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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
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254 報奨金とラルディアの宿屋 

リーナさんが部屋から遠ざかる音を聞いてから、ギルド長は立ち上がり、机のところから出てきて僕たちに言った。

「とにかく、掛けたまえ。」

ソファに僕とシルルが座り、シンハが僕の脇でお座りする。

ギルド長は、シンハに一礼してから席についた。


「えーと。サキ・ユグディオ君、だったね。魔熊を討伐したと。」

「はい。」

「そうか。凄いな。みんなあいつには手こずっていたんだ。」

「そうみたいですね。」

「うん。…魔熊をどうやって退治したのかを聞く前に、ひとつだけ聞かせてくれ。どうしてフェンリル様と一緒なんだね?」

「森で助けられまして。それからは僕の師匠だったり用心棒だったり。僕の作る料理とかが気に入ったようで。まあ、僕はシンハのエサ係みたいなものです。それでずっと僕と一緒に居てくれます。」

「そうか…。フェンリル様つまり神獣だとわかって、一緒にいるんだね。」

「はい。」

「それだけで驚きだ。」

「そうですか。」

と首をすくめた。

「(シンハが食いしん坊なだけなんだけどね。)」

『ばう。(おい。)』


「な、なにかご不快なことでも?」

とギルド長がびびった。

「いえ、僕に文句を言っただけです。気にしないでください。でも、シンハがフェンリルということは、ご内密に。」

「わかった。…で、こちらの嬢ちゃんは、妹さんかい?」

「ええ。まあ。シルルと言います。」

「シルルでしゅ。」

「おぉ、かわええのお。うちの孫を思い出すなあ。」

と目尻を下げた。


それから魔熊退治の話になった。

「僕が魔法と剣で。シンハがかみついて。なんとか倒しました。」

と言うと

「そうか…。倒してくれて、本当に助かった。このままだとレイドを組むしかないと思っていたところだった。ちょうど今朝、懸賞金が上がったところだ。領主様も騎士達で対応出来なかったものだから、気にしておられてな。上乗せを申し出られた矢先だったんだ。」

「そうですか。」

どうやらシンハが魔熊を退治したと思ったようで、深くは突っ込まれなかった。僕としてはそれでいい。


「しかし、若いのにBとは。驚いた。よくあの厳しいエストがBにしたなあ。」

「そうですね。どうしてか僕もよくわからないです。はは。」

本当はAにされそうだったけど。僕は話題を変えた。

「ところで、最近おかしな魔獣が出るということは、他にはなかったですか?」

「おかしな?例えば?」

「えーと、種族的に普通ならそうでもないのに、やたら強い個体が出たとか、ありえない戦法で戦ってくるとか。」

「うーん。俺は聞いてはいないな。」

「そうですか。」

「ということは、…おまえさんが退治した魔熊が異常個体だったと?」

「そうですね。普通ではなかったです。やたら敏捷性が良くて、毒まみれだったし。龍みたいにブレス…火の玉も吐きました。」

「なんと!毒にブレス!?」

ようやく魔熊の異常さがわかったようだ。

「最近、ヴィルド界隈に、なぜか少々変わり種が出ることが多くなっています。もしこちらでも出るようでしたら、ぜひヴィルドのギルドにもお知らせください。」

「わかった。貴重な情報をありがとう。」


それから、またリーナさんが呼ばれ、報奨金の受け渡しはそのままギルド長の部屋で行なわれた。

ついでに魔石と爪(どちらもクリーン済)も納品したので、結構な額になった。報奨金の革袋を、さりげなく亜空間収納に仕舞う。

二人とも、マジックバッグと思ってくれたらしい。


「ところで。リーナさん、どこか良さげな宿を紹介いただけませんか?従魔と泊まれるところでないといけないんですが。お値段ほどほどのところで。」

と訊ねると、

「それでしたら、この通りを道なりに西に行ったところに、「宿り木亭」という名の食堂兼宿屋があります。食事も人気ですよ。おすすめはホルストックのシチューですね。」

とリーナさん。

「あ、いいですね。さっそく行ってみます。ありがとうございます。」

僕は笑顔でリーナさんに感謝し、それでは、失礼しますと言って部屋を出た。

ちなみにギルド長さんはガルドーシュ・エッケンバッハと言った。通称はエッケンギルド長。リーナさんがそう呼んでいた。


「やれやれ。ヴィルドにはあんな冒険者もいるんだな。」

「礼儀正しいですね。お若いのに。しかもあの魔熊を退治しただなんて。すごいわぁ。」

「リーナ、まさか惚れたのか?ライバル多いぞ。絶対ヴィルドの受付嬢たちも狙っているからな。」

「あはは。ですよねえ。」


僕たちはそのままギルドを出て、馬車に乗り込み、通りを西へ。すぐに「宿り木亭」は見つかった。あたりはすでに夜の暗さだ。此処が取れないと、結構辛いことになる。

どきどきしながら受付に行く。

「いらっしゃい!」

元気な女将さんだ。マーサさんより少し若い。

「あのー。一泊一部屋お願いしたいのですが。この子と僕と、従魔です。空いてますか?」

「ギルドの紹介かい?」

「あ、はい。」

「えーと…うん。少し高くなるけど、ちょっと大きめのベッドの部屋でよければ、大丈夫だよ!従魔は部屋に入れるかい?」

「はい。ぜひ!」

「お嬢ちゃんは小さいから半額だ。」

「ありがとうございましゅ。」

ということで、無事に宿確保。馬2頭と馬車もちゃんとおける宿だった。お値段も結構お手頃。


「ヘケート!ヘケート!」

と女将さんが呼ぶと、食堂で給仕をしていたらしい女の子が、はーいと言ってやってきた。

「お客さんを案内しておくれ。3階の305だ。」

「いらっしゃいませ。」

ヘケートはシルルより少し大きいから12才くらいか。女将さんの娘だろう。髪色も同じだ。バケツに薪と火種を入れると、僕たちを先導して3階へ。

そして部屋に入ると、暖炉に火種を入れ、薪を足した。

3階の角部屋。ちょっと広めだ。たしかにベッドはダブルだった。


「お湯は、桶一つはサービス。2つめからは銭貨5枚。食堂は、食事は夜10時まで。飲むなら12時まで。朝は6時半から。他に何か聞きたいことは?」

「馬車で来てるから、馬たちのお世話もお願い。」

とチップを弾む。

「!こんなに良いの?」

「あとで僕も厩に行くけど。よろしくね。」

「わかった!ありがとう。何かあったら、あたしになんでも言って!」

「うん。よろしくね。」

ヘケートは笑顔で出て行った。


『まったく。子供を手なずけるのは早いな。』

「なんか言った?」

『別に。はやく部屋をクリーンしてくれ。』

「はいはい。クリーン。」

『うむ。これならいい。』

と言うなり、シンハはベッドへ上がった。

「おい。足にクリーンかけろって、いつも言ってるだろ。」

と言いながら、シンハの足にクリーン。寝具も再度クリーン。


「シルルもー。」

とシルルもベッドをよじ登り、シンハに絡まる。

「まったく。」

と言いつつ、僕は暖炉の火を調節し、さらに部屋をウォームウインドで温めた。

「ふう。」

僕もベッドに寝てみる。うん。堅いな。


「ちょっと二人とも降りて。うちの布団、出すから。」

そう言って、ふかふかの敷き布団と、ふかふかの掛け布団を出す。枕も。

うちの寝具は、メルティアのかすかな香りがいい。

『うむ。やはりこれだな。』

と言いながら、シンハは伸びをした。

「はい。やっぱりコレでしゅ。」

とシルル。

もう。ぐうたらが二人になった。

「ちょっと厩、見てくるよ。」

『うむ。』

「いってらっしゃいましぇ。」

動かないんだ。二人とも。まあいいか。

「シルル、寝ないでね。御飯、すぐ行くから。」

「はいでしゅ。」



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