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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第六章 世界樹編
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381 世界樹と面談

光の中をどれだけ歩いただろうか。

行けども行けども、何も見えてこない。

ただひたすら光のシャワーが降ってくるだけ。

足元も光っていて、平衡感覚を保つのがやっとだ。

僕はシンハの首元に手を置いて、歩いている。

無意識にシンハと離れることをおそれていた。

スーリアは僕の肩の上。


「なあ、シンハ、此処、どんだけ広いんだ?」

『さあな。なにしろ世界樹だからな。』

「無限空間か…。」

僕は立ち止まった。

「無闇に歩いても埒があかない。待って、探知してみるから。」


僕はどっかとそこに座った。座禅を組む。

そして周囲を探知するために目を閉じて、ありったけの広さでアンテナをたてる。

ソナーをありったけ広げた感じに。

すると。


「上か。」

僕は上を見上げた。

『上?』

「ああ。世界樹の『核』つまり意識の一番濃密な部分は、上のほうにあるようだ。行ってみよう。」

シンハが僕の足にぴったり体を寄せた。

僕はシンハの首輪に内蔵してあるリードを取り出して握り念のためシンハの首に手も置いた。


それからシンハと僕の足元に魔法陣をイメージした。

たぶんこれで行けるはず。

案の定、すうっと体が軽くなり、風が上から下へとゆるやかに移動するのを感じた。エレベーターをイメージしている。


『浮いて…いるのか?』

「たぶんね。少し速度あげるよ。」

『お、おう。』

くす。シンハがちょっとびびっている。珍しい反応だ。

フライと少し違うからだろう。

スーリアはおとなしい。なにが起きているのか、わからないのかもしれない。

次第に『核』に近づいているのを感じた。


やがて。


ほどなく『核』と思われる大きな光る球体の壁まで到達した。

すると今度は、『核』のほうが僕をひっぱる感覚があった。

「『核』突入するよ。」

急にシンハの体から緊張が伝わってきた。


「大丈夫。僕たちは『核』に入ることを許可されているから。」

そう言って、僕はシンハの首元を撫でて落ち着かせた。

そして『核』の壁?を通り抜けた時、ふっと空気が変わったのを感じた。

急に音がなくなった感じ。


と。

…サキ…。

ん?

…サキ…。

誰かが、呼んでる。

女の人のような、男の人のような…。

でも懐かしい声。

僕はこの声を知っている。


試しに念話で答えてみる。

「世界樹様?」

「そうだよ。」

とたんに、遠かった声は、すぐ目の前で話しているようにはっきり聞こえた。

そして、目の前に、ぼおっと人影。

やがてその人影がはっきりして、ハイエルフの少年?が現れた。


「やあ。」

整った顔だちで、笑顔が優しげでほっこりとなる。

てか、かなり僕に似てない?兄さん、みたいな?

ううん。僕、こんなに綺麗じゃないよ。

むしろ彼?はハイエルフのキリングスさんに似ているかな。

キリングスさんの息子と言われたら、うん納得しそうだ。

耳は…僕と同じく丸かった。


「君をこの世界に生まれさせる時、ハイエルフだった頃の僕や、キリングスたちを参考にした。僕もこの姿を気に入っていてね。だから僕と君が似ているのは仕方がない。」

え?僕の考えていること、まるわかり?

「仕方がないだろう?私は世界樹だ。君は僕がこの世界に呼んだんだもの。思考など読んで当然。」

えーでもさあ。ぷらいばしーの侵害だよ。


「ふふ。一人前の口をきくんだね。まあいい。どうだい?この世界は。楽しいかい?」

「楽しいです。生まれ変わらせてくれて、ありがとうございます。あ、あと、「チート」…たくさんの魔力とか素質?を授けてくれて、ありがとうございました!おかげさまでなんとか生きてます。」

いちおうきちんとお礼を言う。

本心だし。


「いや、君は僕の息子だからね。ある程度の恩恵は当然さ。

僕のほうこそ、直接お礼を言いたかったんだ。いつも美味しいお供えをありがとう。おかげで食べる楽しみを思い出せたよ。」

「お口に合ったようで、よかったです。」

と言ってみたけど、ナンだって?今さっき、「息子」と言ったよね。さらっと!

だが世界樹様は、わざとかな、僕のその動揺には触れなかった。


「それにしても、本当によく来てくれた。サキ。シンハも。それから龍の子にも、会いたかった。」

ぴきゅう!とスーリア。

「スーリアと言います。古龍と…白龍の子だそうです。」

「うん。よく生まれたね。奇跡の子だ。」

そう言って、世界樹様は微笑んでスーリアを撫でた。


でもシンハは尻尾を振ってはいない。

あの時のシンハとの会話から、シンハはレスリーとウルの件で、世界樹様を尊敬しつつも、思うところがあるのだ。


そんなシンハを見て、世界樹様は、

「フェンリルのシンハ。そんなに睨まないで欲しいな。」

と困ったように微笑んだ。

「シンハ。失礼だよ。」

だがシンハは態度を改めず、僕の傍から離れない。


「とにかく、掛けたまえ。お茶にしよう。」

パチンと指を鳴らすと、景色が変わった。

どこかの屋敷の庭らしい。

目の前の丸テーブルにはお茶が用意され、サンドイッチやスコーン、クッキー、果物などが、3段のケーキスタンドに盛り付けられている。


世界樹様は僕に椅子を勧め、座るとすでにティーカップにお茶が入れられ、食べたいなとちらと思ったブルーベリースコーンも、クロテッドクリームが添えられてお皿に乗っていた。お茶はアールグレイ。


シンハには魔素水と、ワイバーンのサイコロステーキ、食べやすい大きさに切ったバタートースト、そしてポムロルが、バランスよくおやつとして、いくつかのお皿に盛られていた。

スーリアにも同じものだが、量は少なく、そしてミルクもついていた。


「召し上がれ。」

「いただきます。」

お茶を一口飲むと、とても美味しくて。僕の好みの味だった。

スーリアは美味しそうに食べ始めたが、シンハはまだ警戒しているのか、水にもお肉にも口をつけない。

僕が撫でると、ようやくお座りの姿勢になった。


「急に招待してしまって、驚いたろう。すまなかったね。君たちに、どうしてもなるべく早く、会いたかったんだ。それで無理にも図書室に入り口を作ってしまった。」

「そうだったんですか。」


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