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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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20 剣の稽古、シールド魔法

シンハには体術と剣術の訓練にもよく付き合ってもらっている。

訓練や魔獣退治をしてわかってきたのだが、僕の魔力はかなりの量だが、体力は並よりちょっと上程度。だがいざ戦闘となると、魔力を体力HPに移せるようで、とんでもないパワーで相手をぶん殴ることもできるようだ。いわゆる体力強化というやつだ。すべては魔力MPだよりということになるから、なにかの術とか魔道具とかで魔力を封じられたら、かなりヤバいだろう。てことで、基礎体力アップは必須だ。

そこでシンハに魔法なしでも生き延びられるよう特訓してもらっている。

シンハは森の王だけあって、スピードも、パワーもものすごい。僕はシンハを捕まえようとしてもかすりもしないし、簡単に転がされてしまう。剣もどきの手作り木剣を使ってももちろん同じで、かすりもしない。「クロックアップ(加速)」を使ってようやく少し対抗できる程度。でもまだクロックアップには慣れていないので、無駄に魔力を使ってしまうから、長時間はかけられない。

日に何度も転がされるので、受け身だけはうまくなった。ちくせう。


ヒュッ!

「こうお?」

『違う。剣先がぶれている。もっと腰を安定させろ。』

「はい!」

ヒュッ!

『踏み込みが甘い!それでは敵の心臓には届かんぞ!』

「はい!」

今は木剣を持って剣術のお稽古。師匠はシンハ。

『相手が人であろうと魔獣であろうと、手負いの敵は何倍も強くなる。必死だからな。一撃必殺を心がけろ!』

「はい!」

『突いた直後に隙を作るな!動きを止めるな!常に一対一とは限らん!後ろも横もがら空きだぞっ!』

「はい!」

『お前は非力だからな。相手の首か心臓、もしくは目を狙え。腹を斬ってもすぐには死なん。返り討ちにされんよう、急所に入れたらすぐ離脱を心がけろ。』

「はい!」

『敵が一体でも手足がお前と同じ数とは限らんぞ。どこからでも攻撃が来ると思え!それから相手の力も使うんだ!かうんたーとかお前が言っていたやつだ。』

「はい!」

『相手を本気で殺すなら、剣を抜く時にひねって傷を大きくしろ。怪我で済ませたり、痛みなく斬ってやるなら撫でるように斬るか、突いても素直に抜くことだ。』

「難しいよお。」

『まあ、お前は使い分けられるほどの域に達していないからな。教養として一応覚えておけ。』

「はーい。」

『返事は短く!』

「はい!」

ほんと、シンハはなんでもよく知っている。

昔、魔術師さんと一緒の時に臨時パーティーで剣聖さんと旅したことがあって、その頃よく彼の剣術の相手をさせられたんだって。それから魔術師さんが研究のために、その剣聖さんに基本を教わっていたので、細かい基本もよく知ってるらしい。さらには、セシルさんと一緒の時にも、時折冒険者と一緒に動くことがあったそうで。そのせいか人間が使う剣術をとてもよく知っている。


博学のシンハ師匠は決闘の作法まで知っていた。

戦う前の挨拶は、剣先を天に向けて目の前に持ってきた後、ヒュッ、ヒュッ!と左右に払う。それからまた中央少し上に掲げて、それから最初の位置にゆっくりめに戻す。

戦いの後も同じようにしてから剣を布で拭って鞘に収める。左右に払うことで剣についた血も払えて実用的だ。目の前に剣を持って来て祈る動作は、始まる前なら相手と戦いに対しての誠実さの誓いと勝利を祈る意味があり、終わったあとなら奪った相手の魂への祈りの意味もあるそうで、少し古風なやり方だそうだ。

『まあ、冒険者はあまりやらんな。』

そうだろうね。でも気に入ったので、剣術の稽古の最初と最後にこの儀礼を行うようになった。


木々の間を駆け抜けながら、木剣で撫で斬る訓練。首の頸動脈を斬る想定だ。相手が反撃してくることも想像しながら、マボロシの切っ先を避けつつ走り去りながら斬る。とにかく速く動け、もっと速く!相手が上手いほどリズムは一定じゃないぞ!とシンハが檄を飛ばす。これでも前世とは比べものにならないくらい、高速移動してるんですけどっ。

目を狙えっていうけど、人相手はちょっと想像するとグロくて無理。自分もやられたくないし。いや、相手だって僕の急所を狙ってくるわけで、目や首、心臓は常に狙われることを想定しながら攻撃しないといけない。時には足への攻撃も考えられる。

そうしたものをすべて想定し、防御を混ぜながら攻撃練習をする。


アンデッドは光魔法や回復魔法で倒すか、首を切り離すか心臓を一撃するからしい。ただしデュラハンは最初から首と胴が離れているから、心臓を狙うか、ヒールで燃やすしかない。もっとも、デュラハンが出るのはダンジョンでも奥のほうだし、このあたりの森の中には、今現在は居ないらしい。

一般的なアンデッド対策として、まずはヒールと首斬りを稽古。光魔法を付与した木剣で、首を飛ばす想像していたら、なんだか気持ち悪くなってきた。腐臭も凄いらしいし。うええ。会いたくないな。


それから今取り組んでいるのは、木々を渡る技術。サルのように、あるいはターザンにように、木々を渡ったり登ったりできないか、工夫している。最初はしょっちゅう落下するのでシールド魔法が無かったらとんでもないことになっただろう。でも練習のおかげで足の直下に、見えないエア・クッションを作ってぽんぽん飛びながら木登りすることはできるようになってきた。だが空中のクッションは魔力を使うし、短時間だけの足場だ。集中力を切らすと、とたんに足場が消えて地面に落下である。


さすがに本能的に落下の時は地面の上に大きな空気のクッションを無意識で作れるようになったし、無詠唱だけでなく、とっさの無意識でも自分を守る「シールド(結界)」をかけられるようになった。魔力循環の訓練にもなるので、眠る時も含めて「シールド」を薄くかけ続けることにした。これは僕に対し、急激な力、大きな力が加わった時には強く反発するが、それ以外の時は効果を発揮しないという優れものだ。だから、触覚的に変わるわけではないし、普通にシンハと接触できる。僕がシンハをなで回してその毛の素晴らしい感触を楽しむこともできるし、逆にシンハが僕に普通に触れる分には抵抗なく接触できるが、攻撃をしかければちゃんとシールドとしての役割をはたす。1秒かけ続けるとMP1消費で、魔力操作が上手くなった今では1秒でMP1が復活するから、プラマイゼロだ。けれど総魔力量はじわじわと伸びてくれている。これも魔力消費のたまものだ。


ちなみに魔力操作についてだが、当初は魔力ダダ漏れだったらしい僕だが、魔力を上手く自分の体の中でこね回して効率よく使うことができるようになってみると、無駄に漏れて消費するということはほぼなくなった。努力のたまものだね!


寝ている時にシールドが仮に弱くなっても大丈夫なように、アクセサリは一応作った。青い小さなサファイアを、そのへんで拾った鉱石から銀を抽出して作った台座に埋め込んだものだ。それを紐で首にぶら下げている。本当に原始的なもので、いずれきちんと加工したいと思っている。


シールドについてもシンハに訓練で鍛えられている。

『シールドに頼りすぎるな!立ち止まってシールドでは攻撃が遅れる!シールドを破られたら終わりだぞ!動け!動きながら、破られることを想定して攻撃しろ!』

最初は楕円形の盾のイメージだったシールドだが、シールドの形、方法も変えるようにした。狭い木々の間をすり抜ける時の身にまとうような立体3Dシールドや、前方だけを厚くする盾のようなシールド、それの素早く動く時の流線型シールド、後ろからの遠距離攻撃を防ぐシールド、僕とシンハを同時に包むシールド、などなど。基本は3Dの、シンハと僕を全方位包むシールドに変更した。無意識にも瞬時にこれができるようにする。たとえ僕とシンハが別行動する時でも、僕がシンハのシールドを張れるよう、また、シンハにシールドを「飛ばせるように」訓練した。同時に張れるシールド枚数も増やした。強いものを1枚ということもあるが、相手の攻撃がとんでもない場合、その力を減殺するために、枚数あったほうがいいとわかったのだ。今のところ最高は5枚だが、10枚くらいまではできそうだ。そして、敵が正面の場合は前方に分厚く、後ろは2枚くらいに節約なんてこともできるようにする。


『お前はシールドありきの戦い方だ。頼りすぎるのは良くないが、器用に使いこなすなら、これほど安全なことはない。全魔法、および全物理攻撃に対応しているのだろうな。』

「もちろん!」

『ならばよし。お前は魔力がとんでもなく多いから、常にシールドを張りながらでも大魔法も使えそうだ。いろいろ工夫してみろ。だが、相手が格上の場合、お前の魔法が封印されたり、シールドが破られたりする場合もあることを常に忘れるな。シールドなしの訓練も怠るなよ。』

「はい!師匠!」


たしかに、普通ならシールドなんか張れないから、全部決死の覚悟なわけで。この世界の冒険者たちは、そうやって毎日を生き抜いているのだ。それを考えると、本当に頭が下がる。僕は神様?からのチートで、こうしてシールドできるが、普通は出来ないんだからな。謙虚になって、シールドなしの訓練もする。だが無意識に例えば木々を渡る時には手足をシールドしたり、顔をシールドしたりしてしまう。剣の稽古の時も、どうしても1枚は薄いシールドを首や胸、頭部にかけてしまう。

それをシンハに相談すると、

『部分的にシールドか。無意識なら仕方あるまい。そういうもんだと思うしかないだろう。』

と意外に優しい回答。

『普通は、部分的にシールドなんていう器用なことは、できないんだがな。お前は特殊だからな。ある意味、諦めろ。』

とつけたされた。

「なんか…人外認定されてる感じ?」

『今更だろう。』

なんか、納得できないけど…。ま、いっか。

開き直ってシールドありの攻撃パターンの研究と訓練は続けよう。


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