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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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40 アラクネ、布を織る、染める

アラクネさんからいただいた大瓶5つ分のアラクネ糸は、まず紡がないといけなかった。

たしかこんな感じ、という糸車を作って、からからとまわす。廻しながら糸にヨリをかけていく。

そして適当な太さの糸にするのだ。糸は細いものから太いものまで5種類ほど作った。

ちょっとだけ魔力を流すと、べとつかずに上手く紡げた。

そのあとで、手製の機織機に糸をかける。


機織機は、高機(たかばた)は難しいので、ごく簡単なもの。

まず木で櫛状態の棒を二つ作る。これを適当な距離を隔てて動かないように設置し、糸をかけていく。これを縦糸とする。横糸は()に糸をぐるぐる巻きにしておいて、この縦糸の間を横に上下させながらくぐらしていく。杼もたしかこんな感じだったな、と昔小学校の時の紡績工場跡見学で覚えていた構造を思い出しながら作った。


一行杼をくぐらせたら櫛状のものできゅっきゅっと目を詰める。この時も、少しだけ魔力を使うと作業がはかどる。そんな風にして10メートルの平織の布をまず作った。

次はこの機織機を改良だ。たしか縦糸が上下に交互に動くことで、杼は横に飛ばすだけでいい機構だったな。それから距離をとらなくて済むように、縦糸を張った状態で巻いておければいい。

なんてことを考えていたら…。

結局、高機を作ってしまった。


トントンカラリ。トントンカラリ。

雨の降る洞窟の入り口近くで、僕はせっせと布を織った。

綾織りにも挑戦。横糸が二つ飛びに入るとか、縦糸が3段階になるとか、どんどん複雑になるが、鑑定さんと相談しながら、結局優秀な高機を作ってしまっていた。

『しかしお前は…自重というものを知らん奴だ。』

とシンハがくわらっとあくびをしながら僕を酷評する。

「仕方ないでしょ。服だってもうすり切れそうだし。(いや、初期の服はどれも少しも痛んでいない。亜空間収納さまさまだ。)夏には蚊帳だって欲しいし。冬は寒さ対策でカーテン欲しいもの。」

『まあ、がんばれ。』

「気のない応援、ありがとう。」


天気になったので、僕は織り上がったアラクネ布を持って川へやってきた。

今日は草木染めに挑戦。火を起こして熱い湯に、よくすりつぶした緑色の葉っぱの溶液を入れた。水の色は黒っぽいくらいの緑。これに織った布の裾のほうだけを入れる。蚊帳がわりの薄いカーテンはグラデーションにするんだ。

さっととりあげて、今度は衣類用に織った布をしっかり染める。

これで緑色のシャツができる。

プレゼント用に、他の布を今度は紅花で赤く染める。たしか真っ赤は虫で染めるのだが、今日のところは花で淡く染めよう。

これは何度も染める。

できたものをそれぞれ灰汁(あく)から作った媒染液に浸す。

それから川で洗い流してできあがり。


僕が川で一番大きな蚊帳と格闘していた時だった。

「何をしているの?」

顔をあげると、アラクネ女王がいた。

相変わらず豪華な金色のくちゃくちゃ服をプードルみたいに着ている。

「こんにちは。布を染めているんですよ。」

「ふうん。それ、サキが織ったの?」

「そう。」

「器用ね。」

「まあ、ね。」

「綺麗な布。」

「ありがとうございます。」

「敬語は禁止よ。…ね、どうやって作ったの?」


僕はかくかくしかじか、と教える。

「へえ!布を織る機械まで作ったなんて!」

ちょうど亜空間収納に入れていたので、高機を見せる。

「すごい!すごいわっサキ!これ、貸して!同じものを作らせるわ!」

聞けばアラクネたちは以前から布を織りたいと思っていたそうだ。


「魔族と取引をしていてね。糸を渡すと美味しいものをくれるの。でも、布を自分たちで作れたら、もっと綺麗な格好ができるのにって言っていたところなのよ。」

なるほど。それで服はくちゃくちゃ糸の塊のようなものだったのか。

「ずいぶん昔に魔族から布を買ったこともあるけれど、我々の糸でできたものじゃなかったからすぐにぼろぼろになっちゃって。我々の糸で作った布は、何故か売ってくれなかったの。」


なるほど。アラクネ糸はとても高価だとシンハは言っていた。布に作ったものを魔族の商人はアラクネたちに売ってくれなかったのだろう。

「しかも、魔族って綺麗な石を欲しがるの。買う時はルビーやサファイアを使うの。」

え、それってかなりぼられてませんか?

「大丈夫。そのへんで拾った石だし。」

あはは。確かに。そうですよねー。

「魔族も全然見かけなくなったし。自分たちで織れば、もっと自由にお洒落できるでしょ?それに、染めもできたらもっと楽しいわ。」

確かに。


僕は織り機を貸してあげることにした。

亜空間収納にもう一度入れて、棲家までシンハと女王と歩く。

「女王陛下。また無断でおひとりで外出なさって。」

女王付き侍女長らしいアラクネ女性が叱る。

「大丈夫よ。シンハとサキの傍ならどこより安全だわ。それより…サキが布の織り方を教えてくれるわ!技師を呼んで。はたおりの機械を作るのよ!」


かくして、アラクネさんたちへ布作りの講義がはじまった。

雄が高機を作り、雌が織るようだ。

アラクネさんたちは、本当に優秀だった。

一度教えると、すぐに理解して、器用に高機を作り、トントンカラリと織り始めた。

綾織も、模様織りも理解した。

染めもばっちり。

「そうなのね。布ってこうやって作るのね。」

「できあがったものを服に仕立てて、あとから刺繍をしてもいいね。」

1週間後。僕はできあがった布に女性用のブラウスとスカートのひな型を書いてあげた。


「このとおりに裁断して、此処と此処を縫い合わせて…。あとはボタンをつけるといいね。」

「まあっ!まあまあまあ!こういうのを着たかったのよ!」

仮縫い状態のブラウスとスカートを着て、女王様はご満悦。

あまった布でフリルも作れると教えるとますます喜んだ。

「服ってこんなふうになっていたのね!やっと判ったわ。」


それからは研究熱心で、厚めの布を織ったり、いろいろな色で染めたり、ベストやズボンなども作ってみたりして…。どんどんいろいろな服が作れるようになっていった。

女王は会うたびに違うドレスを着ているようになった。フリフリのミニスカドレスがお好みのようだ。

「今度、サキにも服を作ってあげるわ。どんなのがいい?きらきらの石をつけてー、それから…やっぱりフリル付きがいいかしらっ!」

「いや、ごくシンプルなのがいいかなー。」

「あら、つまらないわ。もっとこう、豪華で、みんなが振り返るような…。」

「あはは。」

お願い誰かとめて。


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