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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
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319 「トカゲの尻尾亭」開店!&推薦状

ユリアとようやくデートできた翌々日。

「トカゲの尻尾亭」は、無事、オープンした。

最初の晩は、開店祝いで宴会となり、テッドさんやギルド長一家、もちろんサリエル先生、そして今後ライバルになるはずの、マーサさんも来てくれて、賑やかなオープニングパーティーとなった。


その後も主にダンジョンで獲れた魚介類を中心としたメニューがうけて、真冬でも食堂は昼も賑わい、宿泊客も、従魔連れを中心に、それなりに入っている。順調な滑り出しだった。

そして、場所柄、北門の守備隊とか、冒険者連中とかがたまり場にしはじめちゃったので、せっかくユリアとの食事場所にしようと思っていたのに、行くことが難しくなっちゃったよう。


僕は、冬で討伐依頼も少ないので、サリエル先生の治癒院を毎日のように手伝っている。その時は、午後2時から3時までの1時間、休暇を貰って、ユーリに魔法の基礎を教えている。

宿の仕事も忙しいが、その時間ならなんとかユーリもお昼を食べて僕のレッスンを受けることができるからだ。

僕の都合で、特に春からは不定期になるけれど、仕方が無い。

ユーリは魔力の循環を毎日続けていたおかげで、それなりに魔力が安定してきた。


ユーリの特性は光と水、そして生活魔法より少し強い程度の火と風。そして空間魔法。複数の属性を、今ではどれも初級程度はできるようになった。一番うれしいのは、光魔法から聖魔法が芽生えたこと。ヒールを、他の人にも使うことができるようになったのだ。

これは本人もとても喜んだ。


僕は冬のうちに、ユーリにはなるべくいろいろと教えておく予定だ。

魔術の基礎だけでなく、僕はユーリに護身術も教えている。

少ない力で、オトナも転がすことができるし、痴漢とかに攫われそうになっても、素早く逃げられるように。

もちろん、彼には物理・魔法防御の結界と、毒と呪いが効かないペンダントを持たせている。


基礎を僕から教わった後は、教会で行っている、子供達への勉強サークル(寺子屋とか小学校みたいなもの)に参加するのもいいだろう。

ユーリはすでに簡単な読み書きと計算ができるから、特に勉強サークルで困ることもないだろう。

教会なら、治癒魔法が使える子は大歓迎のはずだ。(無理に勧誘しないように、レビエント枢機卿に言っておかなくちゃ。)

来年くらいからは、冒険者ギルドに見習いの登録をして、魔術師の訓練メニューを受けるのがいいだろう。特に治癒術師としての訓練は、カークさんが喜んで教えてくれるだろうし、ゆくゆくは、サリエル先生のところで、治癒術師見習いとして実践ということもできるだろう。

もちろん、このまま宿を継ぐとしても、いろいろ訓練して出来ることを増やしておくのは良いことだと、僕は思っている。


2月下旬。まだ寒い日が続くが、今日もサリエル先生のところでお手伝いの予定。

「おはようございまーす。」

入っていくと、

「おう。来たか。サキ、ちょっと。」

「?」

先生に呼ばれて診察室へ。


「これを書いた。」

と言って、一枚の魔羊皮紙に書いた文書を見せられた。

「え!?先生、これ。」

「ああ。遅くなってすまんな。お前の薬師および治癒術師としての腕を保証する推薦状だ。」

「!…」

「薬師は医者が書いた推薦状が結構有効だから、街なかに店も出せる。だが、治癒術師の推薦状は、教会の免状が幅を効かせているから、残念だがあまり効力はないだろう。ないよりはまし、程度だな。」

「そんなことないです!すっごくうれしいです。ありがとうございます!」

僕は深くお辞儀した。


薬師は、文字通り薬を作る人なのだが、必ずしも店を出しているわけではない。

僕も一応薬を作るから、薬師のはしくれだ。だが正式に名乗ることはできない。

正式な薬師の免許というものは、王都で国家試験を受けて合格しないといけないが、それは貴族に対して薬を調合したり、直接売る時のためのもので、受験料もそれなり高いらしい。


実はもうひとつの方法があって、偉い聖職者や正規の医者の推薦状があれば、店を出せるし、はっきりと薬師と名乗ってもよいことになっている。民間の薬師や薬屋は、圧倒的にこちらが多いそうだ。大抵はどこかの薬師に弟子入りして、何年もかけて修行し、ようやく推薦状を書いて貰えるらしい。


治癒術師の場合は、ほとんどが教会から免許を貰うので、あまり医師からの推薦状の効果はない。ないとは言っても、サリエル先生の推薦状なら、おそらく王都でも通用するし、貴族も配慮するだろう。それくらい、実はサリエル先生は、ご自身が思っている以上に名医と評判なのだ。


「でも、どうしたんですか?急に。」

「いや、以前から書こうと思っていたんだが、なんとなく機会を逸していただけだ。

実は、君がラルド侯爵領で、騎士達の呪いのかかった怪我を完全治癒させた話を、とある伝手から聞いた。そこの院長に、訴えられかけたこともな。

俺がぐうたらせずに、もっと早くこの推薦状を渡していれば、嫌な相手に怒鳴られずに済んだと思うと、心苦しくてな。すまんかった。」

「いえいえ。あれは院長さんとすれば、当然の怒りかと。でもちょっと驚きました。耳、早いですね。」

「ふふ。勘当されたとはいえ、俺も元貴族だからな。少しは情報が入ってくるのさ。」


きっとラルド侯爵から先生の実家のベルトン侯爵家の誰か経由でだろうな。もしかすると、あの騎士団長さんが、ものすごく感謝していたから、手を回してくれたに違いない。

「なるほど。…とにかく、ありがとうございます!正直、本当にうれしいです。先生に腕を認めて貰ったということなので。」

「安い依頼金で、こき使ってしまっているからな。これぐらいはさせてくれ。」

「ありがたく、頂戴します。」



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