表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
280/529

280 砦付近の壁修理

兵士達に礼を言われ、ミスリルの鎖は返してもらい、僕たちはまた壁チェックに戻る。

今度はロムルスに乗り、かっぽかっぽとゆっくり移動しながら、職人達のいる仮小屋に到着。

職人達は、兵士に守られながら、仮小屋の近くの壁を、修理していた。

「おい!もっと右だ。左じゃねえ。…そう、その石だ!」

とカペラス親方が指示していた。


「どうも。」

「おう。サキか。なんだか向こうの方が騒がしかったな。」

「はい。間諜が潜り込もうとして。でも無事に拘束しました。」

「そうかい。物騒だな。」

「そうですね。…ところで、今後の仕事分担なんですが。」

「おう。ちょっと中で話そうか。」

あとの指示をサブリーダー的な人に任せて、親方は僕たちを仮小屋に案内した。

小屋ではあるが、ちゃんと丸太を組んだログハウスで、兵士達のテントとは違っていた。さすが職人達だ。


「わあ。凄いな。此処なら普通に暮らせますね。」

「まあな。職人の意地ってやつよ。それでいて簡単に解体もできるスグレモノよ。」

「そうなんですね。木の香りがして、いいですね。」

僕もこういうのって、好きだなあと思い、つい細部を見たくなる。

「…で、明日からの分担だったな。」

暖炉に火を入れてくれていた親方が、言った。

「あ、はい。」

いかんいかん。仕事仕事。


「昨日のお前さんのワザを見ると、こちとら気が抜けちまうけどよ。おそらく、お前さんは誰かと組むより、一人で、魔法でやったほうが早えだろう。」

「まあ、そうですね。」

一緒にやるのも楽しいけど、今は非常時。早く壁修理をしなくてはならない。


「ところで、向こう側の修理は、どうやっているんですか?」

「ほぼできねえな。危なくてよ。」

「あー、やはり。」

「今回の修理は、すべてこっち側でしかできねえ。俺たちだって、向こう側もやりてえよ。だがな、結構あっち側には敵兵が来てるんだ。上の修理だけでも命がけ。向こう側は諦めて、こっち側を分厚くするしかねえのが現状だあな。」

「なるほど。」

「まさかお前さん、あっち側をやるとか言い出すなよ。頼むから。」

「どうしてです?」


あちゃー、いらんこと言ったというように、親方は右の掌で自分の額を叩き、それからため息をついた。

「おめえさんが優秀な魔術師だっつう事は、昨日やおとついの夜のことでよおくわかった。だがな。そんなあぶねえ事、坊主に頼めるわけがねえ。そうだろ?」

「危なくなければいいんですよね。」

「どういうことだ?」


僕は親方に考えていることを説明した。

「僕は透視ができます。昨日でおわかりだと思いますが、砦は見えないところもちゃんと修復しました。それは透視して、クラックとか岩ブロックの交換が必要かとかをチェックして、行なっています。壁はもっと簡単です。距離は長いけど、造りは砦よりはるかに単純ですから。」

「まあ…それはそうだが。」

「じゃあ、僕は向こう側中心に修理するということで、よろしいでしょうか。もちろん、向こう側には絶対に行きませんよ。すべてこちら側からします。あ、あと、内部のクラックも修理しますね。」

と言うと、はあーっと大きくため息をついた。


「なるほどなあ。ゲン爺がおめえさんを弟子にした訳が、少しわかった。」

とぶつぶつ言っている。

「じゃあ、まず向こう側と内部をやって、余力があったら、僕もこちら側をやるということで、いいですかね。」

「こっち側もやるってか!おいおい、それはさすがにオーバーワークだ。良しとは言えねえな。」

「とにかく、一通り、やってみますね。始めに砦周辺をと、辺境伯様にも言われてきていますので、右つまり北に5キロメル、左つまり南に5キロメル、こちら側の表面以外をやってみます。」

と自分で範囲を決めた。


「それでどれくらいの時間でできるかで、全部の壁がどれくらいかかるか、わかりますので。」

と言ってみた。

「あ、向こう側の壁は、砦同様、ツルツルにしてもいいんですよね。」

「ツルツル…か、そりゃあ、敵兵が登りにくいのが一番だ。だが、無理はするなよ。」

「わかりました。」

親方は首を横に振りながら

「…まあ、ヤメロと言ってもやりそうだな。せいぜいぶっ倒れないようにしてくれよ。俺はそれだけが心配だ。」

「休みながらぼちぼちやっていきますよ。」

と笑顔で言った。


シンハはもう何も言わない。

どうせ言っても、僕はきかないだろうとわかっているからだろう。

「なにかアドバイスはないの?シンハ。」

『…。倒れるなよ。それだけだ。』

「わかった。その代わり、周辺の警備は、お願いね。馬たちもいるからさ。」

『承知した。』


さて、まずは材料の調達だ。

岩ブロックは砦脇とか職人の仮小屋近くに、小山のように積んである。

それだけでなく、あちこちに小さな防壁を築いたようで、半ば地面に埋もれた岩ブロックもあるから、総数はかなりだろう。

合計10キロメルなら、これだけあれば一応足りるだろう。だが、もちろん壁全部を修理するには全然足りない。


このあたりのことを親方に聞いたら、一応5キロごとに岩ブロックは運ばれて山になっているそうだ。長年修理を続けてきたので、常に修理用の岩ブロックが不足しないように、平時でも運ばれてきているらしい。時にはその岩の小山が、入り込んだ敵から味方を守る障害物になってくれることもあって、常に置いてあるらしい。場所によっては、小さな低い壁に組み上げられていて、仮設の防衛拠点になっていたりもするらしい。なるほどね。

それなら材料の心配はひとまずしなくていいだろう。


「じゃあ、まずは砦に繋がる部分だな。」

このあたりは分厚く作ってあるし、左右の壁に登られて、壁の上から砦が攻められても防衛できるよう、壁は一方向だけでなく、立体的な台形のようになっていた。

「じゃ、まずは左半分ね。行くよ。イ・ハロヌ・セクエトー。トレース。岩ブロックチェンジ!そしてヒール!」

ここは壁が翼のように飛び出ているから、裏面をツルツルにする必要はない。

次に、この翼に接している壁だ。ここは向こう側が帝国側になる。

「トレース!ブロックチェンジ!ヒール!」

それから敵側つまり壁の向こう側をツルツルにするため

「グラインド!」

岩壁を研磨して仕上げた。


透視で確認する。

「うん。よし!ああ、ついでに空堀も整備しておくか。ディグ!」

僕は空堀も簡単に深く掘っておいた。

「ふむ。こんな感じでいくと…そうだなあ。グラインドしても、消費した魔力量は…、たいしたことはないな。しんどくなったら、グラントに手伝ってもらってもいいな。」

と独り言。


同じく右側も、翼と壁を同様に施工する。

これも問題なくできた。むしろ、慣れたせいか、左より簡単にできた感じだ。

「じゃあ、こんな感じで、まずは200メル…いや、300メルくらいずつ区切って、このまま右をやってみるかな。」

さっきの翼部分だけで片方100メル以上はある。それを4ヶ所終了した感じだ。

まだポーションで補充しなくとも、あと数回は楽勝で出来そうだ。

「トレース、チェンジ!ヒール!グラインド!ついでにディグ!」

慣れれば、立て続けに唱えても出来そうだ。

そうやって、右の壁1キロメルを、15分もかからずに終わらせた。

むしろ、移動時間のほうがかかる感じさえする。

3度もやれば、いちいち馬から降りるのも面倒になり、あとは馬上から魔法を使っていた。

そして、魔法を使えば使うほど、効率よくできるようになり、かつ精度は上がっていった。最初は300メルでと思ったが、数度やれば、400メルごと、いや、500メルごとでもいいか、と思う。


「ふう。これで5キロかな。」

時間を見ると、約1時間。

「なんだ。結構楽勝じゃん。」

そう言いながら、馬上で栄養ドリンク・エリクサーを飲んだ。疲れたからというより、喉が渇いたからだ。

夢中でやっていたからか、寒さも感じない。

「じゃ、次、左に行くか。」

ぱかぱかと馬で戻り、今度は左へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ