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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第五章 春の嵐編
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368 シャン・イーのひと

東国訛りの人は、たまたま「トカゲの尻尾亭」に泊まっていたお客さんだった。リャン・ウーさんという。

見た目はヴィルドの人とあまり変わらず、西洋人的な顔立ちだが、シャン・イー訛りが強い。


「ワタシ、シャン・イー出身の行商人アルヨ。ヴィルドでメッシ食べられるとは思わなカッタ。懐かしいネ。普通、こっちではメッシは売れないネ。だからほとんど持って来ないヨ。」


リャンさんは少量で高価な香辛料と、こちらでは貴重な絹生地を中心に行商しているという。

特に香辛料については、ヴィルドではライム商会とオリバー商会と取引しているとのこと。


「じゃあ、僕は間接的にリャンさんの常連だったわけだ。」

「そうみたいアルね。」

八角とかパクチーの粉末、蓮の実など、中華の材料を尋ねると、どれも持っているという。僕がごひいきだとわかって、特別に手持ちの香辛料を格安でわけてもらった。


シャン・イーには、いわゆる肉まんや、シュウマイ、ギョウザ、それに月餅もあるそうだ。それぞれ名前は「シャン・イーまん」「肉包み」「肉半月」「月菓子」というそうだ。


しかも「月菓子」の具は黒っぽい餡だけでなく、蓮の実やくるみなど、複数種類あるのも同じらしい。

前世で子供の頃、両親と行った横浜中華街で、山と積まれたさまざまな餡入り月餅に驚いたのを思い出した。


「しかし、サキさん、面白いひとネ。「月菓子」の餡のことまで知ってる人、少ない。シャン・イー出身みたいに詳しいアルね。」

「料理やお菓子に興味があるので。「肉包み」と「肉半月」は自分でなんとか作ったけど、そのうち「月菓子」にも挑戦してみたいですね。」

「ふるさとのお菓子や料理、広まるのは嬉しいことネ。今度はもっといろいろシャン・イーの食材、持ってくるヨ。」


突飛なものを持って来てもらっても困るので、ごく普通の中華材料…いや、ごく普通のシャン・イー料理の材料でとお願いした。そのなかで、僕は特にキクラゲ…(こちらではモクキノコという)をお願いした。

オリバー商会にもなかったので。


「モクキノコを欲しがるなんて、ツウね。もしやシャン・イー麺も食べるヒト?」

シャン・イー麺とはラーメンのことだ。


「大好物です。かんすいが欲しくて、山に原料を採りにいったくらい。」

「スゴイ。本格的ね。」

商品の中に粉末かんすいもあるというので、それもわけてもらった。

「最近、ヴィルドではパスタが流行り。でもかんすい欲しがるヒトいるとは思わなカッタ。」

と苦笑していた。


意気投合しちゃった僕とリャンさんは、連絡先も交換した。僕は手紙をもらうとしたら、自宅でもいいが、この「トカゲの尻尾亭」か、冒険者ギルド、生産者ギルドあてにしてもらえばいい。


リャンさんも行商で動くので、この国ならば王都の商業ギルドが確実とのこと。あとはシャン・イーの商業ギルドか、エルフ国のカイエルン王国王都の商業ギルドなら連絡がつくだろうとのことだった。


旅する商人たちは、そうやってギルドに手紙や伝言を頼むやり方で、広範囲に連絡を取り合うのだ。


ライム商会くらい大きくなれば、独自の連絡網(たとえば簡易な通信ができる魔道具とか)を持っているが、そうでない場合は、リャンさんが言うように、各ギルドに手紙を託すこととなるらしい。


試食会は思いがけない出会いがあって、僕にとってはとても有意義なものになった。




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