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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
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286 妖精達の働きぶり

僕は南に戻ると、予定していた通り、黙々と作業をした。

でも北の妖精達も気になる。

そこでその日の昼過ぎ、一度北に様子を見に行くことにした。

馬たちに聞こえないように、先に結界をしてと。


「シンハ、ちょっと北を見てくるから。此処で馬たちと馬車を守っていてくれるかな?」

たぶん嫌がるだろうと思ったが、案の定、

『俺はお前の用心棒だ。馬の用心棒ではない。』

と気高く言う。

「じゃあ、ロムルスとレムスが魔獣に食われたり、盗賊にどうにかされても、君は心が痛まないの?」

『う。』

「僕は自衛手段があるけど、彼らにはないんだよ。ちょっとの間だから。僕に何かあったら、すぐにシンハを召喚するから。ね。」

『…なにかあったら、すぐに俺を呼べよ。いいな。』

「了解!」


ということで、僕は北のさっきの場所に一人でテレポートした。

やはりすでにだれもいない。

壁は表も裏も、カンペキに修理されていた。さすがグラント。

さらに北の、丘にテレポート。まだ彼らはいない。

そして、この辺りでもなかなか見ないシロタエギクが、たくさんみられた。

たぶんこれは、グリューネがやったのだろう。


遠くから声が聞こえる。

「だから。壁はグラントに任せて、今のうちに俺たちはもっと帝国側に侵入してさ」

僕はすぐにテレポート。

「グリューネ。みんな。」

「あ、サキ。」

「サキ、聞いてよ。グリューネたら、壁はほっといて帝国側の調査にいきたいってわがまま言うのよ。」

「うん聞こえてた。」

「だってさあ、穴の位置確認なんて、すぐ終わるし。俺のできることあんましないんだもん。」

「グリューネ。君の考えはよくわかるよ。」

「そうだろ!サキもそう思うよな!だから今から帝国に行って」

「それはだめ。」

「え、なんでだよ。」

「僕がお願いしたのは、まず壁のこと。帝国のことはついで、って言ったはずだよ。」

「ちぇ。」


どうやらグリューネは、もっとワクワクするようなことをしたいらしい。

「グラント。」

僕は先にグラントに話を聞きに行った。

グラントはほかの土妖精たちも使って、黙々と壁直しをやっている。たしかに、土の1番くんがやっているのだから、グリューネたちの出番は少ない。

「グリューネたちに別のことをやらせても、壁のほうは大丈夫かな?」

「ばぶ!」

と自信満々。

「地面の雪や氷を溶かしたりしなくても平気?」

「ばぶ。ばぶぶ。」

「わかった。凍っていても、問題ないんだね。じゃあ、壁は全面的に君に任せるよ。魔力、欲しくなったらすぐに言ってね。」

「ばぶ!」


「グリューネ!トゥーリ!来てくれる?」

「?」

「今、グラントに状況を聞いたら、壁は土妖精達だけでできるって。だから、君たちには別の指令を出すよ。」

さすがにグリューネとトゥーリもぴしっとなる。


「まず、最初にお願いした壁穴の位置と大きさの確認は、真っ先にやること。そのあとでなんだけど。

このあたりだと…直した壁の、あそこに穴があるよね。そこに向かって、向こう側から難民…帝国の民なんだけど、食糧もなくて、故郷を捨てて必死でこちら側目指して来てる人たちがいるんだ。まず、そういう人たちがいるかどうか、調べてくれるかな。僕はそういう人を救いたい。だから、難民のひとたちが無事に通れるよう、道案内をしてほしい。」

「わかった!」


「ただし、その中には、悪い人もいて、情報を帝国に伝えるために潜り込んでくる奴もいる。スパイとか間諜っていうんだけど…そういう人は通したくないんだ。」

「なるほど。でも、それは俺たちにはわからないよ。」

「いや、君たちにしかわからないことがある。君たち妖精は、「わるい奴」とか、「一緒にはいたくないひと」ってわかるでしょ。」

「ああ。わかる。そういう奴って、黒い靄まみれなんだ。それで、俺たち気分が悪くなるんだ。」

「そうそう。瘴気を帯びてるのよね。」

「うん。人の職業まではわからなくとも、そういう奴はわかる。だから、そういう奴がいたら、こちら側の兵士に、教えてやってほしい。絶対、そういう奴は入れたくないんだ。どう?できそうかな。」

「わかった!まず、壁穴調べをする。それから、なんみんは穴まで案内する。そして、靄まみれの奴はチクる。」

「ふふ。そうそう。チクる。結構グリューネ、得意そうだ。」

「へへへ。まあねー。俺、黒い靄はしっかりわかるぜ!」

「あら、私だって!」

「じゃあ、適任だね。お願いね。兵士達には、「妖精が協力してくれる」と伝えておくよ。」

「「わかった!!」面白そう!」

まったく。


「とにかく、危ないことはしないでね。君たち妖精だって、矢とか剣とかに当たれば死んじゃうんだから。」

「わかった。気をつけるよ。」

とさすがにグリューネは真面目に言った。


それから僕は、穴近くにある茂みの兵士達のテントに行き、妖精達は人のまとう瘴気・黒い靄がわかること、彼らがそういう人を教えてくれることを説明した。もちろん、兵士は半信半疑だが、とにかく、難民を尋問する時、不思議なことが起きてもあわてないように、と伝えた。そして、いつも通りの難民調査はするように、お願いした。

一介の冒険者のいうことなんか、聞いてくれるかなとも思ったが、あの壁を見たり、幽霊が昇天するところを見たりしているので、一応僕の言葉を信じてくれた。


難民は、その日の午後、10人ほどやってきた。

その中にスパイが一人紛れ込んでいて、僕が言ったとおり、黒い靄が見えたことを、グリューネたちは兵士に伝えた。

どうやって伝えたかって?

グリューネがただちに緑のツタでぐるぐる巻きにして、「あくにん」と人間語で葉っぱに文字を焼いたものをつけて、兵士に差し出したんだ。

これならだれだって信じるよね。さすがなお二人でした。


夕方、グラント以外の土妖精の子たちには、お礼にエリアハイヒールと、魔力補強のお菓子をたっぷりあげて、眷属3人は馬車の後ろの部屋に招待し、優雅な食事とお風呂と睡眠を提供した。みんなすっごく喜んでくれた。

あすはサラも来るという。

そうしたら、またこの部屋に招待しよう。


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