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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
35/530

35 ポーションを作る

変異種のワイバーンを倒して、僕はエナジードリンクの必要性を感じていた。

最初のバレットがもっと威力があれば、斧まで振り回さずとも倒せたのではないか。あるいは風魔法のかまいたちが決まっていれば…。

だがあのときは畑仕事で魔力やら水やらのシャワーをして、結構疲れていた。MPはマンタンではなかった。


ポーションと呼ばれるエナジードリンクがあれば、ある程度疲れていても、魔力を復活させてすぐに100パーセントの力で戦える、はず。

それに、魔力不足状態でもし怪我でもしていたらと思うと、胃のところがヒヤリとする。

だから今日は、本格的にポーション作りに挑戦だ。


洞窟前の広場に大量に生えている可憐な雑草。それがメルティアだ。

かすかにいい匂いがするので、これまで寝床に敷いていたのだが、シンハが時折つまみ食いもしていた。

寝床の草を食べるなんてと思っていたら

『これは万能薬になる草だ。腹痛、解熱、痛み止め。ちょっとの病も、この草があれば治せるぞ。疲れたときにも有効だ。元気が出る。』


鑑定してみると

「メルティア…万能薬草。魔力や体力を回復させ、痛み止めや解熱、腹痛にも効く。」

とここまではすでに知っている。さらにじっと見ると、

「精製すればエリクサーの材料ともなる。」

とでた!

「えりくさー?」

エリクサーを調べると、

「エリクサー…万能薬。失われた手足も生え、失われつつある命も心臓が止まって三分以内なら取り戻せる。」

とでた!どうやら『鑑定』は育つほど詳しくわかるらしい。

「げ、まじですか!」

それをたくさん生えているからと、寝床の材料にしていた僕が馬鹿でした。

と思ったら

『まあ、結構どこにでもあるからな。ただしこの森の日だまりなら、という条件だが。』

という。


『寝床にするのはいい考えだと俺は思ったぞ。淡い香りで幾分元気になれるしな。』

とさりげなくフォローされてしまった。シンハさん、さすが。大人です。

「生育条件は?」

『魔素が濃くないとダメだし、妖精がいるくらいの澄んだ魔素のところでないと育たない。淀んだ魔素のあるところでは育たないから、ダンジョンにはない。人間のいる町場近くにもめったに生えないな。』

とのこと。

「なるほど。神獣サマのいるくらいのところでないとダメか。」

『まあ、そういうことだ。』

とやたら胸を張る。えらそうに。

「ふうん。」

と言っておく。


「で、エキスを抽出してポーションを作ることはできるの?」

ポーションは水薬。体力回復や簡単な傷治しのお薬だ。

『もちろんだ。お前なら出来るだろう。やってみろ。』

ということで。サキ君の3分くっきんぐ~♪


「えーと、まず、お鍋に綺麗な水を用意しまーす。」

汲みたての湧き水を用意。念のためクリーンをかけておく。

「それから、刈り取ったメルティアをクリーン魔法で綺麗にしてから、鍋の水に浸しまーす。この小鍋なら2、3本だったよね。」

『ああ。そうだ。』

このとき、クリーンを使わないなら、丁寧に水洗いしてもいい。だが薬効成分が抜けやすいので、クリーン魔法がおすすめだそうだ。

「それから鍋を火に掛け、ゆっくり加熱。沸騰したら水をつぎ足しながらさらに一煮立ち。それを漉して、緑色の澄んだ液体になれば、基本ポーションのできあがりぃ!」

実に簡単だ。

この基本ポーション、『中級ポーション』と鑑定さんは言っている。

中級?基本だから下級ではないの?と一瞬思ったが、まあいいか。


さらにその澄んだ緑色のお湯に他の材料を加えていくと、傷を治癒し、HPもMPも一挙に回復する『上級ポーション』になるらしいが、まずは基本ポーション作りをマスターする。


できた綺麗な緑色の飲み薬は、亜空間収納内で作ったガラス製のこじゃれた小瓶に詰めてみた。

「おお。まるで異世界の薬師みたいじゃんか。」

と自己満足。カットガラスに緑色が透けて見えて、プリズムみたいになかなか綺麗だ。

小瓶の蓋はコルク樫のような樹皮が分厚く剥けて柔らかい木をシンハに教えてもらって作った。まさに異世界のコルクだった。クルットという木らしい。


基本ポーションに魔力を加えると効能が増すらしいので、込める魔力を調整して何本か試してみた。

軽く魔力を込めると

『上級ポーション』になった。

そして、結構魔力を込めたら

『エリクサー』。

できてしまった。マボロシのお薬がっ!

澄んだ青い色の水薬です。

最初から僕の魔力だけで作った「魔素水」で作るともっと簡単でした。


ガラスの小瓶もなにやらきらきらして。

『特製薬瓶。非常に頑丈で壊れにくく、薬効も逃がさない。エリクサーに最適。』

だそうだ。瓶底にはいつの間にか魔法陣まで刻んであった。…もう、どうでもいい。

「ねえ、上級のお薬ってさ、基本ポーションにいろいろと珍しい材料を入れてつくるんじゃなかったっけ?」

『普通はそうだな…。』

とシンハが重々しく言って…目をそらされた。

匙を投げられたということか。


『まったく。お前は非常識すぎる。規格外だ。お前の魔素水と魔力、それにメルティアだけでエリクサーだと!?そんなとんでもないポーション、誰にも教えるんじゃ無いぞ!』

と叱られた。うええ。なんでえ。


「うう。でも、誰か死にそうな人がいたら、きっと使うよ。絶対。だって使わないで目の前で死なれたら、あとで絶対後悔するもん。」

『もん、じゃない。まったく。とにかく、使う時は注意しろ。めったに他人に見せるんじゃ無いぞ。』

「でももう妖精さんたちには見られたと思うよ。」


特に緑妖精グリューネなんかは、さっきから楽しそうに手伝ってくれてたしなあ。

シンハの言葉に、グリューネはびくっとして僕の後ろに隠れた。

『うう。まあ、このあたりの妖精なら致し方ない。お前の敵にはならんだろ。』

「だってさ。よかったね。」

とグリューネに声を掛けるとようやくほっとしたのか、いつもの口調で

「あっぶねー。驚いた。王様に俺が叱られたのかと思った。」

と言った。

『こほん。まあ、この際だから言っておくが、グリューネ。お前は落ち着きがなさ過ぎる。それとなんだかいつも偉そうだ。少し謙虚になれ。』

「は、はいぃ!」



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