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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
314/529

314 移築の翌日 二人の辺境伯の会話

移築イベントがあった翌日。


此処はヴィルディアス辺境伯邸。

昨日、ロンディーノ騎士団長が過去の記憶を取り戻し、ユーリと親子の名乗りをした。

それだけでも一大イベントだったのだが、さらに夜にはとんでもない移築イベントを目撃したユーゲント辺境伯たち。

昨夜、二人はそのままサキの屋敷に泊まったが、今日はヴィルディアス辺境伯邸に来て、ユーゲント辺境伯はコーネリアと今後の政治的な打ち合わせなどをした。

実の息子と一緒にいる時間が少ないロンディーノのために、今日は一日、ユーゲント辺境伯はコーネリア邸から出ず、打ち合わせの合間に、コーネリア自慢の庭園や温室を散策して過ごした。


ロンディーノは、主人からユーリと過ごせとは言われたものの、誘拐騒ぎがあったばかりの子を連れ回す訳にもいかず、ノッティア夫妻とユーリとともに教会へは一緒にいったものの、あとはノッティア一家の引っ越しを少し手伝っただけで、今日は早々にコーネリア邸に帰ってきてしまった。

まだ、実の息子とどう接して良いのかよくわからないというのが本音だった。

それでも、お互い歩み寄ろうとしていたし、ユーリはけなげで可愛くて、この子が息子で良かったと思えたから、それなりに満足だった。


「もっとゆっくりしてくれば良かったのに。」

と主人に言われたが、

「いえ。いいのです。急に父親と言われても、ユーリも戸惑うだけですから。」

と言葉少なに言った。


コーネリアとの夕食を終えて、辺境伯同士、コーネリア自慢のブランデーなどを舐めながら、お互い気さくにいろいろと話をしていた。

ロンディーノ騎士団長は、夕食はコーネリアの配慮で客分として一緒にとったが、食後は先に部屋へ戻って自由にしててよいと主人に言われ、あてがわれた客間で、主人を待ちながら、明日の帰宅準備をしているはずだ。

もちろん、この屋敷が、ユーゲント辺境伯にとって安全地帯であるからこそ、護衛である自分が主人から離れていられるのである。


ユーゲント辺境伯は、昨夜の移築イベントの話だけでなく、昨日、宿屋の子供だったユーリと騎士団長が、実は親子だったとわかった話も、昼間のうちにすでにコーネリアに話している。

そしてユーリの母親が、今は亡き帝国の皇女であったことも。


「それにしても、実に奇異なことであるのう。」

「ああ。本当に驚いたよ。君だからこうして普通に話しているけど、他では言えないことだからねえ。特にあの子の実の母親が誰かについては、ねえ。」

「うむ。大丈夫じゃ。わらわは口が堅いからの。その子…ユーリに危害が加わるようなことを誰かに言うつもりもない。それにしても…サキは行く先々で、とんでもない事に遭遇するのじゃな。」

「ふふ。世界樹の覚えめでたき者ゆえ、なにかと巻き込まれやすいのかも知れんな。」

「世界樹のお導きというやつかえ。」

「そうだな。」


ユーゲント辺境伯は、美味いブランデーをおかわりすると、さらに言葉を続けた。

「時に。サキ君のたぐいまれなる才を、野に埋もれさせるのは忍びないと思ってな。此度の壁修理の件をきっかけに、私の養子にどうかと提案しているのだが。」

「ほう。そなたの養子、とな?」

「ああ。だが、なかなか色よい返事をくれないのだ。まさか、同じことを考えていたのかな?そうではないだろう?」

「あ、ああ。養子にとは思ってはおらなんだ。」

「ふふ。婿養子か?」

「え!?い、いや…わらわはべつに…。」


「ふふ。顔を見ればわかる。そなたにとっても都合がいいだろう?婿養子にするにしても、サキ君に爵位があれば、余計な問題を生まずに済むし。」

「い、いや、だからどうしてそういうことになるのじゃ。わらわは別にサキとはそういう関係を望んでいるわけでは…。」

「ほう。では、いいのか?他の女性に奪われても。」

「う。」


「ふふ。若いな。コーネリア。気に入った()の子がいたら、さっさと名乗り出ておくべきだぞ。あいつはこれからますます、女性にも、男性にも、モテる気質だと私は思う。」

「うう…。」


コーネリアの反応を、ちょっと面白そうに眺めながらそういったが、急に真顔になって、ユーゲント辺境伯は続けた。

「君が恋に臆病になるのもわからないわけではない。お父上もなかなかに厳しいお方だしね。だがね。変化を恐れていては、機会を逸してしまうよ。あれは相当、希有な存在だ。」

「…。た、確かに希有な存在であることは承知している。」

「そうか。まあ、外野は一応黙るが。ああ、それと…彼は「おそらく」ハイエルフだ。」

「!まことかえ!?」

「ああ。私だけでなく、ハイエルフのロンディーノもそれを察した。サキ君自身は、これまで全く気づかなかったようだけどね。」

「…。」

「実は、詳しく言うと、さすがの私も、彼に関しては、ハイエルフと確定できたわけではないんだ。…ちょっと彼は特殊というか…精霊とか神とかに近い感じがしてね。」

「精霊…神…。」


「いずれにせよ、「ハイエルフに非常に近しい者」ではある。だから、寿命も相当長いだろう。君にとって、相手の寿命を気にしなくて良いという点で、少しは朗報だったかな?」

「確かに…。そうか…。ハイエルフに近いとな。なるほど。それでいろいろと…。」

「ああ。魔力もとんでもなく多いから、常識では計れないところがある。

もし養子の話を彼が本当に断ってきても、あんなすごい壁をひとりで作り直したんだ。私は自分が持っている爵位から、子爵位くらいは与えようと思っている。

最終的に、これは国王陛下がお決めになることだから、実質性のない名誉子爵くらいになるかもしれんが。

名誉子爵でも、君が婿養子にするには、十分だろう?」

「ルイズ。頼むから、もうその話題から離れてくりゃれ。」

「ふっふ。話が決まるなら、早めに教えてくれよ。万難を排して祝いに駆けつけるからね。」

「もう…勘弁してたも。」

「ふふ。」



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― 新着の感想 ―
[一言] 「誰もが貴族になりたいと思ってると思うなよー!絶対貴族にはなりたくない!!って考える人もいるんだぞーー!」と声を大にして辺境伯達に言いたい(;・∀・) 爵位を押し付けられてもただただ迷惑でし…
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