39 今度は卵をゲットした
数日後。今度はシンハがどこからか、卵を持ってきた。
「!卵だっ!」
今回は僕は要求していない。
だが人間世界で暮らしたことがあるシンハは、僕が卵と言ったのを覚えていたのだろう。いや、シンハ自身が次に食べたいものが卵料理だっただけかもしれない。
でかい。
ダチョウの卵ほどもある。
「これ、なんの卵?」
『魔鶏のものだ。』
「え、いつだったかシメて食べたよね。魔鶏。確かにあれは大きかったけど…。こんなに大きな卵を産むんだ。」
『ああ。あれとはまたちょっと違う品種だ。特にこれは大魔鶏という品種だからな。卵も大きい。』
「ふうん。美味しいの?」
『味の保証はする。とにかく一度食ってみろ。』
「生で食べられる?」
『ああ。俺は生を飲むぞ。』
「判った。」
鑑定してみたが、確かに特に問題はない。それどころか
「大魔鶏の卵。無精卵。一級品。新鮮。生でも可。」
とちゃんと出ている。
僕は皿の上でなんでも斬れる短剣で上部を丁寧に割って、中身を取り出した。
「食いでがあるね。大きい。」
黄味がぷるぷるで、いかにも新鮮!と判る。
一口食べて
「うわっ濃厚!美味い!」
確かにこのままでも美味しいものだった。
さっそく、僕は卵焼きを作ることに。
入手したての羊乳を少し入れて伸ばす。塩も少し。それに砂糖の代わりにちょっとハチミツ。それから石から作った手製フライパンを熱し、作りたてのバターを入れる。
じゅわわわわっといい香り!
「これこれ!これだよ。ああっバターに卵…夢のようだ…。」
僕はそんなことを言いながら、フライパンにといた卵をじゅっと入れる。
バターのよい香りと、羊乳の香り、卵の香り。
ああ、またしても地球での食生活を思い出す…。
綺麗に焼けた卵焼きを3等分して、1つは僕、残り2つはシンハの前に置く。
『うむ。美味い。』
シンハも満足げに食べてくれた。
「本当に。おいしいね。」
シンハはもっと欲しそうだったけど、もうない。
「また作ってやるよ。今日はおしまい。」
『むむ。残念だ。クウン。』
「仕方ないだろ。もう卵はないんだから。」
物足りなそうに尻尾をぱたりぱたり。
「ふふ。美味いものばっかり食べてると、太るぞ。」
そう言って、僕はシンハを撫で繰り回した。
翌日。
またシンハは卵をゲットしてきた。
今日はフレンチトーストにした。
僕が作ってやると、本当に美味そうに、シンハはゆっくりと味わって食べていた。
さらに数日後。
大魔鶏は、群れでシンハの縄張りに巣を作ることにしたそうで、不定期だが無精卵を提供できるそうだ。
その代わり、この群れは一応保護対象。
大魔鶏を食べたい時はハグレのやつを仕留めることに。
まあ、増えすぎるなら、成鳥をシメるより、有精卵をいただくことにしよう。
僕の食生活も充実してきた。
ああ、次第に僕は贅沢になる。
でもシンハも同じだ。
どんどん美味しいものを要求してくる。
卵があるなら、当然、次はマヨネーズだ。
酢は白ワインから作ったワインビネガーを使う。
米酢が欲しいがまだないのでがまん。
それでもコクがあって美味いマヨネーズが作れた。
はあー。これでポテトサラダも作れるし、お好み焼きにマヨネーズ・自家製ソースがけといった組み合わせもできる。ほとんど日本にいた時の洋食系は再現可能だろう。
シンハがある日トリュフを見つけてくれた。
地中にざっくざくというか、ごっろごろあった!
だから、トリュフをトッピングしたピザを食べた!
生地も美味いし、チーズも魔羊のチーズ。トッピングはワイバーン肉にトマト。そしてトリュフ!
もう最高に贅沢!
「あー。此処に舞い降りて、良かった!」
僕は贅沢ピザをほうばりながら、そうつぶやいた。
あとはそう。次はダイズを手に入れれば…。
「シンハ。ダイズがあったら教えてね。形は…こんな感じ?若い青いのは枝豆といっておつまみになるんだよ。」
とまたシンハにダイズを教え込む。
「ふむ。なくはない。だがかなり遠い。俺の背に乗せて走っても往復2カ月ほどの旅になるだろう。」
「そうなの…。遠いなあ。」
むむ。味噌と醤油は、ちょっと難しいかな。
「仕方ない。今はガマンするよ。その前に…サトウキビか。」
そうだ。サトウキビをゲットしに行かねば。