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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
263/529

263 ユーゲント辺境伯

ギルドに到着すると、すぐにギルド長の部屋に呼ばれた。

「これから謁見だ。すぐに出られるか?」

なんと!

「この格好でよければ。」

「かまわん。あ、その大きなカバンは置いて…いや、むやみに開けるなよ。マジックバッグなのだろ?」

というので、

「であれば。」

と、でかい肩掛けリュックカバンをこじゃれた小さな蛇革ポーチに替えておく。

「これでいいですかね。」

「お、おう。上等だ。行くぞ。」

とギルド前にすでに用意されていた馬車に乗って出発した。


そして、数十分後には、馬車は壮麗な辺境伯邸の門を潜っていた。

そしてさらに数分後。

僕とシンハとシルルは、ユーゲント辺境伯と対面していた。

応接室に通されるまでに、辺境伯邸をチラ見した限りでは、この建物はエルフ様式とでも言おうか。人間族の建てる城に、エルフの伝統を組み込んだものらしく、あちこちに自然を感じさせるモチーフ…葉っぱとか、太陽とか星とか月とか…そういう自然のものがモチーフとして取り入れられていた。

そして高い天井を支えるヴォールトや柱は、アールヌーボー調にも見える唐草の絡まりが表されていた。此処だけ、建築の歴史が違っているかのようだ。

ああ、ゆっくり見学したい!

でも今日は無理だろう。


目の前の辺境伯は、いかにもエルフですという感じの方で、見た目は20代の若者。緑がかった金色の長い髪に、目も緑。ほんと、美しゅうございますです。

でも当代になってから、すでに50年、統治しておられるらしい。

ということは、30年前の、帝国との戦争も経験済み、幾多の小競り合いも経験済みということだ。

優しそうに見えるけど、きっと策士だ。

でも、コーネリア様が信頼しているから、きっといい人だ。

妖精だって、たくさんいるし。


それに、ここでもまた、辺境伯を見て、はっとした。またリィン!とベルが鳴った気がする。ナニコレ?

さらにもう一回リィン!があった。辺境伯にお会いする直前。

それは、部屋の入り口で護衛している、騎士団長を見た時だ。

ドーシテ?

本当になんなのだろう…。

アカシックさんに聞いたが

「回答不能」以外言ってくれない。

僕の固有スキルだろうか。

それとも何か世界樹関連事項??

エルフで第1騎士団長らしいけど…かなりの魔力量のようだ。

僕をなぜかじーっと見て。それからシンハを見て、さすがにぎょっとしたようだった。


「よく来たね。待っていたよ。」

と辺境伯に気さくに話しかけられた。

「お会いできて光栄です。」

と貴族風の挨拶をすると、

「うん。僕も。会いたかった。でもフェンリル様同伴とは。驚いた。」

「シンハと言います。森で僕を助けてくれて、仲良くなりました。僕の師匠で、かつ相棒です。でもどうかフェンリルということは、広めないでいただきたく思います。」

「うむ。」

「それからこちらがシルルと言います。彼女は…その。」

「うん。シルルちゃんもようこそ。会えてうれしいよ。」

「こんにちは、でしゅ!」

ふふっと伯爵は笑顔になり、それから、戸口に控えている騎士団長…ロンディーノアウグスト・ラ・シャッセトリクムーン第1騎士団長と、執事長のエドモンド・カトリスさん(人間族)を紹介された。


「かけたまえ。」

と僕たちに椅子を勧めた。

シルルが妖精だとわかったようだが、ギルド長の手前、口を濁した僕を気遣ってくれたのだ。ギルド長には親戚の子と言ったからな。

「それにしても君はずいぶんと…妖精達に大人気だねえ。」

と言われた。

シルルのこと?いや、それだけではなかった。ふと見ると、どこから集まったのか、つぶつぶの妖精の子たちがいっぱい、この部屋の中を飛んでいて、僕に触れてはきゃっきゃとはしゃいでいた。


「あー。まあ。街なかではここまでではないのですが。このお屋敷が、特別だと思います。」

妖精の子たちが、ギルド長にも見えているようで。

「たしかに。いつにも増して凄いな。」

「ふふ。今日は気分がいいから、僕の専属の妖精も呼ぼう。サラ、おいで。」

そう言うと、女性の姿をした緑妖精がふわりと現れて、辺境伯の肩に止まった。

大きさは掌サイズ。グリューネたちと同じだ。

「これはサラ様!お久しぶりです!」

とギルド長は立ち上がって挨拶した。

「ごきげんよう。」

と妖精サラは優雅に会釈した。高位の妖精なのだろうな。


「おや。サキ君は驚かないね。」

「え?いや、驚いています。妖精と契約しておられる方にお会いするのは初めてなので。」

「とか言って、君も契約者だろ?」

「え、ええ。まあ。」

つまり呼び出せと。

サラも期待している感じ?

「えと。サラさんと少しお話させてもらっていいですか?」

「いいよ。どうぞ。…サラ、彼が君と話したいって。」

後半は綺麗な妖精語だった。

サラはうれしそうに僕のところに飛んできた。


「初めまして。僕はサキ。よろしくね。」

「よろしく。」

「君は緑妖精だよね。グリューネは知っているよね?」

「!ええ!呼び出せるの!?うれしいわ!あ、でも、もしできれば、火妖精のトゥーリにも会いたいわぁ。」

「友達?」

「ええ!ここに来てから、森には行っていないから。会いたいの。」

「わかった。トゥーリは僕と契約していないけど、きっと来てくれると思うよ。声を掛けてみるね。」

「ありがとう!」


ということで、

「(グリューネ!今、僕のところに来れる?)」

「(行けるよー。)」

「(トゥーリも呼べるかな?君たちの懐かしいお友達が、会いたがっているんだ。)」

「(え?俺たちのダチだって?だれだろ。)」

「(それは会ってのお楽しみ。二人で来れるかな?)」

「(サラマンダ様のご許可があれば。)」

「(サラマンダ、いいよね。)」

と声を掛けると、魔力の中から

「クエー。」

と声がした。OKらしい。


「(グリューネ、トゥーリ、召喚!)」

ぴかーっと光って、グリューネとトゥーリが目の前に現れた。

「サキ!おひさ!アレ?此処どこ?」

「サキ。私をご指名?高いわよーって。たしかに。此処は見覚えがないわ。」

きょろきょろするグリューネとトゥーリ。

「トゥーリ!会いたかった!」

とサラがトゥーリにしがみつく。

「え!?もしかして、サラ!?なつかしい!」

「元気だった?」

「もち!サラも?」

「ええ!みんなも元気?」

「元気元気!」

ときゃあきゃあと女子トーク。


「あのー。サラ。オレもいるんだけど。」

「あ、グリューネ。懐かしいわ。元気?相変わらずね。トゥーリとはもう結婚した?それともまだなの?」

「え!?ええ!?えと…ええ!?」

「もう!サラったらあ。いやん。」

あははー。


辺境伯は涙が出るほど笑っているし、ポルトーギルド長は、早口の妖精語トークに驚くばかり。

「なんだかレディたちはどの世界でも同じみたいだねえ。そう思わないかい?フィレン。」

「え、いや。私は妖精語は少々苦手で。」

「何を言う。どこのエルフも徹底的に妖精語をたたき込まれるだろうに。」

「あの早口にはさすがにちょっと。」


「そうかい?それにしても…グリューネ君、こんにちは。」

「あ、はい。ども。」

「君はサキ君の契約妖精なのだね?」

「まあねー。でもオレだけじゃないしー。」

「こほん。グリューネ。」

「あ、あはは。ナイショだった?わりい。」

ぜんぜん悪いと思っていないな。叱る気にもなれない…。

『グリューネ。お前は口が軽すぎる。そんなことでは、いずれサキを困らせるぞ。慎め。』

「は、はいー!!」

と言いながら、僕の陰に隠れる。

ふふ。いつも通りだね。


「ふふ。本当に、ずいぶんと君は妖精たちに愛されているようだ。」

妖精達の登場で、場が賑やかになったが、彼女たちにも紅茶やクッキー(クッキーは僕が提供)が振る舞われ、少しおちついたところで、僕はようやく辺境伯あての手紙をお渡しできた。

「こほん。今日参りましたのは、こちらをお渡しするためと、国境の壁修理の件でご指示をいただきたく思ったためです。」

「ふむ…。」


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