用のドームがあるが、他にはほとんど何もない。ただ、所々に石の出っ張りがあるのは、おそらく何かの魔法のための礎石だろう。あとはちょっとした干し場がある程度。

いずれ僕が素振りをするには全く問題ない。


僕がそこで15分くらい素振りをしている間、シルルはスーリアを連れて全方位、王都を眺めて、スーリア相手に何かおしゃべりしていた。

そう言えば、シルルの居たホフマン邸は何処だろう。たしか、王都の本家は伯爵だったか。

素振りを終えて、僕はシルルに尋ねた。


「シルル。君の居た屋敷は何処?此処から見える?」

「はい!あしょこの、大きな木のある近くでしゅ。青っぽい屋根のお屋敷でしゅね。」

貴族街はそれなりに此処から遠いが、シルルの言った場所はすぐにわかった。

「今度、行ってみるかい?」

と聞くと、ううん、と首を振る。

「行きましぇん。あそこにはもう、読みたいご本もありましぇん。会いたい人も、だあれもいないでしゅ。」

シルルはきっぱり言った。

なにか嫌な事があったのかもしれない。

シルキーが出て行った家は没落するという。

まだホフマン伯爵邸はあるが、館も古ぼけているように見える。経済的にも、あまり良い状況ではない気がした。


さてと。

そろそろ7時。朝食を試しに食堂に行きますか!


屋上から、今度は1階へ。

またエレベーターに乗り込む。

そういえば、これ「チューブ」って言ってたな。どっかの地下鉄みたい。

屋上に上がった時と違い、各階で止まるし、人がどんどん乗ってくる。

大きめのハコだったが、結構混んでいる。

シンハは僕の足の間でおとなしくお座りしているが、この混雑は嫌だろうなと思って見ると、やはり嫌そうだった。

扉が開くたびにこまめに消臭をしてあげたが。

ようやく1階。皆がどっと降りる。

『もう、俺はこれには乗らんぞ。』

とシンハがついに言った。

「わかった。なんとかしよう。」


ふと横を見ると、あれ?テレポートの魔法陣、あるじゃん!

4つもテレポート用の魔法陣がある!

と思ったが、使っているのはどうやら教授たちらしい。

魔法陣を読むと、1つは外だろうと塔内だろうと、きちんと呪文が唱えられるならば、何処にでも行けるタイプのようだが、自由すぎて、使いこなしは相当難しいやつだ。(僕は使える自信はあるけど。)

ほかの3つは、塔内の所定の魔法陣へ飛ぶ、簡易かつ限定版の陣らしい。

近くに居た学生らしき人に聞いてみた。


「すみませーん。この装置、誰でも使えるんですか?」

「いいや。教授たちと特待生だけさ。魔力がないのに起動させようとすると、魔力欠乏でぶっ倒れるからね。一般の生徒は使用禁止。特に赤いやつは、特別な許可がないとだめ。」

外と繋がる陣のことだ。

なるほどー。

「ありがとう。」

確かに、端っこのほうにそう書いた看板があった。


「ダメだって。」

『むう。』

「仕方ない。魔法階段を使おう。(屋上からは、フライだな。インビジブルで。あとはこっそり勝手にテレポートとか。)」

『とにかく、アレにはもう乗らん。』

「(ワカッタ。)」



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