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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
306/530

306 事情聴取など

しばらくして、カークさんだけがやってきた。

彼が防音結界を張る。


「ところで、どうしてジャック・ド・フーパーがあやしいと?」

「此処に来る中間地点が、フーパー所有の空き家だったんです。地下に、大トンネルがあって、街の壁の地下を超えて通れたんですよ。」

「!それはまたすごいな。」

「おそらく、フーパーの父親の代に、掘ったものでしょう。堅牢なトンネルでした。それに、国境までの採掘坑跡。あそこもトンネルが復活していました。渓谷には新しい舟も。これはかなり前から計画されていたことです。」


「ちょっと待て。国境の…トンネル!?」

「はい。「また」父親にならって、奴隷売買をしようとしていたと、僕は考えます。」

「それがジャック・ド・フーパー。彼が首謀者だと。」

「はい。あれができるのは、秘密裏にトンネル工事をすすめることができて、相当な資金力がある人物。出来そうな人物は、ヴィルドに住んでいるか、拠点があって、資金力があって…となると、あとはレジさんか、領主様くらいしか思いつきませんが…。僕はヴィルド在住の貴族を全部把握している訳ではないし、まだ、確たる証拠はありません。でも、きっと数日のうちに、奴はボロをだしますよ。」


「…頭が痛くなってきた。サキ。君は何を何処まで知っているんだ?」

「僕が知っていることは、今言ったこと程度ですけど。細部はこれから話します。どうせ事情聴取があるんでしょ。」

と首をすくめる。

これでまた、僕の自由時間が削られるんだ。ちくせう。


僕は、エルフたちが仮設の避難所に無事に収まったところで、お役御免になるはずだった。だが、事情聴取があるから、どうせなら付き合えと言われ、領主の兵が見張る監獄まで一味を護送するのに付き合わされた。

やれやれと思ったら、さっそく事情聴取だ。

しかも、貴族がからみそうだということで、コーネリア様も立ち会いだそうで。

ほんと、あの時シルルを呼んで、朝ご飯をしっかり食べてて良かった。


昨夜、レカンと戦って勝ったことに、まず驚かれた。

「あいつはAランクだが、実力はSランクだぞ。素行が悪くてAに降格になったんだ。」

とギルド長が言った。

あら。Sでしたか。

Sランクが率いていたので、Cランクが多いが、「死の舞踏」はAランクパーティーだった。レカンが降格になっても、パーティーのほうはどうにかAのままだったらしい。

あの空き家のカラクリと外への秘密トンネルについて話し、さらに国境の渓谷まで通じるトンネルが復活していたということや、舟が用意されていた、ということに、カークさん以外にさらに驚かれ、危ないことをするな、と叱られた。


正式な事情聴取がひとまず終わり、辺境伯邸に招かれ、遅い昼食をご馳走になった。

「しかし…サキよ。そなたはなんというか…本当に…とんでもない奴よのう。」

「はあ。」

「確かに、なにも犯罪行為はしておらぬ。せいぜい空き家に侵入した程度か。それとて、賊を追ってのことゆえ、問題はない。そこは貴族の屋敷でもないしな。」

「はあ。」


「それにしても…領都の壁を通り抜けられる大トンネル、だと?わらわが知らなかったとは…ものすごくショックじゃ。」

「しかたありませんよ。ジャミング処理が施されていましたし。」

「じゃみんぐ…?」

「魔法による妨害です。索敵を狂わせるのが目的ですね。だから、相当近くに行かないと、そして、高度な魔法が使える者でないと、ほぼ気づかないでしょう。」

「なるほど。それをおぬしは簡単に見破った訳だ。」

「い、いえ。違います!シンハがにおいで。鼻で突き止めたんです!地面に、馬車のにおいが続いていると。」

「なるほどな。」

「そうでなければ、僕もわかりませんでした。…たしかに、奇妙な家だな、間取りが妙だとは思ったんですけどね。」


「間取りが?」

「はい。母屋は、窓もないまるで監禁部屋みたいなところがあって。変だなと。」

「…つまりそなたは、やろうと思えば、他人の家の間取りまで索敵できると。」

「え。あ。い、いえ!普段はそんなこと、しませんよ!絶対!信じてください。」


「ふふ。まあよい。信じる。とにかく、そなたは相当な魔術師だということはよおく、よおく、わかった。」

「はあ。」

「ふう。サキ。そなたは索敵や妨害魔法を、まるで魔法の初歩のように話すがの、索敵はシークに特有の、希有なスキルだ。皆が持っているわけではない。それから、妨害魔法…じゃみんぐ、と言ったか。それとて、実際使える魔術師は、限られている。とても高度な魔法で、古代魔法の一つじゃ。

そなたは、もっと魔法について、体系的に学ぶべきと思う。さすれば、自分が使える魔法が、いかに希有なものか、その価値があらためてわかるであろう。」

「…はい。」


「それと。魔法陣も描ける、と言っていたと思うが。」

「ええ。そうですね。」

「ふう…。魔法陣はな、中央の魔法学院を相当優秀な成績で卒業した者か、魔塔の者しか、描けない。」

「!そうなんですか?」

僕はきょとんとした。


「古代の魔法語がまだあまり解読できていないのじゃ。似たように描いても、発動しないこともある。」

「えーでも、ジオのダンジョンに、瞬間移動の魔法陣が、ありますよ。」

「発動した時の一瞬しか、見えぬ。」

「!え!?…帰還の魔法陣は、常時見えていましたけど…。」

「見える者と、見えない者がおるのじゃ。」

「!…そうなんですね。知らなかった。」


「サキ。」

「はい。」

「我が家の図書室は、面白いかえ?」

「はい!それはもう!知識の宝庫です!」

「…。トマスの話では、そなたはよく魔法の本を読んでいると。」

「はい!面白くて!」

「あれらのほとんどが、古代魔法語じゃ。」

「あーそうですねえ。!…まさかそれも…あまり読めるひとが、い・な・い?」

「その通りじゃ。」

さすがに僕はため息をついた。


「いったい誰に、古代魔法語を教えて貰ったのじゃ?」

「…それは…イエマセン。」

と言って、僕はシンハをチラリと見る。

「!まさか。シンハ殿かえ!?」

『違うな。俺がお前に教えたのは、大陸の人間が使う、人間語の綴りだけだ。』

と寝そべりながら、僕をちらりと見あげる。

『お前は勝手に読み解き始めた。』

「(はは…。そうだったね。)」

僕は苦笑い。

つまり、言語万能な能力は、世界樹様から賜ったもの。

言えない。それはさすがに、言えない…。


「なんとなく?いつのまにか?ですかねー。」

「ふむ。今はそういうことにしておこう。話してはくれなさそうじゃ。」

「…すみません。」

「よい。ただ、そなたは知らねばならぬ。そなたの常識と、世間の常識は、「相当に」ずれているということを。」

「…はい。」

「非常識な存在のわらわがそう思うのじゃ。それはよほどのことだと、認識すべきじゃな。特に、魔法についてはな。」

「…はい。肝に命じます。」

「ふふ。そう落ち込むでない。わらわは、うれしくもあるのじゃ。」

「?」



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