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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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29 塩とダイヤ。パンを作る 1

先日、塩の山からたっぷり採取した岩塩には、ダイヤモンドが混じっている。

そこで一旦湯に溶かして、アラクネ布で漉して精製して使っている。

精製したのでダイヤのジャリジャリ感はなくなり、溶かした湯をそのまま蒸発させて作るから、岩塩のミネラル分も損なわれずに美味い塩が手に入る。

シチューも美味い。


ダイヤの大きさはいろいろで、微細なものからそこそこの大きさまでさまざまだ。亜空間収納内では粒の大きさで仕分けして収納してある。今後大きいものはアクセサリーなどに使えるだろうし、微細なものはカッティングや研磨の道具として使えるからね。


「しかしどうして岩塩とダイヤが一緒なんだろね。」

塩を炊きながら、僕がつぶやいた。

『?』

「ああ、えっとね、たしかダイヤモンドはすっごく圧力のかかる地中奥深くでできるんだ。それに対して岩塩っていうのは、昔海だったところの地面が動いて、一部分が取り残されてしょっぱい湖になったりする。それがまた長い年月の間に沈んでしまって大地になったから塩分の多い岩になるんだよ。

つまり、普通はぜんぜんでき方が違うから、岩塩の中にダイヤモンドの粒があるというのは聞いたことないんだけど…。海底にダイヤがあったのかなあ…。」

僕はそう説明した。

まあ、ヒマラヤのような高い山にも岩塩があるらしいから、なにがどこにあってもおかしくはないが。


『なるほど。不思議だな。…そういえば、ダイヤモンドのからだをした魔物がいたことはあるらしい。』

「え!?」

思わず僕はシンハを見つめた。

『今は見かけたとは聞かないが、昔は相当な数がいたらしい。ゴーレムの一種で、鉱物でできているのだ。』

「なるほど。それなら、もしその魔物が何かの拍子に…たとえば他の魔物と戦って、負けて塩の湖に沈んだとする。それなら簡単に説明がつくね。」

『そうだな。』

「じゃあ、あの一番でかいダイヤって、もしかしてそいつの魔石だったかもね。」

『ありうる話しだ。』

「じゃあ、あの魔石の持ち主がダイヤモンドゴーレムのボスで、その傍にいっぱいダイヤモンドゴーレムが居て、一緒に滅びたなら、あの大量のダイヤモンドも説明がつくかな。」

『そうだな。あの魔石をちょっと出してみろ。』

「うん…。えっと…これ。」


『ふんふん。どうだ?魔力がこもっている気がするが。』

「ああ。確かに。僕以外の魔力がかすかに残ってる。鑑定すると、これには魔力が蓄積できるらしい。魔力を蓄えておけば、かなりいい感じにストックされそうだな。」

ということで、このでかいダイヤモンドは魔力蓄積用にすることにした。しばらく亜空間に寝かせておけば、僕の魔力に馴染むから、あとは時々取り出して、意図的にあまった魔力を流し込んで、溜めておくことにしよう。

ピンチの時に役立つかもしれない。

そんなふうに、僕は思った。


畑仕事は毎日真面目に行っている。

畑を耕す鍬は、エルダートレントの木を材料として、亜空間収納内で作った。刃の部分も木製だが、何故か鉄なみ、いやそれ以上にかなり頑丈だ。

斧もエルダートレント製。斧はさらに魔力で圧縮して硬化させたので、エルダートレントも切れる。

実は亜空間収納内で、土魔法を使って斧もどきも作ってみた。しかしやはり本物の斧のようにはいかず、エルダートレントどころか、普通の木もなかなか切れなかった。

やはり鍛冶仕事は必要だろう。

エルダートレントがいつも手に入るわけでもない。


畑の話に戻るが、この森は土にも魔素がたっぷり含まれていて、それが肥料になっているようだ。

堆積土も黒くて良好。特に肥料を加えずとも作物はできると鑑定さんが判断。

植える種はシンハと相談した。


ひととおり野菜は確保できるようになった。なにしろ10日で実るのだ。ありがたいことだ。

いろいろな作物を作るせいか、あるいは魔力が強い森であるがゆえか、畑の土が力を落とすことはなかった。

キュウリやナスもあったし、スイカまであった。

ちょっと実り方が違っていて、スイカが木にぶら下がっていたり、トウモロコシがふきのとうみたいに地面近くでできたりということはあったけれど、おおむねできた野菜は日本にいた時と同じように調理することができた。


特に調味料として重宝したのはニンニク。これをほんの少し隠し味にするとうまみが引き立つんだ。多くは使わない。シンハが敏感だからね。

果物も近くの木々からふんだんに採れる。

キノコ類もシイタケ、シメジ、マイタケ、マツタケが採れたので大丈夫。

だがこうなると、やはり炭水化物が欲しい。

米などと贅沢は言わないから、せめてパンを食べたい。


シンハに相談すると、小麦の群生地があるというので、案内してもらった。

僕はシンハのあとを追って必死で走る。

時折はのせてもらうけれど、こうして走ることで基礎体力強化をしている。

人間とは思えないほどシンハの全力にあわせて走れるようになってきた。

この世界の人間ならこれが普通なのだろうか。

だとすると、もしこの世界の人たちと地球人が戦争したら、絶対地球人は負けるだろう。


ぜーはーしつつも、なんとかシンハと一緒になるべく走るよう心がけた。

おかげで今まで行ったことのない西のほう数十キロのところにある小麦の群生地まで、どうにか半日で移動することができた!

そこは辺り一面、野生の小麦がたくさん生育していた。

発見した小麦は、硬質小麦と呼ばれるいわゆる強力粉タイプ。パンに適したものだ。うどんならコシの強いうどんになる!


「やった!これで安心してうどんとパンが作れる!」

少しだけ残して、さっそく大量に刈り取る。

そして洞窟前まで戻ると、僕はさっそく整地しておいたところに小麦畑を作る。僕とシンハが食べる分だけだし、たぶん小麦も10日で収穫できるだろうから、ひとまず10メートル四方の小麦畑にすることとした。

水に沈んだ種籾を畑に蒔く。


それから残りはさっそく亜空間収納内で乾燥させ、皮をはずし、粉にする。

まずはすぐにできるはずのうどん。塩と粉だけでできる。寝かせるのも忘れずに。

なるべく太さをそろえて切る。そしてゆでて。

「できた!」

汁は醤油も鰹節もないから、野菜と魔兎を骨ごと煮込んだコンソメスープでいただく。

「う、美味い!僕って天才!?」

と一人で自画自賛。


『ほう。「ウドン」というものをはじめて食べたが、なかなか美味いな。』

とシンハもぬるめにした魔兎肉入りコンソメスープのうどんを食べて感想をくれた。

そういえば「かんすい」ができるから、ラーメンも夢ではない!但し、醤油がないからモドキになっちゃうけど。それでもレパートリーは広がりそうだ。焼き豚も作って…ああ!食べたい!いやいや、何事も一歩ずつだ。


次はパンだ。

これも塩と粉に水を加えて、ねりねり。やはりこれも寝かせて。

ナンやピザ生地のようなぺたんこなものを焼く。

「できた!」

まだちゃんとパンではないが。

それでも知っているパンの匂いがしてうれしかった。


「ありがとう。シンハ。本当に。僕はお前に会えて良かったよ。」

僕は半分泣きながらそう言った。

パンで泣くなんて、と言うなかれ。

まだ僕はこの世界で人間に出会っていないんだ。

そういう環境で、自分で作った(実際は亜空間収納が作った)小麦粉からできたうどんやパンを食べている。

それが感動だった。



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