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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
30/529

30 パンをつくる 2

翌日。

今度はリンゴから天然酵母を作った。

これは天才・亜空間収納くんにがんばってもらう。

亜空間収納内で製作したガラスの瓶を煮沸し、クリーン魔法もかける。

それにきれいに洗って切ったリンゴを皮ごと入れて亜空間収納へ。

そこで「天然酵母~天然酵母~…」と唱えて数分。魔力で時短。これ異世界の常識。いや、僕だけの常識、なのかな?


案の定、シュワシュワと泡が出てきて、いい感じにできた。

うろ覚えの知識でよくやるな、と我ながら思う。

ちなみにこのままこれを続けると、たぶん果実酒ができる…はず。

だが今はとにかく天然酵母だ。

一応できたので、ここからは普通に作る。

強力粉に酵母を混ぜて発酵。また粉を足して発酵。

折るように混ぜて休ませて、を数回。適度に膨らんだところで、少し塩と、オリーブから絞った貴重なオリーブオイルを足して、ちぎって丸めて成形したものを、石板に乗せて竈で焼いた。


「僕って天才!」

また自分で褒める。

だって、本当に適当にやったのにパンができたんだもの!

ふわふわの白パンができた!中もぱさぱさしていない。やった!


『ほう。昔、王都で食べたパンよりやわらかくて美味い。』

とシンハからも高評価を得た。

「ありがとう!本当はミルクやバターを練り込んだりして作るともっと美味しいんだけどね。できたパンにもバターを塗ったりね。」

『む。バターか。なるほど。』

「シンハ、判るの?バター。」

『もちろんだ。昔人間と旅した時に、貴族の家では必ずバターがパンと一緒に出たからな。』

「そうなんだ。」


『あれはたしか羊の乳から作るんだったな。』

「ん?あれはふつうは牛の乳から作るんだよ。牛…ホルストックかな。」

『ホルストックの乳?…。ホルストックの乳は人族には毒だぞ。』

「え、そなの?」

どうやら異世界の牛の乳はあまりよろしくないようだ。


『ホルストックの乳はホルストックの子供以外が口にすると腹痛を起こすと聞いている。』

「へえ。そうなんだ。…じゃあ、バターはこの世界では羊の乳から作るの?」

『ああ。普通は羊だ。特に魔羊の乳は濃厚でクセもなく美味い。昔、俺がまだ小さいころ、母の乳の出が悪かった時に、魔羊から乳をもらったこともある。あれは美味かったな。』

「そうなんだ。…あ、あとチーズというものもできるね。」

『おお。チーズか。それも食べたことがある。独特の風味で、焼くととろけてなかなかに美味い。』

「そうそう!ああ。急に食べたくなった!」

『いいだろう。そのうち連れてきてやる。』

「え?魔羊を?」

『ああ。親交があるやつがいるからな。頼めば乳をわけてくれるだろう。』

「やった!楽しみにしてるねっ!」


僕はリンゴ酢も作った。

これは天然酵母を作った時、ふと思ったのだが、発酵が続けば、たしか酒を通り越して酢になるのではと。ということで、まず天然酵母を作る。さらにずーっと発酵させる。魔力とイメージを加えて時短。リンゴの酒・シードルができた。それからさらに発酵。やはりできた。綺麗なリンゴ酢が!


ブドウでも作った。これはバルサミコ酢!

あの!こじゃれたバルサミコ酢が!できたのだ!僕の亜空間収納君は本当に天才だ。もちろん途中の過程でワインもできた。

僕は現在、まだ12才くらいなので、お酒は飲まないが、料理用にお酒があるのはうれしい。

本当は米を見つけて、日本酒を作りたいのだ。だって、日本酒があれば、料理の味わいが格段に違ってくる!

シンハに相談したが、さすがに米は見たことがないという。

残念。


そのかわり、薄力粉にする軟質小麦と、この世界ではパンの材料として定番らしいライ麦、それと大麦を見つけてくれた。

これはますますレパートリーが増える。


薄力粉はケーキの材料だし、ライ麦ではプンパニッケルが作れる。(実は僕はこのちょっと酸っぱくて保存食のようなドイツパンが素朴で結構好きだった。)

それから、たしか大麦ってビールの原料だよね。

うん。でも今はまだ作らないけど。

それより大麦で作れるのは…麦芽糖!

甘味だ甘味だ!

さあ、亜空間収納君、がんばれー。


僕自身は実は作り方はよく判っていない。

万能鑑定さんもまだ不完全で、やたら詳しく教えてくれたり、そっけなかったりと不安定。なにか基準があるのかもしれないが。

麦芽糖については、大麦から作れる、としか教えてくれなかった。

だから魔力とイメージに頼る。

本当に亜空間収納君、優秀すぎ。

僕は「麦芽糖~麦芽糖~」

と念じていただけ。


案の定、数時間後にはできていたよ。

水飴が。

うれしい。すっごくうれしい。だってようやく甘いものだ。

もちろんこれまでも果実の甘さは味わっていたけれど。

水飴なんて懐かしい。


「シンハ。舐めてみる?」

『なんだ?…おお!甘い!』

「でしょ。これ、大麦からとったんだよ。」

作った麦芽糖はほんのわずか。

大量に得るには相応の大麦が必要だ。

鑑定さんによると、トウモロコシやジャガイモからもデンプンなのでとれるそうだ。

それにしても料理に使うには効率が悪い。

うーん。やはり本格的に砂糖は作らないといけないかな。


その後、鑑定さんからいろいろ知識を得た結果、ホルストックの乳もある一定期間以外なら、生乳でもおなかを下すことなくおいしく飲めることもわかった。一度加熱すれば、ほぼどの期間でも大丈夫ということも。

そこで魔羊だけでなく、牛…ホルストックの乳でもバターやチーズを作る計画だ。熱を加えずともクリーンをかければ安心ということもわかったので、一気に食生活は豊かになっていくだろう。そうなる日が楽しみだ。


造酒はあくまでも異世界での話です。お酒を造るのは、日本では法律で規制されていますのでご注意ください。

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