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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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22 飛行魔法、貨幣価値

まあそんな楽しくも苦しい日々の中で、僕は飛行魔法についても考える。

大空を自由に飛びたいとの願いは、この世界にいることを自覚してから、ずっといつかは、と思ってきた。

風をまとわりつかせ、「浮遊」はできるようになったが、うまく飛べない。

しかも3分浮くだけで大量の魔力MPを消費するため、実用化の大きな妨げになっていた。

ある日うたたねしていてひらめいた。がばと起きる。

「そうか!フロートボードだっ!」

それはスケートボードに小型エンジンをつけて浮かせたもので、かの日本で一番有名な小学生探偵や、往年の映画「バック・トゥー・ザ・○○…」でやっていたっけ。

足の下の土台だけに魔力を使うなら、今より魔力を節約できるはず、と考えた。

さっそくシンハと一緒に、いつも魔法の実験をしている森の「広場」にやってきた。ここは僕の魔法訓練とか実験により、地面は草一本生えていない状況になってしまったところだ。

『今日は何をするつもりだ?これ以上、森を破壊するのは…』

「破壊はしないよ。飛ぶ練習だ。」

『む。それはかなり高度な魔法だぞ。魔法書も無しにお前は』

とシンハが何か言っているが、無視して僕は集中する。

スケートボードをイメージし、さらに下と後に噴射口もイメージ。

「!できた!」

やはり魔法はイメージだ。ふらふらしながらも地面から数十センチのところで浮いていた。

『おお!確かに浮いているな!今までより安定しているようだ。』

「でしょでしょ!さらに改良してっと。」

板状だったものを、二つに分離、両足の裏それぞれに設置のイメージ。なるべく小さくしてっと。

「できたできた!やっぱり!」

『ほう!』

魔法はイメージ。僕は透明な二つの板を足場にして、空中に浮くことに成功した。これなら足元に魔力を集中させるだけなので、少しの魔力で済む。浮いたとはいえ今はまだ地面から4、50センチのところだが。

だがまだ「飛行」までは至らない。

次に風を起こしてみる。うん。確かに動かすことはできる。だがいまいち。

『…。浮くには浮いたが。魔力消費はどうだ?』

「今までよりはちょっとは少ないけど…。移動するとなると、トントンかなあ。」

『それでは成功したとは言えぬようだな。』

「そうだねえ。うーん。」

さらに考える。

そういえば、古いアニメであったな。「キュ○○ィー・ハ○ー」で重力魔法とか。

そこでフロートボードを解除して、今度は重力ゼロをイメージ。

「グラヴィティ・ゼロ!」

すると

「フォォォォォォ!!」

ギュウンととんでもない速さでそのまま上昇!

『む!サキ!!サキーーーーー!!!』

慌てるシンハの声がどんどん遠のく。

やばい!重力がゼロなら、このまま地球の引力から解放され、宇宙へっ!どうするっ!考えろ!

「グラヴィティ50!(パーセント)!!!」

すると今度は急降下!

『サキーーー!!!』

ますます焦るシンハ。

あーん!月の重力は地球の六分の一。それでもふんわりとはいえ落下してただろ!アポロで月面に降りた宇宙飛行士の映像を思い出す。50%でも落ちるだろ!バカサキ!

「エア・バルーン!」

足の下に空気の巨大な風船を強くイメージ。

なんとかぷわんぷわんと浮いて、地面に激突は避けられた。

「ふう…」

『この馬鹿!何をやった!?俺の寿命を削る気かっ!』

「あはは…ごめんごめん。」

ガウガウと文句を言うシンハを、地上に降りて撫で繰り回してなだめ、落ち着かせる。

『もうよせ!こんな危なっかしい実験は。』

「ごめん。でもあとひとつ、試させて。今度はゆっくり安全にするからさ。」

あらためて。

「フロート。アンド、グラヴィティ・ライト。」

わざとアバウトにした。イメージだけ強くして。

するとすうっと透明風船よりも高く浮き上がった。

「ああ、ライトでいいんだ。それからっと。…ウィンド。」

足もとのフロートボードに風の噴射口がある感じで。

ようやく風を推進力として進むことができた。

シンハも、僕の動きがゆっくりだったので、安心したようだ。

ただ、これでもまだかなり魔力使うわ。

フロートからのグラヴィティ・ライトそしてウィンドを、「フライ」と改名。

地面になんとか降りると、あらためて

「フライ!」と叫ぶ。

すると、両足下に足と同じ大きさのフロートボードが作成され、空中に飛び上がりながら、風の力で前に進むことができた。ようやく飛行魔法が完成した。

「はあー。一応できたけど。まだ効率悪いし、向かい風対策とか虫よけとか、改良の余地おおありだな。」

まだまだ修行は続けねば。


早めの夕食を終えて。

今日はたくさん魔力を使ったから、魔力を使わないで済む勉強をしよう。

そういえば、この世界の貨幣の価値もろくに知らなかったっけ。

数字は十進法。日本と同じだ。

通貨の単位はルビ。

亜空間収納から、当初から収納に入っていた硬貨を一種類につき一枚づつ出しながら、地面にルとビという文字と、覚えたての数字を書く。

「シンハ、お金の価値とか、わかる?」

『まあ多少はな。数を当てる芸みたいなこともやらされたしな。』

「え、フェンリルさまなのに!?」

『相棒を餓死させるわけにはいかないからな。』

なるほどね。セシルさん、結構金欠だったんだな。

「じゃあさ、1ルビはどれくらいの価値があるの?」

『何も買えまい。銭貨という。10ルビがこれ。銅貨だ。ポムロルなら1つか2つ、ポミールなら3つは買えるだろう。もっとも、俺が町へ行ったことがあるのはもう数十年も前だから、価値は変わっているだろうがな。』

ポミールはプラムだ。ポムロルがリンゴ。どうやらこの世界の1ルビは10円くらいらしい。

「なるほど。次は…これかな?」

『そうだ。100ルビ(1,000円くらい)。角銀貨。カクという。次がこれ。1,000ルビ(1万円くらい)。丸銀貨ともいう。普通は単に銀貨といえばこれを指す。』

「なるほど。」

『昔、ある商人が取引をごまかして、丸銀貨で支払うところをカクで支払い、争いになった。『銀貨』と言ったらその商人の国では角銀貨のことだと偽って。そのため大陸中にお触れが出た。角銀貨を『銀貨』と偽って取引したら、鞭打ちか死罪と。』

「へえ。」

『だからみんなカクとか100ルビとかきちんと言う。今ではそんな馬鹿なことは誰もしない。子供だって知っているからな。』

「ふうん。」

聞いて良かった、異世界童話。

「じゃあ、この金貨は?」

『1万ルビ(10万円)だ。それからその上が大金貨。10万ルビだ(100万円)それから…ほう。白金貨もあるのか。これは100万ルビ(1,000万円)だな。』

「え!?ちょっと待ってちょっと待って!僕、白金貨10枚と、ほかは各貨幣を100枚ずつ持ってるよ!じゃあ、今ここに…2億円以上!?いや、2,000万ルビ以上あるってこと!?わー。僕、超お金持ちだったんだ!」

『今更だろう。お前が持っているダイヤやサファイアなどの価値を考えたら、それどころではないと俺は思うぞ。何しろ『はじまりの森の最奥』でとれた貴重な宝石ばかりだからな。あの大きなダイヤ一つで10億ルビはしそうだしな。』

「ぐふ。(100億円!?)でも宝石といってもあれらは今のところ、いっこも換金していないから、ただの綺麗な石っころですけどね。」

と乾いた笑いをするしかなかった。

それにしても、最初に神様?からもらったお金は、2,000万ルビ以上とは。神様、結構いやかなり過保護じゃね?能力といい、着ていた服といい、いろいろとチートだし。でもって、過保護の割に、じゃあどうしてこの森のど真ん中に僕を落としたのさ。それはあまりにも過酷すぎでしょ。アンバランスだ。でもシンハとすぐに会えたから、まあいっか。気を取り直して、

「えーと、ちなみに1,000ルビってどれくらいのものが買える?」

「ふむ。たしか軽い傷を治せる下級ポーション1本くらいか。あとは王都で貴族用のきれいな宿屋は1,000ルビだと聞いたことはある。」

「なるほど。そうするとポーションは高め、宿は安め…いや、日本よりかなり安いか。昼飯一回はいくらかな。100ルビくらい?」

『まさか。昔は40ルビでも釣が来た。しかもかなりのボリュームだったぞ。』

「そうか。人件費がきっと安いんだろうな。」

とひとりぶつぶつと分析する。

それにしても、ううむ。2億円とか100億円なんて聞いてもぴんとこない。まあ、僕が盗賊に殺されても亜空間収納のものは飛び出してこないらしいから、僕がため込んでも、いずれどこかのダンジョンに現れる財宝になるんだろうな。

いくら大金持ちですとわかっても、森での生活ではお金はなんにも役に立たん。だから魔法や剣や体術の訓練が大事なんだ。



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