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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第八章 王都到着!侯爵令嬢の治癒編
442/530

442 病状説明

「なるほど。君の従魔も特殊なのだな。…君にはどんな風にその黒い靄というのがみえたのだね?たくさんなのか、それとも少しなのか。」

「僕には、室内の様子が見えないほど真っ黒でした。」

「そんなにか!」

「はい。浄化とエリクサーの使用で、ようやく視界がよくなりましたが。」

「…。君が診た感じで、リリアーヌとキキはどうだった?」

「はい…。正直に申し上げます。お二人とも、黒魔術の魔法陣が、何重にも巡っています。その円はいびつで、他の魔法陣とぶつかるたびに、黒い靄を発しています。魔法陣は古代の魔法陣で、解析がかなり難しいものです。それが108ほど巡っていました。」

「そんなに!?」

「はい。そのうちのいくつかは、呪文の帯の形で、体中を這い回っていました。」

「まあ…なんてこと!」


「あの山羊の頭の模様は何だ?」

「黒魔術の呪法の根源、とでも言いましょうか。黒い靄を絶えず発生させています。1年程前に、庭先で発症とのことでしたね。あとで現場を見させてください。」

「承知した。…で、あの子たちは治るのか?」

「…。僕はまだ未熟です。でも希望は持っています。魔塔に、これから僕が弟子入りしようと思っている優秀な方がおられます。おそらくその方なら、あの難解な魔法陣を解けるのではと考えています。」

「それは、だれだね?」

「ウォルフ・ランゲルスという方です。」

「!元王宮付の魔術師長じゃないか!だが、彼は隠居していて、貴族の依頼も一切受けないと聞いている。」

あれ。そうなんですか?


「とにかく、来ていただけるように、僕も手を尽くしてみます。…それから、キキさんのことですが、「身代わり」とのことでしたが、僕はそうではないのではと疑っています。」

「というと?」

「「身代わり」ではなく、患者を増やしたかったように見えます。」

「!では、「身代わり」は嘘だと。」

「はい。」

「一体何故!あの隠者は何者なんだ!?なぜこんなことを!…。」

「…これについては、僕はある仮説を持っていますが…。推測なので、これ以上は申し上げるのは…。」

「かまわん。推測でもいいから、言ってみてくれ。」

「…」

僕は奥様をちらと見た。

「あまり良い仮説ではないのですが…。」

「構いません。是非、言ってみてください。」

と奥様。さすが軍人の妻。気丈である。


「わかりました。…これはあくまで推測です。

たとえば邪悪なる魂を召喚するために、生け贄を必要としていて、それがリリアーヌ様お一人では足らず、もう一人、同様の状態にさせて、生け贄候補を二人にした、ということも考えられます。」

「!!」

奥様は、声にならない声をあげた。

「生け贄!?…。リリアーヌが…キキと共に?…何故。」

「何故、リリアーヌ様が狙われたのか。それは僕にはわかりません。適性があったのか、あるいは…なにか政治的なものか。」

「!政治的…。私を困らせるために、ということか?」

レジさんが言った。

「軍務大臣の閣下を、窮地に追いやらんとする者は、いないとは限りません。たとえば…帝国の息のかかった貴族とか。」

「!?……なるほど。」


「失礼ですが、先程の「教会の偉い方」というのは、いったいどなたでしょうか。」

「レイモンド・ナゼル枢機卿だ。」

誰それ。

聞いておいてなんだが、僕は教会の人たちは知らない。お酒の好きなレビエント枢機卿しか。

「!まあ!教皇様の片腕とも言われる高名なお方ではないですか!この国に滞在中の教会関係者の中でトップと言えるあの方が、黒い靄が見えないなんて!ありえますの!?」

とレジさん。


ということは、これはもうナゼル枢機卿はクロ、ということか?

見えていたのに見えないふりをした…。

いやいや、ほかの可能性も一応考えよう。

この呪法を前に、急に聖なる力を失った?…。それはあり得ないだろう。

あとは、誰かによって、見えないと思い込まされた、とか。

もしナゼル枢機卿が善人なら、そうかもしれない。

今は、結論は保留だ。


「敵は我が家を経済的にも破滅させたかったのかもしれぬ。エリクサーは高額だからな。だが、我が家はそれなりに財力があって経済的に困窮することはなかった。けれど、リリアーヌがどうにかなってしまったら、私も妻も、さすがにショックは大きい。」

「そこでよく効く魔法がありますよと、すり寄ろうとしたのか、あるいは、サキ君の言ったように、なにかの「生け贄」にせんとしているのか…。」

「いずれにせよ、その夜逃げした隠者を、捕まえたいですね。でも…難しいと思います。相手は古代の黒魔術を使う奴ですから。」


『サキ。』

「(うん?)」

『その隠者、女のような気がするぞ。』

「(え?)あの、その隠者は、男性、ですよね。」

「はい。老年の男でした。いかにも旅の魔術師という感じの。」

『ふむ。変装していた可能性が高いな。』

「(どうしてわかるの?)」

『残り香だ。言っただろ。男性と女性では、匂いが違うと。』

「(あー確かそう言っていたようないないような。とにかく、女性が魔法で変装していたということだね。)」

『ああ。』


「その隠者、どうやら女性が魔法で変装していたらしいです。」

「「え!?」」

「えと。シンハと僕は、意思疎通ができます。で、シンハがいうには、部屋に残っていた残り香と、置き手紙の匂いからすると、その隠者は女性のはずだというのです。」

「なるほど!シンハちゃん、お鼻はバツグンにいいものね!」

「では、男の隠者を追いかけても無駄、というわけか…。」

「はい。シンハなら、再び会えばすぐにわかるでしょうけれど…。おそらくすでにこの国を出たのではないかと思われます。相手は相当な魔術の使い手。瞬間転移もできるでしょうから。」

「うーむ。」


「じゃあ、今出来ることは、まず魔塔のウォルフ・ランゲルス師に来ていただくことと…おかかえの医師と教会のレイモンド・ナゼル枢機卿を見張ること、くらいかしらね。」

「そうですね。ウォルフ・ランゲルス師には、真っ先にお会いするつもりで王都に来たのですが…。此処に来ていただけるような気がします。」

「でも気難しい方なんでしょ?」

とレジさん。

「はい。でも、研究熱心な方だとも聞いています。大丈夫な気がします。手紙を書いてみます。魔塔にお使いを出していただいてもよろしいでしょうか。」

「もちろんだ。」

と侯爵様は頷いた。


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