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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第六章 世界樹編
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398 メーリアとおしゃべり&ビーネ様、ツェル様にもご挨拶

「ところで、サキ、人のことより、自分のことはどうするの?」

「え。」

「これから王都って。すぐ帰ってくるの?」

「…」

「私はサキにすぐ会えるし、コーネリア様?は、たぶん気の長い方のようだけど。ユリアちゃんは…ああ、ハーフエルフだったわね。ハーフは寿命がまちまちだから微妙だけど…。でも、待たせるなら…そうねえ、2年が限界かしら?」

「う。」


どうしてメーリアは、その2人に絞って言及してくるのかなあ。おっと、メーリアも入れて3人か。うう。

「罪な男ねえ。ちゃんとお手紙くらいは、まめに書いてあげなさいよ。」

「……はい。」

メーリアの言葉を、実は僕は、彼女が思っているよりずっと重く深刻に捉えていた。

だって、僕の行く先の先は…。


妖精達は、いつものように、わちゃわちゃと楽しげにしている。

食べたり、おしゃべりしたり、喧嘩したり、笑ったり…。

ああ。こんななんでもない平和が、ずっと続くといいな。


僕は浄化と勉強と、それから「来たるべき日のために」、自分を鍛えるために行くのだ。

それ以外、今は考えられない。

いずれジュノ様がティネル様を滅ぼすために、僕に憑依するというのだ。それなら、それなりに底力をあげておかないと。いざと言う時に僕が非力すぎて、ジュノ様がうまく動けませんでした、ではまずいのだ。

しかも、神を宿すって、どんなだろう。ジュノ様の膨大な魔力、存在感に、僕は自我を保っていられるのだろうか…。

とにかく、すべてに耐えられるように、さらに精進しないと。

それだけは確かなことだ。


森のみんなには、「浄化と勉強のために王都に行く」と言ってある。

嘘ではないが、本当のことをすべて言っているわけでもない。


シンハが心配するように、もしジュノ様の憑依が上手くいかなければ、あるいは、憑依されてティネル様と戦いになって、うまくいかなかったら、サキという存在自体、霧散することだってあるのだ。

そんなこと、誰にも言えるものではない。


いずれなにかと敏感なメーリアには悟られてしまうかもしれないが、現時点では、言えないことだ。

もう少し、僕が大人だったら、自分の種を残したいから、誰かと結婚を、と思ったのだろうか。

いや、たぶん僕の性格なら、たとえ僕が何歳だろうと、やはり誰とも結婚…いや告白もせずに、修行と決戦に行くような気がする。


ふと。前世の末期の自分を思い出した。

あの頃、僕は死の床でさえ、必死に両親に笑顔を見せようと努力していた。

本当は、泣きたいのに。苦しいって言いたいのに。死にたくないって言いたいのに。

あとに残される人の悲しみの大きさを思うと、そうすることしかできなかった。

僕が存在していたことを、忘れて欲しいとさえ願った。

両親の愛情が深ければ深いほど、あのひとたちより先に死ぬことが、辛かった。


今の僕の心境は、あの時に似ている。

もちろん、たとえ邪神様と対峙しても、死ぬつもりはさらさらないけど。

でも、万が一のことを考えると、やはり誰にも言わずに、決戦に行くような気がする。


ふと、腿に重みを感じて下を見ると、シンハが僕の腿に顎を乗せて、上目遣いに見ていた。

シンハは何も言わないが、心配してくれているのはわかった。

ふっと笑って

「(僕は大丈夫だよ。)」

とひっそりと念話で言って、シンハを撫でた。

今は君がいる。

僕の真実を知っていて、なおかつ傍に居てくれる相棒が。

おそらく最期の瞬間まで、君は僕の傍に居てくれるつもりだろう。

「(ありがとね。)」

と付け加えて、僕はシンハをもふり続けた。


妖精達とのデザートパーティーのあとで、ふたたびスーリアを召喚し、ビーネ様のところに寄ってご挨拶。

スーリアを紹介し、かつ王都に行ってくると伝える。

スーリアには前もってビーネ様のイメージを伝えておいたからか、全然物怖じせず、ぴっきゃう!と元気にご挨拶していた。


魔蜂の蜂蜜にポムロルやオレンジをつけ込んだものと、レーズン入りのパウンドケーキを5本ほど置いてくる。ハチミツをかけて召し上がれと。

「逆に気を使わせちゃったわね。これはお餞別よ。もし偉い人に会ったら、これを少し、お土産にすると、ウケがいいわよ。」

その通りですね。はい。知ってます。すでに実践しておりますです。

また極上な蜂蜜をたっぷり貰ってしまった。

ありがたや。


あとはアラクネのツェル様に会いに行く。

恋人のオージェさんとは正式に婚約し、あとはいつ結婚するかという段階。

今日は森の見回りに行ってオージェさんは不在だった。


ツェル様にスーリアを紹介すると、かわいいわあ、とスーリアの頭を撫でてくれた。

スーリアも、実力者のツェル様を怖がりもせず、ぴっきゃう!と元気にご挨拶していた。

うちの子、やっぱり大物だわ。


「あらためて。婚約おめでとう。これ。お祝い。」

なにがいいかわからなかったので、メルティア入りの、小さめでブーケっぽい花束にした。花を包むのは金糸銀糸入りのアラクネ布で、白とブルーのアラクネ製リボンで束ねてある。

「まあきれい!いい香り!ありがとうございます。」

「結婚式は、アラクネさんはするものなの?」

「いいえ。しませんわ。おそらく次の満月の晩が、その…。」

「あー、うん。なるほどね。」

初夜なのね。

リアクションに困るなあ。はは…。


「たくさん貴重なポーションまでいただいて。ありがとうございます。オージェも大変感謝しておりました。」

「末永くお幸せに。」

「ありがとうございます。」


「ラーミルたちは、その後どう?」

「元気にしております。一緒に機織りをして。楽しいですわ。」

「そう。よかった。…実は、しばらく王都に行くことになったんだ。森にはちょくちょく来る予定だけど、一応挨拶と思って。」

「王都、ですか。少し遠くなりますね…。は!?となると、流行の最前線ですわね!」

急に目がらんらんと輝きだした。なにかスイッチが入っちゃった感じ。

「あー、うん。今度来るときは、なにかデザインの参考になりそうなものを、仕入れてくるよ。」

「是非に!よろしくお願いします!!」

そうだった。その話もしておかないと。


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