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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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44 赤い山で金属採取

予定どおり、3日目には「赤い山」が見えた。近くを流れる川を見ると、たしかに赤かった。

「赤い川」というのは、いつもお世話になっている、湖の近くの「湧き水のある川」とはもちろん全く違う川である。

「赤い山」はさほど高い山ではないが、遠くから見ても赤い。鉄分が多い岩が多いため、赤錆で地面も赤いのだ。

草木があまり生えておらず、岩場ばかり。

近くの岩を鑑定すると、「鉄鋼石。良質の鉄が取れる」

そういう岩があちこちに転がっている。

「たしかにここの鉄鉱石は質がいいね。ちょっと採取するね。」


シンハには干し肉のおやつをあげて、休憩してもらい、僕は鉄鉱石をじゃんじゃん採取する。

最初はちまちまそのへんの石を拾っていたのだが、らちがあかないので、大きな岩をエルダートレントで作った、なんちゃってツルハシで崖から割り出して採取。いくつも亜空間収納にぶち込んだ。

このツルハシ、斧と同じように圧縮して強度を高めているけれど、やはり岩相手はつらい。結界魔法でツルハシを守りながらだから、結構魔力を使う。やはりはやく金属製ツルハシを調達しないと。


結構な数の大岩を採取したが、中にはちょっと珍しい成分も。

「ねえ、シンハ。これって…まさか。」

銀色の石を見せると

『おう。ミスリルだな。』

「やっぱり!貴重だよね。」

『ああ。エルフの宝と言われる。』

うん、知ってる。

「僕の知ってるミスリルって、銀色していて、魔法と親和性がある金属で、鋼より軽くてかつ堅牢。合ってる?」

『ああ。ミスリルは魔法で強化しやすい特徴がある。鎖帷子や防具に使えば良き防具に。剣に使えば魔法を込めやすくなる。人間社会では貴重だろうが、この森の山や川では時々見かけるぞ。黒いアダマンタイトもな。』

「アダマンタイト!?」

『ほら、おまえの足元にあるのがそうだ。』

「!」

僕はあわてて足元の石を鑑定する。

たしかに

「アダマンタイト:貴重鉱石。黒く、硬い。物理攻撃に向いているため、武器に加工することが多い。」

と出ている。

『加工は難しいが、ミスリルもアダマンタイトも、お前なら扱えるだろう。』

「なにそれ。根拠は?」

『まあ、俺の勘だな。』

「無理だよう。」

『おそらく他の成分も少しはあるだろう。好きなだけ採れば良い。俺は寝る。』

などと話していると


ギャアギャア!

と嫌な鳴き声が聞こえた。

それまでくつろいでいたシンハが、スクッと立って、身構える。

「ワイバーン…じゃないね。」

まるでカラスのでかいのみたいな、黒い鳥。

嘴がとんでもない。見るからにヤバそうな奴だ。

『あれはロック鳥だ。別名「死神鳥」。「魔術師殺し」とも言う。』

「え、何故ゆえに「魔術師殺し」?」

『魔法をキャンセルできる。』

「げっ!?」

『荒れ地に好んで巣を作る。ワイバーンの子供もやられることがある獰猛な奴だ。ちっ!最近見かけないと安心していたが。こっちに来ていたか。』


洞窟から走って半径3日分くらいまでは、特に「シンハの領域(テリトリー)」だ。森全体をテリトリーとしてはいるが、一番のお気に入りの地域のうちにはいるのが3日分だ。

それでもかなり広いけれど、その中は完全にシンハが支配している、はずだった。だが時折こうやって侵入者がいる。

こっそり生きているものもいるが、先日のワイバーンのように、わざと挑発してくる奴もいる。

森で生きるとは、領地争いに加わるか、支配者に服従して生きるか、さもなければお互いを認め合って生きるか無関心で通すかだ。


ロック鳥はどうやら僕をロックオンしたようだ。

別にシャレたわけではない。本当に僕に殺気を飛ばして来たんだ。

「あー、やだやだ、狙われてるよ。」

と言いながら、一応魔力を練って結界魔法でガード。

「普通はどうやって倒すの?」

といいつつ、魔力をマンタンにするため、特製「エリクサー」を飲む。

『俺は牙と爪だな。』

「あー物理ね。ワカッタ。」

僕は弓矢を亜空間収納から取りだし、構えた。

魔法をキャンセルするというから、基本は追尾機能無しで、しっかり普通に矢を飛ばさないと。

矢は、鏃が黒曜石製のものを用意。


ギャア!ギャギャ!!

と鳴くと、早くも僕めがけて真っ向から飛んできた。

よほど自信があるのだろう。

弓矢を構えても怯まない。

十分引きつけて。

パシュ!

パシュ!パシュ!パシュ!

と連射した。

第一の矢は躱されたが、続く第二矢、第三矢は翼に当たった。

ギャ!

だが平気で飛んでいる。

どうやらこっちの魔法はキャンセルするくせに、自分は結界魔法を発動しているようだ。

バサバサッ!と舞い降りながら、嘴と爪で僕を攻撃してきた!

バウ!!

横からシンハが飛びかかってそれを防ぐ。

僕も素早く取りだした斧で応戦。


ギャギャ!!

シンハの攻撃を避けつつ、あくまで狙いは僕らしい。

僕も結界で守るが、確かに5枚のうち2枚が破壊というか、ぬるりと奴の爪が通った。

「おっと!こええ!!」

と言いながら、斧で切りつける。

グワッ!

奴の体にもろに斧が当たった。だが刃のところでなく、身のところが当たっただけだ。

ギャギャグワ!!

怒り心頭な目をして、僕をあらためてロックオン。


「シンハ!合図したら避けて!」

『わかった!』

僕はダメ元で、いかづちを呼ぶ。それもありったけでかいやつをイメージ。

まだシンハとロック鳥が組み合っている。

シンハは飛び上がってかみつこうとし、ロック鳥はそうさせまいと飛び上がりながら嘴と爪でシンハを攻撃している。

「今!」

ぱっとシンハが飛び退いた。その一瞬のち、

「出でませ!いかづち!!」

ピカッドンガラガッシャン!!

すさまじい音と光とともに、いかづちがロック鳥を直撃した。

これもキャンセルできるのだろうか…。


耳が聞こえなくなるほどの轟音。

焦げたにおい。

見ると、2メートルいや2メル先にあるのは、黒焦げのロック鳥の死体だった。

「ふう。やっぱりね。」

『むう。魔法は効かぬときいていたが。効いたようだな。』

「うん。おそらく、ある程度はキャンセルできても、許容範囲以上の大きな魔法は防げないってことなんだと思う。」

『なるほどな。お前の魔法は常識の外だからな。』

「え?何か言った?」

まだ耳が元に戻らないので、ごもごもと話されると聞き取りにくい。

『いや、なんでもない。倒せてよかったな。』

「うん!…でこれ、美味いの?」

『…。俺は遠慮する。』

「あー、美味くないんだ。」

シンハによれば狼以上に不味いらしい。

僕もさすがにカラスのでかいのは食べたくない。


だが、魔法をキャンセルするということには興味がある。

鑑定さんに相談すると、

「ロック鳥:魔石にキャンセル魔法が刻まれている、はず」

というので黒紫色の魔石を心臓の裏から取りだして観察。僕には小さな魔法陣が見えた。

「ふむ。確かに、魔石の中にキャンセル魔法が仕込まれているな。」

と言いつつ。空中にその魔法陣を転写し拡大。陣の構成を読む。


「へえー。なるほどね。」

『…。おい。』

「うん?」

『俺以外の奴の前で、そういう「不思議な魔法」を展開するんじゃないぞ。』

「「不思議な魔法?」魔法はなんでも不思議でしょ?」

『あのな。普通、魔石から魔法陣を呼び出して空中に出したり、大きくしたり、ましてや陣を読んで理解するなど、さらっとできるものではないのだ!お前の今やってることは、普通ではないということだ!はあー。しみじみ思うぞ。賢者レスリーでもお前よりずっと「まとも」だったと。』

「…なんか、微妙な気分…。」


ロック鳥は武器の材料として高値で売れるという嘴と爪を残し、あとは焼いて埋葬させていただいた。


その後は遠くの枯れ木にとまるロック鳥を見かけたが、特に襲っては来なかった。

僕はたっぷりの鉄鋼石と若干のミスリル、アダマンタイト、銀、銅などを採取して、その日のうちに「赤い山」を出発。帰路についた。


三日連続投稿予定です。

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