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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第五章 春の嵐編
343/529

343 首輪の情報と辺境伯邸での慰労会 1

東門の詰所からの帰り道。

「僕がもっと周囲に注意して運べばよかったですね。あるいはギルドの牢に入れちゃうとか。なんか隊長に悪いことしちゃった。」

とつぶやくと

「サキ。お前までそんな責任を感じることはない。それこそ気にするな。」

とギルド長。

「そうですよ。あんなに大活躍したのに。しかも、首輪は回収できたのですから、大手柄です。」

とカークさん。

「…。でも、僕がたとえば牢に入れる時に、結界石でもあいつに持たせておけば防げたと思うと、ちょっと残念。」

というと

「捕まえた捕虜しかも魔獣に、結界なんて普通張らねえよ。気にすんな。」

まあ、確かに。

「ケネスも運が悪かっただけだ。あとは俺に任せておけ。ちゃんとあいつの功績をいっぱい並べて、無罪放免にしてやっから。なっ!」

今日ほどギルド長が頼もしく見えたことはない。

「よろしくお願いします!」


ギルド長たちとひとまず別れ、家へと向かう。


それにしても、今回のエイプ捕獲の件、守備隊の隊員は知っていた者も多いし、多くの冒険者や騎士たちに、僕がエイプを連れて守備隊の人と地下牢に行くのは見られているから、犯人を割り出すのはかなり難しい。


さっきも言ったように、どこにでもいろんな間者がいる、ということだろう。

スタンピードが意図的に起こされたなら、なおさら、その成り行きを決死の覚悟で見守っていた奴がヴィルドに居た、ということも考えられる。

あるいは、牢で殺ってから、自分はテレポートとか、魔法で逃げるすべを持っていたとか?

いや、牢屋の前には違和感のある残存魔力は無かったから、少なくともそこからテレポートをしたとかいうわけではない。

まったくわからん。

いずれにせよ敵はかなり手強い、ということだ。


エイプの首輪はすでにギルドに提出した訳だが、首輪についていた黒い石について、アカシックさんがすでに解析してくれている。僕がなんでも知っているのもよろしくないので、あえてまだ言っていないだけだ。

アカシックさんによると

『人工的に作成した呪いの魔石である。』

とのこと。

その作成方法および用途は?

と尋ねると、

『この魔石の場合は、別のエイプ5体を贄とし、古代黒魔術で作成している。この魔石をエイプが身につけると、エイプの能力が一段階すべてあがり、知能も上がる。つまり、能力が強化された変異種となる魔石である。ただし、魔力消費が激しいため、72時間の装着が限度。許容時間を越えると、身につけたエイプは狂死すると見られる。』

とのこと。

つまり、時間制限のあるブースターということだ。


魔法陣は隷属の魔法陣というだけでなく、こちらにもエイプの知能引き上げと、複雑な黒魔術が掛けられていた。

アカシックさんによると、ある条件下で自死するとか、こういう場合は敵を吹き矢で攻撃するなど、戦闘に関するプログラムを練り込んでいたようだ。

つまり、エイプは有能な戦闘兵であり、かつ、将兵として、魔獣たちを誘導していたと考えられるのだ。


知れば知るほど、敵は、本当に恐ろしい黒魔術師である。


『おい。』

「うん?」

『俺の存在を忘れているな。』

「?忘れてないけど?」

『俺の嗅覚を、忘れていると言いたいのだ。』

「!そっか!」

確かに。シンハなら、エイプを殺した犯人のことを、匂いで追跡できる!


『期待させておいて悪いが、犯人は牢屋前まで徒歩でやってきたが、牢屋の区画を出たところでテレポートしたようだ。匂いがふっつり消えていた。』

「えー。」

『だが、もう一度、俺の前に現れたら、それははっきり犯人だとわかる。もしまだヴィルドに居るなら、どこかで出くわすかもしれん。期待しないで待っているしかないだろう。』

「なるほど…。仕方ないか。でも、手がかりが一つだけではないというのは、朗報だね。ありがとう。」


『それより、小腹が空いたぞ。』

とフェンリル様からクレームが。

「ああ、ごめん。もうお昼も過ぎてたね。屋台飯でも買ってく?シルルにも買っていこう。串焼きをいろいろ。」

『ああ。俺は肉ならなんでもいいぞ。』

カバンを覗くと、まだスーリアはくうくうと心地よさげに眠って居た。

それを見ただけでちょっといやかなり癒やされた。


家に戻ると、留守番をしていたシルルとも一緒に軽い食事を終え、シンハやスーリアと1階の大きなお風呂で遊んだりして癒しの時間を堪能し、心のバランスをとっていると、ギルドから使いの人がやってきた。


ギルド長からの伝言で、コーネリア様と面会することになったから、来いと。

時間は本日夕方17時より。夕食をともに、とのこと。メンバーは僕とギルド長、そしてカークさん。もちろん僕には、シンハと新しい「ワイバーンの子」も同伴するように、とのオーダーだった。ケネス隊長は沙汰が出るまでは同席は遠慮するらしいので、守備隊は不参加らしい。


コーネリア様とすれば、ケネスさんやAランク冒険者のエセルさんら主要メンバーとも、にぎやかに打ち上げをしたかったのだろうに。返す返すも残念だ。犯人め。何してくれてるのさ。

僕は一応アラクネ布製の上品な準礼服(この間とは違うやつ。アラクネさん達が複数作ってくれたんだ。)を着て、登城する。

すぐに食堂へと通された。


「スタンピードの始末、ご苦労であった。ギルド長はろくに寝ておらぬのではないか?」

「いえ、大丈夫です。」

「忙しいところ呼びつけてすまんのう。報告書はさきほど読ませてもらった。エイプの件も口頭で聞いた。あれは公式には書かぬほうがいい案件だからの。だがまあせっかく生け捕りにしたのに、残念じゃったの。」

「そのことで、ケネス隊長が酷く責任を感じてしまって、この席も遠慮すると。私としては、彼は対スタンピードの立役者の一人ですので、あまり気にして欲しくはないのですが。」

とギルド長。

「うむ。あやつは責任感が強いからの。で、そのエイプを捉えたサキは、どう思っておるのじゃ?」

「え、僕ですか?僕もエイプの件はケネス隊長には気にしないでもらいたいです。こう言ってはなんですが、たかが魔獣1匹のこと。今回は1万以上を皆で屠ったわけですからね。」

「そうじゃな。そなたは残り2万をひとりで殲滅したしのう。最後には古代龍まで、のう。」

と目を細めて笑う。

「はは…。」


うっく。数を出したのはやぶへびだったかな。

「ということで、ケネスには、あれは公式には残らぬ案件ゆえ、構い無し。気にするなと、ギルド長から伝えておいてくりゃれ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「魔法陣は、いかがでしたか?」

とカークさん。

「首輪のか。古代の黒魔術じゃな。だが、クセが強くてな。少し時間がかかりそうじゃ。」

「そうですか。ケリスも同じ事を言っていました。」

「そうか…。魔法陣もそうじゃが、なんじゃ?あの魔石は。恐ろしいのう。サキ。」

「…。」

どうして僕に話題を振るかなあ。




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