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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第四章 大寒波の冬編
253/529

253 ラルド侯爵領都ラルディア

魔熊をなんとか討伐した直後のこと。

『そんなもの、捨ててしまえ、と言いたいところだが。どうするんだ?』

「ちょっと解析するよ。大丈夫。結界を何重にも張るから。」

そう言ってシンハを安心させ、僕は宙に浮かせたままで、魔熊についていた首輪に結界を幾重にも施し、かつ聖魔法で包んで無害を確認してから、亜空間収納に収納した。


『そんなものを収納して、大丈夫か?』

「大丈夫だよ。手に触れるよりずっと安全。」

『そ、そうか。中のものにも影響はないな?』

「ないよ。あ、わかった。シンハは、亜空間収納内のワイバーン肉が心配なんだね。僕の事より。」

ちろりと恨みがましく睨むと、

『そ、そんなことはないぞ!俺は純粋にお前を心配して、だな。』

「はいはい。シルルー、もう出てきてもいいよー。」

「はいでしゅー!」

『おい、ひとの話を聞け!おい、サキ!』

「しーらない!シルルー、討伐の報酬が入ったら、美味しいもの、食べようね。「ふたりで」。」

「はいでしゅー。」

『俺にも食わせろ!今も退治してやっただろうが。』

「今回は僕が魔熊に引導を渡したしなあ。どうしよっかなー。」

などと、シンハをいじりながら、かろうじて残った魔熊の魔石や爪などを回収。ちょっと「汚染」が心配だったので、もちろんクリーンしてから収納した。肉や毛皮などは、残念ながら諦めるしかなかった。


魔熊退治について、すでに村ではギルドに依頼しているそうで、村長から討伐した旨書いたものをもらって、村を出発した。

討伐依頼は領主にももちろん使いを出したが、調査に来た騎士達が何人か負傷し、逃げ帰ってしまったという。第2陣が来るとは聞いているが、とても待てない。それでギルドに依頼したそうだ。しかも近隣の村3つから共同で出されているという。お金の工面がなかなかできない時は、こうして依頼の資金をまかなうのだ。

魔熊の魔石と爪は討伐した冒険者の収入だ。

本当なら毛皮とか熊肉とか、それなり手に入ったはずなのに。黒魔術め。


馬たちをポーションで文字通り馬車馬のように働かせ(?)、その日の夕方、僕たちはラルド侯爵領都ラルディアに着いた。


ラルド侯爵領都ラルディアは、さすが侯爵領の都。それなりに立派な門だった。

領都だから門番がいて検問があるが、冒険者カードを見せると、すんなり通れ…なかった。何で!?

じろりと僕を見て

「名前は?」

と聞く。おかしいな。冒険者カードがあれば、ほぼノーチェックで通れるはずなのに。

「サキ・ユグディオです。」

「このカード、本当に君のかな?」

「は?」

「Bランクとあるが。」

ああ、僕がBなのにまだ若いから、他人のカードかと思ったのかな。


「そうですが。お疑いなら、どうぞヴィルドの冒険者ギルドに問い合わせてみてください。あ、そうだ。これでどうですか?」

と言って、コーネリア様からラルド侯爵宛の手紙の封筒を見せた。

それでダメなら開封してもらえば、僕たち一行の証明になることも書いてあった、はず。

するとさすがにはっとして

「し、失礼しました!」

と最敬礼。もちろん、侯爵宛は開封もされずに戻ってきたよ。

「お仕事ご苦労様です。」

と半分皮肉を言って通った。


『ふん。』

「なんだよ。」

『いや。お前が幼く見えたんだろう。コーネリアから手紙を預かっておいて、よかったな。さもないと今夜は留置所だったかもしれん。』

「そうかもね。僕、そんなに幼く見えるかなあ。」

『見える。』

「見えましゅ。」

「…シルルに言われたくはないかなー。」

「てへ。」


シルルはさっき門のところでは魔力に溶かしていた。シルルは眷属なので、冒険者カードもないからだ。登録したくとも、子供の姿では無理だ。

ああ、そういえば、ギルド長に、シンハとシルルという子が僕に同伴していることの証明書ももらってたっけ。門ではこれをみせればよかったかな?

「そういえば、ギルド長にも手紙をもらってた。それを見せれば良かったのかも。次にトラブったらそうしよう。」

『おまえは。肝心なところで抜けている。』

「いいじゃん。無事通れたし。まずはこのままギルドに行こう。討伐達成の報告をして、あとは宿を教えてもらおう。」


冒険者ギルドは町の中心部にあると聞いていたので、そこをめざす。索敵すると、すぐにわかった。本当は門で聞こうと思っていたが、ようやく疑いが晴れたのに、「ギルドは何処?」とはさすがに聞きづらかったのだ。本当に冒険者か?と根本を疑われそうだもの。


ラルディアの道はうねっていた。

ヴィルドは区画整理されたようにわりとまっすぐな道路が多かった。主要な道はしっかり広かったし。だがここラルディアは侯爵様の領都だが、あまりまっすぐな道はないようだ。路面も、雪でよくわからないが、でこぼこしているようだ。

寒い地域は霜柱で道路がやられがち。それはわかるが、それでもヴィルドの道は、しっかりしていてずっとなめらかだった。

町の様子は冬だから人通りが多いとはいえないが、それでも焼きポテトや串焼きを売っていたり、さまざまな店が並んでいて、それなり潤っているようだった。


なにげに町の様子を見物しながら進んでいくと、ヴィルドの冒険者ギルドと良く似た建物があった。ヴィルドよりは規模は小さいが。

「此処だね。」


馬車と馬を道脇に寄せて、とりあえず入ってみる。

シルルも顕現していたいようなので、シンハとシルルと3人で入る。

夕方のせいか、少し混んでいた。

で、声が聞こえてくる。

「村人3人、殺られたそうだ。」

「報奨金、また上がってるぜ。領主様もさらに上乗せしたらしいからな。」

「でもなあ。騎士達も全滅だったんだろ?」

「いや、逃げ帰ったと聞いた。」

「油断したんだろ。」

「そのうちギルドでレイドを組むって話もあるらしいぜ。」

「お前、行く気ある?」

「無理。ぜってーやだ。」


『どうやらあの魔熊のことが、噂になっているようだな。』

「(うん。さすがにまだ最新ニュースは届いていないみたいだね。)」

僕たちは受付カウンターにやってきた。

列はさほど酷くなく、ほどなく僕たちの番になった。


「いらっしゃいませ。ご依頼ですか?」

僕と同じくらいの年齢に見えるお姉さんだった。

どうやら依頼者だと思ったらしい。どうしてさ。

「いえ。ヴィルドの冒険者です。旅の途中で討伐したので、達成報告です。」

と言って、村長さんに書いてもらった討伐達成書を出した。

それと冒険者カード。

受付嬢はそれらを見て読んで、顔色を変えた。

「し、少々お待ちください!」

討伐達成書と僕のカードを持って、あわてて奥へ走っていった。

あー。またギルド長とかえらい人と対面だわな。きっと。

と思っていると、彼女が戻ってきて

「一緒に来てください。」

と言われた。案の定、行き先はギルド長のお部屋。


此処のギルド長さんは、ドワーフだった。

きっと斧使いかタンクだったのだろうな。

デスクに向かって座っていて、僕のカードを手にしている。

「お前さんがサキ・ユグ…!なんと!フェン…!」

と立ち上がりながら叫びそうだったので、思わず僕は口に指をあてて、しぃっ!と合図。

受付嬢もいたからだ。

ギルド長は慌てて口をつぐみ、ごほごほとごまかしの咳をした。

そうなんだよう。なぜかドワーフさんは、シンハが神獣フェンリルだと知っているんだよね。


「ごほ。リーナ。ご苦労様。あとは私が対応する。戻りなさい。」

「わかりました。失礼します。」

と言って、リーナさんは部屋を出て行った。


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