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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第七章 王都へ 出発編
427/530

427 隊長とレジさん&レムーア到着

「凄かったわあ。こんなに採れるなんて!」

「明日も来たい!」

「明日はきっともう採れないぞ。」

「出発するから、でしょ?」

「ちがう。ダンジョンが、ヒットポイントを移動させるからだ。」

と隊長。

「え、そうなんですか?」

と僕。


「ああ。ダンジョン主からしたら、ミスリルもアダマンタイトも、「撒き餌」だ。冒険者がやってくるための。ダンジョン主的には、今日は大失敗だろう。こんなに俺たちに「ただ取り」されてよ。

獲物の魔力や命を貰うために、ダンジョンを作っているんだからな。」

「なるほど。そういう考え方もありますね。」

「でも、魔物は出なかったわ。」


「入り口だぜ。きっと、今までも見過ごされてきたんだろう。まさかあんな壁の奥を見つけられるとは、ダンジョン主も、思わなかったんだろうよ。」

「サキ君、ありがとね。」

「はは。」

「で、サキ君はどれくらい採ったの?」

「適当に。ですね。」

とごまかす。


皆は大満足。といっても、合計で1トン採った人は居なかった。レジさんがミスリルとアダマンタイトを合わせて500キロ採ったのが最高らしい。えーと。僕、合計すると4トン以上採ったけど…。言わないでおこう。

何ですか?テオさん。にやにやして。


採掘したものは、売ってもいいし、自分で武器を作る時のためにとっておいてもいいが、僕のような無尽蔵なマジックバッグを持っている人はいないので、此処で換金していくようだ。

だがもうギルドの出張所も閉まってしまったので、明日朝換金するらしい。

僕はすべて、売らずにため込みですがね。


野営はシルルが張り切って、今日は煮込みハンバーグにひよこ豆ともち麦入りのシザーサラダ。魔鶏のゆで卵入り。パンは炙ってバターとブルーベリージャムを添える。

エールは1杯だけ。おつまみに小魚の干物を焼いた。

「毎回、野営の飯が美味えなあ。」

「ほんとよね。ロイ、覚えた?あたしは作れないから、よろしく。」

とセイさん。

「なんで僕なんですかー。無理ですよう。」


「ふふ。アタシが手伝ってあげるわ。結構覚えたのよ。これでも。」

と、デザートのイチゴをつまみながら、レジさんが言う。

「家では結構作るのよ。アタシ。」

「そうだな。」

と隊長。

「たまーに、塩と砂糖と間違えるけどな。」

「あ、あれは、不可抗力よう。お塩の壺に、貴方が砂糖入れちゃってたんでしょうに。」

「ふふ。仲いいんだ。」

とアンネさん。

こほ。

「…。まあ、よく泊まるからな。オレは。」

と隊長が開き直ったように言った。

「「「……」」」


!あれー?

なんか、微妙な雰囲気。

「(ねね、テオさん、もしかして…。)」

と僕は二人から遠いのを良いことに、こそこそとテオさんに聞く。

二人はそういう仲なのかと。

「(うん…。たぶんね。)」

!驚いた!旅もほとんど終わりかけなのに、今頃気づくなんて!

僕は鈍感すぎますか!?


「(まあ、はっきり言われたわけじゃないけどね。)」

どうやら半同棲的なパートナーらしい。

びっくり。でも、なんか言われてみると、お似合いかもしれない。

オトナの世界はいろいろあるんだなあ。

としみじみ思った。


『俺は最初っから気づいてたぞ。』

と半分寝ているシンハが念話で言った。

「(そなの?)」

『パートナーだと、どうしても相手の匂いが付きやすいからな。』

なるほど。においですか。


「こほん。じゃあ、そろそろ、僕は寝ます。当番は朝方ですよね。」

「ああ。セイとだな。よろしく。」

「はい。お先に、おやすみなさい。」

「「「おやすみー。」」」


皆さんに挨拶して、テントに入った。

すでにシルルは奥でスーリアと一緒に寝ている。

でも僕は、お風呂に入っても、シンハをブラッシングしても、寝床に入っても、なんだか落ち着かず、そしてなかなか寝付けなかった。

やはり、コワモテ隊長とレジさんの事があまりに衝撃的で。

いや、それより、それにまったく気づかなかった自分に、ショックだった。


「(僕は、見ているようで、全然まわりを見ていないんだなあ。)」

子供の僕に気づかせないほど、二人はオトナで。そして空気のようにお互いを信頼しているのだろうな。


そして、見える事象…言葉や態度でわかることは、そのひとのごく一部であって、たとえば護衛のメンバーそれぞれに、きっとそれなりの重い過去もあって。でも、それを背負って皆生きているんだなと、少し哲学的に考えこむ僕なのでした。



ディアナ村の遺跡ダンジョンで採掘イベントをこなし、野宿すると、ミーゼンシア伯爵領を出て、次はムーアン男爵領の領都レムーアに入った。

ここで11泊目。

ここまで来ると、都ぶりというのだろうか。

なんとなく平民でも着ているものが垢抜けている、ように見える。


そして、ここでもアラクネ布は大流行で、男性はタイのように細くしたものを身につけていたり、ストールの幅のままで地味目の色を腰に巻いたりしている。女性はストールをストールとして使うだけでなく、スカートの上から腰に巻いたりもしていて、アレンジを楽しんでいる感じだ。

なるほど。これは本当に大流行なのだなとしみじみ思った。

僕や辺境伯様が大量にアラクネストールを放出したので、価格もかなり下がっている。

だが庶民にはかなりの高嶺の花。

それでもこれだけ大流行というのは、保温性や防御性もすぐれているからだろう。


レムーアには支店があって、大きな倉庫には、馬車ごと入ることができる。

馬たちは馬車から外すと厩へ。

宿泊施設も完備。

バスタブが各部屋に付いているという豪華な仕様だ。王都に入る前に、旅の垢を落として、さっぱりしゃっきりしてから王都に入る、ということだろう。

でも、僕はシンハと入りたいので、そのバスタブをちょいと収納し、夕食前に自前のバスタブに浸かる。

『俺は入らなくともいいんだぞ。』

「またまた。結構風呂好きなくせに。」

『お前にそうしつけられただけだ。』

「ふふ。ふうーやれやれ。やっぱり宿屋だと、野宿より落ち着くね。」

『まあな。周囲を警戒しなくてよいからな。』

「うん。此処はライム商会の支店だし、結界も張ってあるしね。」


今日は護衛最後の夜となる。王都に入れば、王都の本店に馬車をつけ、荷物をおろせば任務は完了。そのまま流れ解散。僕とテオさんは王都ギルドに寄って、完了報告をし、報酬を受け取れば終了だ。

もっとも、僕はさらにレジさんと一緒に、とある病気の貴族のご令嬢を訪問することになっているが。

ともかく、今夜は一応皆で揃って最後の夕食なので、お疲れ様の宴会が予定されている。


『今夜はワイバーンがいい。』

「いいよ。護衛最後の夜だからね。お疲れ様。」

シンハの体にお湯を掛けてやりながら、承諾した。

『素直だな。いつもそうだとかわいげがあるのだが。』

「まったく。一言多い。」

『ふふ。』


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