426 鉱石をゲットしよう!
「浅い層で、鉱石が掘れるし、宝箱も出る。運が良ければ、だがな。」
とゲイツさん。
「鉱石って、ダンジョンなのに、壁を掘れるんですか?」
「ああ。遺跡はそういうところも多いらしいぜ。鉱石もお宝扱いなんだろうな。」
なるほど。そういう仕様なんだ。
「で、どんな鉱石が採れるんです?」
「いろいろだぜ。鉄だったり銅だったり。時にはサファイヤや、ダイヤモンドなんかを含んだ鉱石、ミスリルやアダマンタイトも出るらしい。」
「すごいですね!」
「出ればな。」
ということで、やってきました、鉱石ゲット区域。
ツルハシは、遺跡入り口でレンタルしていたが、僕は自前のものがあるので。
「!サキくんのツルハシ、もしかして、アダマンタイト!?」
とセイさんにチェックされた。
さすが元騎士。武器の材料には敏感だったようだ。
「いえ、鉄との混合ですよ。」
「すげえな!」
とゲイツさん。
「まさかそれもお手製とか言うなよ?」
「…お手製ですけど。」
「なぬ!?」
そんなことを言いながら、僕はヒットポイントを索敵。
皆、思い思いにツルハシやスコップで掘っている。
ちょっと掘って諦めたような脇道があった。
「こっちは出ねえぜ。」
と、諦めて帰り支度をした冒険者に言われた。
だが、僕の索敵では、こっちにあると察知している。
コンコン、コン…。
僕は、ところどころ軽く叩いて、音を確かめる。
『ありそうなのか?』
「うん。この少し奥みたいだよ。」
と言って、突き当たりの壁右側よりに、ツルハシを大きく振り上げて
「ふん!」
と強めに当てた。
すると、表面の壁に亀裂が入り、ぼろぼろと崩れた。
こう見えて結構筋力あるんで。
確かに、表面の深さ3メルほどには何もない。
これでは、この奥にヒットポイントがあるとは気づきにくいだろう。
しかも、魔法でジャミングもしているようだ。
「結構高度な魔法だね。」
『で、人外のサキには楽勝、ということか。』
「うるさいよ。」
そんなことを話しつつ、僕は本気でツルハシを振り上げ、掘った。
魔力を使っているので、5回も振り下ろせば、3メルほどの表面はすぐ剝がせた。
「ふん!」
ガン!
と音がして、ぼろりと岩が一塊落ちた。
拾い上げ、鑑定すると
「ミスリル鉱。純度は自然界では得られぬほど高い。90パーセント。」
だって。
「おほ。ミスリルの鉱脈らしいよ。大当たりだね。」
『ダイヤモンドではないのか。』
「それは高望みすぎる。…あ、右脇も、なんかありそう。黒いから…きっとアダマンタイトだな。」
と言いながら、右の壁も
「ふん!」
と力を込めて掘る。
こっちはわりとすぐに黒い岩が見えた。
「うん。アダマンタイトだ。ちょうど欲しかったんだよね。こっちも純度が高い。現在の含有魔力は低いけど、良質ということでは、森の奥の「黒い山」に匹敵しそうだ。ダンジョン壁だからかなあ。」
『おそらくな。ダンジョンの壁は魔素を多く含んでいるからな。』
「ふむ。なるほどね。」
僕は、誰も来ない突き当たり脇の坑道で、掘っては即、亜空間収納に入れる方式で、文字通りざくざく掘った。
ミスリルだけで2トン、アダマンタイトで1トン。
それから、宝石類が少し採れた。アメジストやオパールなどで、コランダム類すなわちサファイヤやルビーはごくわずか。
僕的には、宝石類は森産のがあるから、オマケみたいなものなので少量でいい。
これだけあれば、当分いいかな。
宝石類は、森の河原のほうが綺麗で大きな石が多いし。
むしろ、銅とか鉄、銀のほうが欲しいかな。
それを期待したんだけど。出ない。
ところで、どうして誰も来ないのかなあと思いながら本道に戻ると、行き止まりの壁を皆で掘っていた。
「出ました?」
「ああ!銀と金が少しと、あとは鉄とか銅だな!ミスリルを狙ったんだけどなあ。出ねえ。」
とゲイツさん。
「そうなんですか?ミスリルなら向こうで採れましたけど。」
「なぬ!?」
「出たの!?」
「どこどこ!?」
「脇道の突き当たりです。右はアダマンタイト。今なら、僕が掘ったあとだから、まだ壁が修復されないうちなら採れるとおもいますよ。」
「行く!」
「俺もっ!」
護衛仲間が移動して、僕は逆に本道壁で、銀、金、鉄、銅、クロムを採取。
こちらは大量には採れなかったが、まあいいでしょう。
金や銀は、主にメッキ用だし、武器ならミスリルとアダマンタイトが基本で、それに黒龍の鱗や牙、鉄を少し混ぜ込む、みたいな使い方が多くなっているからだ。
ああ、そういえば、金や銀は、スーリアの母龍から僕が相続したから、大量に持っているんだっけ。
でもあれは、いずれはスーリアに渡すものだからな。
あとは、銅と鉄とクロムは、もっぱら調理道具用。鍋とかフライパン、お玉とか。
ステンレスは鉄とクロムが主な要素だから、結構必要だが、すでに森で採って延べ棒状態にしたステンレス鋼があるので、そこから主にカトラリー…ナイフやフォーク、スプーンなど…を作っている。
今回のものは、まず少し実験して性質を見極めてから、森産に混ぜ込むなり、単独で使用するなり決めたいと思っている。
休憩がてら、早めに僕とシンハは馬車に戻った。
レジさんがいない。代わりにルクレさんと、テオさんがいた。
ルクレさんも早々に戻ってきたんだな。
テオさんはミケーネにおやつをあげていた。
「レジさんは?」
「アダマンタイトとミスリルが出たというので、隊長たちと掘りに行きましたね。」
「テオさんは、良いの?」
「いや、たくさん採ってきたよ。今さっき交代したばかりだ。君のおかげで、ずいぶん採れた。ありがとう。」
「あ、いえ。」
「きっと当分、みんな戻ってこないんじゃないかな。」
「はは。じゃあ、僕達は優雅にお茶会でもしていましょうかね。」
「そうだな。」
シルルが入れてくれたおいしい紅茶と、ホットケーキを焼いて、皆が戻るまでのんびりした。
「このデザートも美味いな。」
「卵と砂糖を少し入れた粉を焼いただけですよ。」
「いやいや。食べたことのない味だ。」
「あー、バニラビーンズ…香り付けの植物も使っていますからね。バニラアイスも添えると、絶品ですよ。ルクレさんもどうぞ。」
「ありがとうございます。」
「どれどれ…。!美味い!凄いな!」
「ふふ。」
かけてあるのはメープルシロップ。蜂蜜ではないというところも、僕のこだわり。もちろん、魔蜂の蜂蜜がけもおいしいけどね。
ミケーネたちにもあげたりして、和んでいたが、レジさんたちは、閉門まで戻ってこなくて、ルクレさんが呼びにいってようやく戻ってきた。
異世界ラノベを書いていて、金属の知識が必要になるとは思わなかった…(´д`)
スイヘリーベボクノフネ…。若いうちになんでも学んでおきましょうね!
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