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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第六章 世界樹編
377/530

377 異空間の住人

「ガウガウガウ!」

「?神獣様はなんと?」


「シンハは僕のことを、『こいつは世界樹から生まれたんだ』と言っています。」

「生まれた!?ああ、なるほど。どうりで。」

「ん?」

「いえ、世界樹様にたいへんよく似ておられるので。」

「!…やはり似ていますか。」

「はい!それはもう!ご兄弟のようです!ああ、そうですか、世界樹様からお生まれに。」

「いやいや、生まれたかどうか、僕は知りません。ただいろいろと世界樹から恩恵をいただいているのは確かです。他の人間より少し魔力が多いとか、いろいろ。」

「そうなのですね!すばらしいです!」

なんだか二人とも目をきらきらさせている。

「どうぞお立ちください。確かにシンハは神獣ですが、あまり崇められるのは好まないようですし。」

「はあ。ではお言葉に甘えて。」

ようやくハイエルフたちは立ち上がってくれた。


「申し遅れました。私はミーシュラインツェット・フェルマノンメルム。集落では『評議員』の一人です。」

『評議員』というのがよく判らないが、おそらく集落は合議制の会議で物事を決めているのだろうと理解した。

ある意味、この世界では画期的かもしれない。

まだ人間社会は封建制であり国王がいて貴族がいて、平民がいるという世界だ。それに対して会議で物事を決めるというのは、進んでいるなと思った。


もうひとりも自己紹介する。

「私はミーシュの友人のフロースエルマータ・フェデクスメナムと言います。狩人です。」

なるほど。それで弓を持っているのか。

フロースさんはミーシュさんよりがっしりした感じだ。

どちらもイケメン。

「はじめまして。サキ・ユグディリアと申します。人間世界ではユグディオとしております。よろしくお願いします。」

「ユグディリア様!?まちがいありません!貴方様はエルダー・ハイエルフ!こちらこそ。先程のご無礼をどうかお許しください。サキ様。」

エルダー・ハイエルフ?初めて聞いた。


「いや、サマなんて呼ばれるような者ではありませんから。お気遣いなく。それに、おそらく僕はみなさんよりずーっと年下ですし。」

「いえいえ、とんでもない!あなた様は間違いなく世界樹様ゆかりのお方。お耳も丸いですし、間違いありません!ああ!世界樹様と本当に良く似ておられる!しかも神獣のシンハ様を眷属とされておられるなんて、我々から見れば神にも等しいお方です。年齢は関係ありません。」

「なりゆきでそうなっただけですから。本当に。気楽にいきましょう。お願いします。慣れなくて…。」

「はあ。そうですか。」


「あの、もしや肩にお乗せになっているのも、白龍様の血筋では…。」

「ええ、まあそうですね。」

「やはり!」

「驚きです。幻の白龍様もお連れとは!」

「あーいえ、スーリアは確かに白龍の血筋ですが、古代龍です。ハーフなんですよ。」

「そ、そうですか。それにしても、ああ。貴き皆様にお会いできて、奇蹟のようです!」

彼らはスーリアの出自も知って、ますます感激していた。

言われてみると、確かにスーリアも神獣の末裔だものね。


「こほん。ところで今一度確認しますが、あれは確かに世界樹なのですよね。」

「もちろんです。あれが正真正銘の世界樹です。この世に唯一無二の、世界樹です。」

「そうですか。加護をいただいておりながら、見るのははじめてなので。大きいですねえ。」

「はい。世界樹ですから。」


僕は世界樹を仰ぎ見た。てっぺんは相変わらず雲に隠れて見えない。

僕は本当にこの樹木の中を通ってこの世界にやってきたのだろうか…。

それを知るすべを、僕は持っていない。

ほどなくミーシュは隣のフロースと目で語り合ってから、僕たちに対して言った。


「サキ様、もっとお近くで世界樹をご覧になりませんか?よろしければ、我等の集落へどうぞ。世界樹にゆかりのあるお方なれば、ぜひ我等の集落へお立ち寄りください。仲良くしていただきたいものです。

なにしろ我等は世界樹を守るために生きてきたのですから。」

どうぞどうぞと歓待してくれる感じだが、よほど珍客なのだろう。

二人とも好奇心いっぱいの目をしている。

シンハやスーリアも敬愛しているみたいだし、悪いことは起きないだろう。


「(行ってみようか。シンハ。)」

『そうだな。此処にいても、どうせ世界樹まで行くつもりだったしな。』

「シンハも行ってみたいと言っています。お邪魔でなければ、訪問させてください。」

と言うと、

「ありがとうございます!皆も歓迎することでしょう!」

とミーシュがうれしそうに言った。


二人のハイエルフと一緒に草原を歩きはじめる。

「ところで、皆様はどうしてこのハイラウト草原におられたのです?」

と聞かれた。

此処はハイラウト草原と言うらしい。

「え、それは…」

どこまで本当のことを言おうかと思いながら振り返ると、僕とシンハが通ってきたあの扉は…すでになくなっていた。


「!(シンハ。)」

『なんだ?』

僕は後ろ向きに歩きながらも、シンハに念話で声をかけた。

「(後ろ見て。僕たちが通ってきた扉が、なくなってる。)」

『!…あーだから言わんこっちゃない。これは帰るのが難しいかもしれんぞ。』

「(うーん。まあ、なんとかなるよ。きっと!)」

『どうしてそう楽天的に言えるんだ?』

「(えーと。ほら、まだあの本は僕の収納に入ってるし?それにいざとなったら、世界樹がきっとなんとかしてくれる。そんな気がするんだ。)」

『はー。まあ、そう願うしかないな。』


「あのー。」

「あ、えーと、ああ、僕たちが此処にいた訳、でしたね。」

ミーシュの問いかけにはっとして我にかえる。

「あはは。たまたま。偶然ですよ。偶然。」

としか言えないでしょ。今となっては。


とにかく今は、このハイエルフさんたちの集落に行き、世界樹を見学させてもらって、此処が世界の何処に位置しているのかを確認したのち、再び扉が開くかどうか試す、しかないだろう。

あるいは、また別のルートがあるかもしれないしな。

まあ、世界樹だし。なんとかなるだろ。

と僕は何故か楽観的に考えることができた。


「いい天気ですねえ。」

「はい。狩りには最適です。」

「此処ではどんな獲物が捕れるのです?」

「魔鶏や魔鹿ですね。時折凶暴な魔兎や魔猪が出るのが悩みです。」

「そうですか。魔兎や魔猪の狩りなら、得意ですよ。シンハが。」

『おい。お前のほうが得意だろう。』

「(まあまあ。君が強いところを見せてあげてよ。)」

『ふん。まあいいが。』


「そうですか!それはとても助かります。最近、このあたりにも魔兎が出るようになったので、皆困っていたのです。」

「今日も一頭でも仕留めることができればと、魔法を使うのが得意なミーシュと来てみたところなのですよ。」

「そうだったんですね。」


「いや、実はそれだけではないのです。我々が此処に来た理由は。」

「と言いますと?」

「私は予感がしたのです。何かいいことがあるに違いないと。フロースは私の言うことが信じられないようですが。」

それからフロースに向かって

「ほらね。こうやってサキ様やシンハ様方にお会いできたじゃないか。」

「ああ。そうだな。今日のところは、お前の予言を信じてやろう。」

ふふん、と笑う二人は、きっと仲のよい友人なのだろうなと、傍目にも判った。

「僕たちに会えたことが良かったことなら、うれしいです。」

「絶対これは吉兆です。とても喜ばしいことです。間違いなく!」

ミーシュはしっかりと自信ありげに頷いた。


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