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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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38 羊乳、バター、チーズを得る

ある日。僕は洞窟前で明日のための煮込み料理をしながら、シンハが帰ってくるのを待っていた。

すると数時間後。

「メー。」

「ん?」

『連れてきたぞ。魔羊。』

なんと!シンハが魔羊を連れてきてくれた!

しかもなにこれ。牛みたいにでかい。そしてどっかで見た彫刻みたいに、乳がたわわに10個もついた羊だよ。


「わあ。すごい!お乳、もらえるのかな?もらえるんだよねっ!」

僕は興奮気味で、もうお乳をもらうつもり十分。

『ああ。話はついている。乳をくれるそうだ。』

「ありがとう!あ、でも先に何か美味しいものあげたいな。お礼に。」

そう思って、僕はポムロルを取り出した。

魔羊の前にあげると、美味そうに僕の手から食べた。


「じゃあ、お乳、もらうよ。」

そう僕は言ってから、まず羊のおっぱいにクリーン!をかけ、自分の手にもクリーンをかけて、亜空間収納をその下に展開した。

そしてシャーッと勢いよく乳を絞る。

おお。やはり。どんどん亜空間収納に入っていく!

シンハに通訳してもらい、羊さんにたずねると、全部絞っていいとのこと。

うまれたばかりの小羊が弱い個体だったらしく死んでしまい、お乳が張って辛いそうだ。なので10個のお乳を全部絞らせてもらった。

お乳がマンタンになるのには10日くらいはかかるらしい。

他にもお乳の出が良すぎて困っている母羊はいるそうなので、順番に来るそうだ。

いい加減出なくなったところで今日の搾乳は終了。


「ありがとう。またそのうちおくれ。」

魔羊は「メー」と啼くと、とことこと、立ち去った。

その間、シンハはずっと僕の近くで半分うたたねだ。

僕が一心不乱に乳絞りをするのを、半分寝ながら眺めていた。

僕はさっそく、絞りたての乳を少し飲んだ。

鑑定では「生でも問題なく飲める」とあったので、まずはそのままでいただく。

美味い!

しかもかなり濃厚!クセはまったくない。確かにこれなら地球上の牛と同じ雑味のないバターやチーズが作れるだろう。


僕は失敗したくないので、亜空間収納にバターとチーズと生クリームを作らせた。

僕の亜空間収納は不思議なもので、普段は入れたまんまで永久保存するのだが、入れたもの同士を混ぜ合わせたり、組み合わせることで、想像したものができあがる。たとえば生地を入れてシャツが欲しいと願えば、想像した通りのシャツが出てくる。もちろん、それにはしっかり縫い目までイメージできないと出来ないが。


食糧もそうで、やろうと思えばジャガイモ、タマネギ、ニンジン、肉、羊の乳などでクリームシチューが出来る。だがかなり高度なイメージが必要なわりに、ちゃんとリアルに自分で調理したほうが美味しくできることは実験済みだ。バターやチーズ、生クリームといったいわば調理の材料を亜空間収納で作るほうがうまくいった。


たとえばバター。自分でもたくさん攪拌してバターもどきを作ってみたが、亜空間収納にやらせたほうが早くかつうまくいった。原料を無駄にしたくなかったので、バターについては、以後ずっと亜空間収納で作成することにした。


自家製パンはいつもリアルで作る。亜空間収納製のバターを練り込んで、ポムロル(リンゴ)から作った天然酵母で発酵させ、リアルの竈オーブンで焼き上げたらうまくいった。

それにさらにバターを塗って、ハチミツもつけて食べた。

はっきり言って、また涙が出た。

「これこれ。これだよ!僕が食べたかったのは。」

『うむ。美味い。』

シンハも気に入ったようにそう言いながら食べていた。

いかにかつての日本の朝食が贅沢なものだったかを思い知った。

ただし、異世界で食べるパンも、魔蜂のハチミツと魔羊のバターも、地球で食べたものよりずっと美味い。やはり素材がむちゃくちゃいいからだろう。


チーズも基本は亜空間収納内で作る。

パン用酵母もそうだが、チーズは亜空間収納の中の発酵部屋と呼んでいる区画で強くイメージしながら作っている。ただし前世で食べたことのあるものしか今のところ出来ない。それでもチェダー、モッツァレラ、カマンベール、ブルー、クリーム、それからピザ用のとろりと伸びるナチュラル、イタメシに欠かせないパルメザンの各種チーズが出来たから、もう十分だ。


小麦粉からパスタも作り、魔兎肉のミートソース・パルメザンチーズがけとか、とろーりとろけるチーズをパンにのせてあぶって朝食とか、ワイバーン肉ハンバーグ・チーズ乗せとか、チーズでかなり食のレパートリーが増えた。

ないのはタバスコくらいだ。まだトウガラシが見つからない。だがコショウで辛みはカバー。香りがあってこれはこれで美味い。

シンハは辛いものは苦手なので、肉を焼いたときのコショウも、シンハの分はほんの少しにして、僕だけそれなりに効かせて食べる。僕も辛いのは得意ではないが、やはり多少はね。

「はあー。しあわせ。美味しいは正義だな。」

かつての日本での食事(洋食系)を再現できたときなどは、僕はそんなふうにしみじみつぶやくのだった。


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